自治体ごとに公表される「待機児童数の定義の統一」を求めて3年

ようやく変化の兆しが現れてきたようです。
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Kanagawa Prefecture, Honshu, Japan
MIXA via Getty Images
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自治体として公的に発表している「待機児童数 」が全国一と言われている世田谷区が、「待機児童の実数」において全国一なのかどうかは別問題だということが、このたび厚生労働省が発表した数値で、ようやく明らかになってきました。待機児童数として発表している以外に、各自治体に「潜在待機児童」がいることが明らかになり、その数値も公表されたからです。

「石の上にも3年」という言葉があります。私は、「待機児童の数え方は統一されるべきだ」と、厚生労働省やメディアに強く訴えてきました。世田谷区の待機児童数には「育児休業を延長」や「自宅で休職中」の場合も含めてきました。待機児童数の公表の際に重要なのは、「見栄え」ではなく実態を正確に把握して情報提供する必要があると考えてきたからです。

数え方次第で「待機児童」が半減する? - 太陽のまちから -(2013年6月11日)

待機児童問題は目の前に迫った切実な課題です。メートル法と尺貫法という異なる定規で計測した数字を比べて、待機児童が「多い」「少ない」と論評していること自体、問題への対策を歪めかねないのではないでしょうか。実態とズレた不正確な事実をもとに「待機児童ゼロ」を打ち出せば、本質的な問題を見落とさないとも限りません。

毎年、「待機児童数の発表」の際に、「メートル法と尺貫法という異なる定規で計測した数字を並べて一覧表をつくるのはおかしい」と訴えてきました。厚生労働省もこの問題についてはなぜか消極的でしたが、この3年間、ずっと言い続けてきました。ようやく変化の兆しが現れてきたようです。

厚労省:待機児童を再定義...「隠れ」の算入焦点 - 毎日新聞 (2016年9月17日)

厚生労働省は、認可保育所などに入れない「待機児童」に関し、自治体によって数え方にばらつきがあるなどの批判を受け、基準見直しの議論をスタートさせた。15日に有識者と自治体担当者による検討会の初会合を開催。年度内に新基準を示す方針だ。

15日の検討会で、委員からは「不合理なばらつきは見直しが必要ではないか」「(国の基準には)判断が難しいケースがある」など基準見直しを求める意見が相次いだ。

3年前には、「横浜市が待機児童ゼロを達成」と大きな評価と話題を呼びました。「それにひきかえ世田谷区は何をやっているんだ」とずいぶんお叱りを受けました。横浜市の待機児童対策の思い切った取り組みは、敬意をもって見てきたつもりですが、横浜市と世田谷区で「数え方が違う」と言っても、聞く耳を持たないメディアがほとんどでした。

待機児童、数え方の定義見直し...自治体で違い: 読売新聞(2016年9月20日)

東京都内の広告会社で働く女性(29)は、妊娠中の2013年、都内から横浜市への引っ越しを決めた。同市は当時「待機児童ゼロ」を達成したと評判で、「都内より入所しやすいのでは」と期待した。翌年出産して引っ越し。15年4月の入園を申し込んだが、希望した施設全てに断られ、認可外施設を利用して復帰した。

今回の調査では、横浜市は全国で最も隠れ待機児童が多かった。女性は「保護者に寄り添った情報を出してほしかった」と振り返る。

待機児童の集計方法は、自治体の判断によって異なる。認可保育所などに入れず育休を延長した場合は「育児休業中」となるが、東京都世田谷区など待機児童に含める自治体もあれば、横浜市など除外する自治体も多い。

ここで、「隠れ待機児童」という言葉が登場します。「認可保育園入園希望者」から「認可保育園入園者」を差し引いて、さらに公表されている「待機児童数」を差し引いた児童数という計算方法です。認可保育園に入れなかった児童は、待機児童数として発表された数値を差し引いて、全員「隠れ待機児童」となります。ただし、これは便宜的な計算方法で「待機児童の実数」とは相違があります。なぜなら、「隠れ待機児童」には、自治体でつくる認可外の認証保育所や保育室等の保育サービスを受けている児童も含まれているからです。従って、参考までにすぎませんが、「隠れ待機児童数」のランキングでは、世田谷区は1191人で10位でした。

表面化した「隠れ待機児童」数 それでも実態が不透明なワケ(J-CASTニュース2016年9月20日)

自治体間の差は大きい。例えば、全国最多の汚名を着る世田谷区は、親が自宅で求職中や育休を延長したケースを待機児童に含めるために数字が膨らんだ(それ以外の「隠れ」を含めると計2389人)。全国2位の岡山市は第3希望まで入れない子ども全員を、今年から待機児童に含めたため、公表数が595人増え729人になった(同1343人)。

一方、安倍首相が待機児童対策の先進例として視察もした横浜市は4月の公表待機児童7人だが、「隠れ」を含めると全国ワースト1位の3117人。育休中420人、求職活動休止366人などを含んでいないため、落差が大きくなった。同じく公表6人の川崎市も、「隠れ」を加えるとワースト2位の2553人に膨れ上がる。

また、東京都港区は公表64人に対し「隠れ」が1149人だが、認可園並みの基準で整備した「区保育室」の利用者345人も「隠れ」に含まれている。

認可保育園を入園希望しながら、入れなかった児童でも、認可外の「認証保育所」「保育室」「保育ママ」等の自治体独自の保育サービスを受けている場合は、自治体ごとの数値も公表されているので、「隠れ待機児童」に含めて比較するのは妥当だとは思いません。

世田谷区の待機児童数は多く、認可保育園入園が厳しい状況にあるのは、現在も変わりません。現在、約40カ所の認可保育園を開園する準備作業を続けています。この春でようやく、3歳以上の待機児童はゼロに近くなりました。来年の春は、2200人の保育定員増(認可保育園・認証保育・保育室・小規模保育等で)を準備しています。

「待機児童の定義の統一」で、すぐに待機児童が減少するわけではありません。しかし、「正確な実態」が情報公開されて、保育園を探す保護者に伝えられることで、不要な誤解や混乱を回避すること、また厳しい現実ときちんと向き合って「待機児童解消」の目標を見誤らないことが大事だと考えています。

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