「地球科学的に素晴らしい記録」地震発生時の動画、魚⇒鳥の順に驚くのは“P波とS波の違い”。名古屋市科学館職員のツイートに反響

名古屋市科学館学芸員の毛利勝廣さんは「関係者向け」を想定したツイートだったので「これだけの反響をいただけたのは、いい意味で驚き」と振り返っています。
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国土交通省・荒川下流河川事務所の公式Twitterが掲載した映像より
Twitter/mlit_arakawa_ka

10月7日夜の関東地方での地震発生の際に撮影された映像で、魚が騒いだ後に鳥の群れが飛び立った。この理由について「P波とS波の違い」と指摘するツイートが「なるほど、そういう仕組みか」と話題になっている。この分析を投稿した名古屋市科学館の学芸員に詳しい話を聞いた。

■地震の揺れ、魚⇒鳥の順に驚いたという動画とは?

10月7日午後10時41分ごろ、千葉県北西部を震源とする地震が発生。東京都足立区などで最大震度5強を記録した。この地震発生時に撮影された東京都江戸川区を流れる旧中川の定点カメラの映像を、国土交通省の荒川下流河川事務所の公式Twitterが公開した。

そこには魚が一斉に飛び跳ねたあと、カメラが揺れ、沿岸から鳥の群れが一目散に飛び立つ様子が映っていた。この映像について名古屋市科学館学芸員の毛利勝廣さんが「地球科学的にすばらしい記録です」と称賛。「P波は液体中に伝わるのでサカナがびっくり。その後のS波は水中には伝わらないのでスルー。トリは大きく揺れるS波で反応」とツイートした。

 

このツイートは10月11日現在、2万件以上もリツイートされるなど反響を呼んでいる。一体どういうことなのか。毛利さんに詳しく話を聞いた。

■関係者向けを想定したツイートだったのに「これだけの反響をいただけたのは、いい意味で驚き」

――「P波は液体中に伝わるがS波は水中には伝わらない」のは、なぜでしょうか?

P波、S波という名前は実は性質を表したものではなく、最初に来るprimaryのPと、二番目に来るsecondaryのSというように、地震波が到達してくる順番の頭文字をとったものです。波の性質としてはP波は縦波、S波は横波です。

縦波はものが伸び縮みして伝わっていく疎密波で、固体も液体も気体も通ることができます。横波はもののずれ、ねじれによって伝わっていく波なので、もともと形のない液体や気体を通ることができません。この性質によって、地球の外殻部分が液体であることが発見されたりしています。

――「地球科学的にすばらしい記録」というのはどういう意味でしょう?

自分の現在の専門はプラネタリウムでの天文教育、さらに博士号は情報科学なので、動物の生態に関することは門外漢です。また、地球科学(岩石学)の修士ではあるので、地球科学については守備範囲の分野になります。鳥の行動については種類やどこにいたのかがよくわからないので、生物系の方の検討が必要と思います。

ただあれだけぐらぐら揺れれば反応しますよね。最初の魚のすごい反応、そして、カメラが揺れ始めたあとのS波スルーは液体中は横波が伝わらないことが関係していることは間違いないと思います。ということで、生態科学的にではなく、地球科学的になのです。

 

―― 投稿から3時間あまりで5000件以上もリツイートされるなど話題になっていますが、こうした反響をどう思いますか?

まず、この映像がとても印象的なものだったからですね。国土交通省荒川下流河川事務所の大ヒットと思います。このような映像を公の機関が流すことができ、一般の多くの方が見られるというのが、情報科学的にとてもよいことと思います。

もともと関係者向けを想定した個人アカウントでの超シンプルなツイートです。広報普及を目的としたnagoya_planetアカウントであれば、これはちゃんとP波S波の特性を説明してからという順序になります。にもかかわらず、これだけの反響をいただけたのは、いい意味で驚きです。そして多くの方が地震に関心があるということもあらためて深く感じました。