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原始宇宙の輝きがここに。世界を魅了した光と時計が織りなすインスタレーションが示すもの

新国立競技場コンペでファイナリストに選出された田根剛さんが時計メーカーCITIZENと手掛けるインスタレーション。世界で絶賛される「輝き」とは。
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文豪ゲーテは最期に言った。「もっと光を」と。

私たちは光によって自らの存在を確認することができる。暗闇にいる時は、自分の存在を「見る」ことができないからだ。だからこそ、ゲーテは死の淵に立ったとき、そのような言葉を発したのかもしれない。

――光は単なる明かりではなく、もっと意味のあるものなのだろうか?

「光は時間である。光なくして時間という概念は生まれ得なかった」と語る人がいる。フランスに拠点を置く建築家の田根剛さんだ。田根さんは、国内外のさまざまな建物を手掛けながら、時計メーカーのシチズンと共に「時間」のインスタレーションを作っている。

その1つが、世界最大の時計見本市バーゼルワールドで今年公開した「Expansion Time」だ。

時計の「あるパーツ」を光と影で彩ることで、見る者を祝祭的な時間へと誘う。この前身となる展示「LIGHT is TIME」は、デザインの祭典ミラノサローネのミラノ・デザイン・アワード2部門をダブル受賞。凱旋展が東京で開催されるほど話題になった。

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「LIGHT is TIME」(2014)。ミラノサローネの後、スパイラルガーデンで凱旋展が行われた。

「拡張する時間(Expansion Time)」に「光は時間(LIGHT is TIME)」という哲学的なテーマは、何を示唆しているのだろうか? アテッサ エコ・ドライブGPS衛星電波時計 F900の発売に伴い、田根さんに話を聞く機会を得た。

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田根剛さん。DGT.(DORELL.GHOTMEH.TANE/ARCHITECTS)共同主宰。

2020年東京オリンピックの新国立競技場コンペではファイナリストに選出され話題になった。

悠久の時間と祝祭的な時間の中で

――建築家がインスタレーション?

インスタレーションも建築の1つだと思っています。でも建物を建てるのとインスタレーションは時間軸が違う。

「LIGHT is TIME」の凱旋展は2週間で7万2000人の方に来ていただきました。これだけの人数が1つの空間に出入りするのって、5人ひと家族が約40年間同じ家で出入りするのと同じ計算になるんです。

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建物は長い時間をかけてその場所の自然と溶け合っていくもの。インスタレーションは、逆。その場所にいるのが30分の人もいれば1時間の人もいる。時間がぎゅっと圧縮された祝祭的な時間をどうやって作れるのかが最大の課題になります。

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「LIGHT is TIME」は、「光とは時間だ」という答えを表現したので、今年の「Expansion Time」は時間が生まれた瞬間……「宇宙のはじまりの直後」をテーマにしました。光が広がっていくビッグバンのすぐ後の状態ですね。きっとこうやって時間や存在がはじまったんだろう、という。

時間とは光であり、光とは時間だった

――「時間」についても、ものすごく調べた、と。

そうですね。自分は建築家として「時間」について真剣に向き合っていきたいと思っていて。哲学的、科学的、物質的…いろんなアプローチで時間について研究しました。

一方で、シチズンの時計工場に行った時に、たまたま部品の廃棄場に連れていってもらったんです。そこには掘削した鉄の塊や廃棄したパーツがたくさん置いてあって。その破片の中に地板がありました。

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2015年のバーゼルワールドでは、時計の基盤である地板を約1万個吊るし、光と影の動きによって、「宇宙のはじまり」を表現した。

地板は時計の基盤装置。建築で言う基礎構造みたいなもので、1番大事なパーツです。時計って人間の創造物の中で唯一「止まってはいけない」という大きな使命を持っている存在なんです。普通は、電源を抜いてしまえば機能を停止できますが、時間は常に動いているので、それを許してくれない。

シチズンの時計は約300もの精緻なパーツでできていて、しかもそれがミクロンレベルで整合性を保っている上、止まらない。それは基盤の精度が高くないとできないんです。この地板を作れるのは日本とスイスだけ。これだけ精緻なものは長年の蓄積がなければ模倣できない。

――技術は、積み重ねた時間の上にできる。

そうですね。だから絶対に使いたいなと思いました。時計って面白くて、日常と非日常が密に絡んでいるんですよね。自分が時計を買ったタイミングって、何かの記念なんです。毎日身に付けるけど、自分が時計を買おうと決めた想いがこめられている。単に時を刻む“機能だけ”の存在ではないんですよね。

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40のタイムゾーンに対応し、また人工衛星から時刻情報を受信。3秒で「自分が今いる場所」の正確な時刻を得ることができる。これは世界最速だという。

そもそも、時間って見えるものでもないし、誰も掴めない。ただ、時間があるからすべて存在が「動き」を得るし、存在は「動く」からこそ互いに影響しあっていく。それを僕たちに示してくれるのが時計であり、もっと言うと時間の存在を気が付かせてくれるのが光だったんだなと。

――時間とは光だった。

そう(笑)。たとえば、太陽が昇って沈む。星の距離も、月の満ち欠けだってそう。それだけじゃなくて、光が当たる場所に陰影があるから、存在を感じられるんですね。光を見ながら、人は「時間」という概念を作ったんだと思います。

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――時計は、見えない時間を可視化する道具ですよね。

何分間でこれができる、何時までにこれをする……人間が共通の認識で社会を発展させるためのルールを作るっていうのかな。近代以前はなかったプロダクト。時計は社会を合理化させる上で大きな役割を担ってきたんだと思います。一概に言えないですが、アメリカや日本は時間を合理化したから、短期間で経済の発展を遂げられた。

――フランスは違うんでしょうか?

そうですね……もっと緩やかです(笑)。日本は「過去」よりも、「来たる未来」に向けて「現在」をいかに切り売りするか?ということを重視している気がします。

一方、フランスって「未来」に対する意識が日本ほど強くないように見えますね。「昨日があるから今日があり、今日があるから明日がある」という感じで、過去が積み重なった結果が「未来」だった。そんな緩やかな雰囲気があります。

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copyright: DGT.

新国立競技場のファイナリストに選ばれた「古墳スタジアム」。明治神宮を囲む鎮守の森「内苑」の対として作られた、文化とスポーツの振興の場所である「外苑」の歴史を元に設計された。

自分は仕事の規模にかかわらず「場所の記憶」を大切にしていて。建物は、一度できあがったら、その場所で「未来」を作っていく存在ですよね。「現在」や「未来」って「過去」の上に成り立つものなので、そこを見失ってはいけない。「場所の記憶」なくして新しい文化って生み出すことは出来ないと思うんです。

「未来」を盲信することで失ってきた何か

実は、オリンピックもあるので、最近は未来のことを考え始めるようになったんです。今まで考えたことなかったんですけど(笑)。その時に、ある疑問が湧いた。

――どんなものでしょう?

2020年っていう権威的な圧力を感じます。未来なんて誰もわからないものなのに、「2020年の未来」が絶対的に存在して、それを押し付けるがごとく、2019年も2018年も2017年も…すべてを2020年のために消耗せしめる圧力。未来は積み重ねた時間によって行き着くものなのに、可能性を決めつけ、時間を切り売りする日本。

未来とは本来、どこにいくかはわからないけれど、今、体験したものが次の出会いや縁に繋がって広がっていく。だからこそ未来は可能性に満ちたもの。それなのに、どうして誰かが勝手に決めてしまうんだろうか?

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現代は、時間をデジタル化して合理性を追求する中で、時間の感覚に光がなくなっていってしまったんだと思います。だから、不確かな未来に翻弄されてしまうというか。

――時間に追われている感覚はここから来るのかも?

未来を逆算で考えると、そうなりますよね。追われるんじゃなくて積み重ねていくもの。それを思い出させてくれるのが、光と時間だと思うんです。そこに一度立ち戻り、未来の光と時間の関わりを考えていきたいと思っています。

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シチズンは、1970年代に光発電により時計を動かす「エコ・ドライブ」を開発したメーカーでもある。地球上どこにいても光があるかぎり、時間を刻み続けるこの時計は、40年経った現在、宇宙ともつながる衛星電波時計となった。フランスにいても日本にいても、広い空を介して私たちに、その場所の正確な時間を示す。時間のズレは人と土地を断絶するが、時計が光を感知した時、きっとその隔たりは消えるだろう。地球のどこにいても、光をもって私たちの存在を示し続ける――「市民」の名を持つメーカーが、世界最速で衛星電波を受信することに精励する理由はきっとここにある。

宇宙からの光を一身に受け止め、一秒一秒進んでいくこの創造物が、インスタレーションをもって私たちに示すものは何なのだろうか? それは光という名の時間、その尊さだろう。「もっと光を」と。

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