サービスデザインと組織変革 ~SDGC2016に見る、顧客志向の組織に変わるためのヒント1~

経済のサービス化によりとくに製造業における事業の変革がさらに推し進められているという。

経済のサービス化とデジタルシフトにより、事業の進化が求められている

いよいよ第9回サービスデザイン・グローバル・カンファレンス2016(SDGC2016) がスタートした。今年のテーマは「Business as unusual」。

カンファレンスを主催するServiceDesignNetowarkの会長であるBirgit Magerさんの講演では、「サービスデザイン自体の歴史はまだ浅いが、メソッド、プロセスが開発され、さまざまな分野で生かされ始めていることもあり、拡大フェーズに入っている」との説明があった。

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かつては顧客に近い分野で主として使われていたユーザーエクスペリエンスデザインが、近年ではサービスそのものをデザインするための手法へと発展し、「サービスデザイン」という概念が生まれた。

さらに、プロダクトやサービスのデザインを専門家集団であるデザイン事務所に外注するのではなく、企業が自社内にサービスデザイナーを置くインハウス志向へと移ってきている。

事例発表のセッションでは、サービスデザインをデザイナーだけの仕事とせずに、さまざまな事業部門を巻き込み、組織文化や事業そのものを顧客志向へと変革を促している例が発表された。

そして、経済のサービス化によりとくに製造業における事業の変革がさらに推し進められているという。例えば、ランプを製造販売していた会社が「明かりを売る」というサービスモデルに変革したり、航空機のエンジン製造販売会社が「エンジンのパワーを売る」というモデルに変革する等である。

また、デジタルシフトにより、プロダクトやサービスの提供モデルが変わらざるを得ない企業も多く存在している。事業自体を進化(トランスフォーミング)させていく必要性が高まっているのだ。

人事部門+サービスデザイン=顧客中心主義への組織変革!?

企業が置かれているこのような状況下において、事業自体の進化に続くものとして組織変革が位置付けられている。実際に、カンファレンスに参加しているサービスデザイナーと話をすると、インハウスのデザイナーが人事部門に協力して顧客志向型のリーダーシップスキル開発を支援していたり、外部のデザイナーがプロジェクトを推進する上で、顧客の人事部門に協力依頼をしたりするなど、相互関係がすでに進んでいることがうかがえた。

ある中国の企業による事例では、サービスデザインを取り入れるにあたって、より組織全体にかかわるアプローチが必要とされ、独自にサービスデザインの手法を開発したとの発表もあった。その企業では組織風土とマインドセットの変革から行ったとのことだ。

さらに、サービスデザインのトップ企業の一つであるEngineからも「デザインが変革をリードする」というタイトルで講演があった。

すでにサービスデザインの世界は、「組織をどのように顧客志向へと変革していくのか」「カスタマーエクスペリエンスを向上させるサービスを継続的に生み出すためにどのような組織構造であるべきなのか」等、組織変革をともなうアプローチへと踏み出している。

とはいえ、組織にサービスデザインの考え方が浸透し、実際に機能するようになるには、相当の組織の成熟度が必要になることも明らかになっている。とあるインハウスのサービスデザイナーの発表で、「サービスデザインは誰の仕事か?」という話があった。

基本的には、デザイナーがリードし、巻き込み、成果を出すことに責任を持つが、同時に、事業サイドも当事者意識を持ち、参加し、一緒に作り上げるという協働が必要とのことであった。

そうであれば、もともと組織変革の担い手であった人事部門側がサービスデザインの考え方を理解し、サービスデザイナーと協働して組織全体へとアプローチをしていけば、組織経営の中心に顧客を置くことができるのではないだろうか。

人事部門がサービスデザインで組織変革を推進すること。これが今後顧客志向のビジネスを推進していく上でのカギとなるかもしれない。

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Text by hirota

2016年10月28日 Sofia コラムより転載