教育は「紙」から電子に?

この8月は「紙 vs 電子」というのが私の個人的な大テーマでした。
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こんにちは、鍵本です。ずいぶん間が空いてしまって、申し訳ない限りです。

ブログネタはたくさんあるのですが、それを書く前にやるべき仕事があまりに多くて、パニックしていました。

ちょっとしたご報告をすると、私の運営する「株式会社KSプロジェクト」が発行する

KSPパズル新聞

が、8月末よりコンビニエンスストアに設置されているプリンタにてプリントアウトできるようになりました(プリントアウトが可能なコンビニエンスストアの一覧やプリント方法はこちらからご確認ください)。1部100円で毎週火曜日の発行ですが、過去の分も出力が可能です。A3の裏表に(1)漢字パズル(2)三角パズル(3)不等号パズル が掲載されています。

また、電子版もありまして、こちらから購入可能です

よろしければ、電車の中やカフェで挑戦してみていただければと思います。

さて、今回のパズル新聞もそうなのですが、この8月は「紙 vs 電子」というのが私の個人的な大テーマでした。

パズルの新聞を紙で発行しようか、それともこれからの流れで電子で発行しようか?

そして、私が運営する株式会社KSプロジェクトは、どちらを向いて進んでいくべきなのか? この8月でかなりはっきりしてきました。一言でいうと、紙と電子と両方に対応できるようにしよう、と(笑)

これと同じテーマが数学の授業にもあてはまるのです。すなわち、

これからも数学の授業を黒板とチョークで続けられるのか、それとも近いうちに黒板とチョークが教室からなくなって、電子黒板での授業を迫られるのか?

ということです。今回は教育現場から紙のノートと教科書、鉛筆とチョークと黒板がなくなるかも、というお話を考えてみたいと思います。

私が会員として所属する「LET(外国語教育メディア学会)」「日本デジタル教科書学会」と「CIEC(コンピュータ利用教育学会)」の全国大会が相次いで8月に開催されました。そこでの議論はかなり白熱してましたが、実感したことはかなり「電子」の教育ツールが充実してきたということです。

例えば私は数学を高校生に教えていますが、数学を教えるための黒板を電子化するのはかなり大変です。

数学の授業というのは、ともかく細かい数式をどんどん書いていって、学生にもそういう計算をしてもらうのが流れです。問題をたくさん解いてもらうのが重要なのです。

そういう問題を解く際のツールが、今までは「紙のノート」でありチョークの粉が飛ぶ「黒板」だったわけですが、これと同じことを電子でできるようになるのかどうか、ということです。要するに、

タブレットで数学の問題が解けますか? 電子黒板でさっと積分計算ができますか?

ということです。

もしかしたら小学生の算数の問題はすでに今の技術でも解けるかもしれません。教材も充実しているようです。でも、大学受験で出てくる数学IIIの積分計算がタブレットですんなりと解けるでしょうか?

はっきり言います、今の量産品ではかなり窮屈です。現状の解像度と書き心地で、解けないこともないですが、現状ではたぶん電子黒板を数学の授業で導入する高校数学教師は少数派だと推測します。

ところが、私の予想ではこの数年の間にタブレットや電子黒板が改良されて、複雑な積分計算を電子黒板でできるようになる気がするのです。そこまで技術は紙+チョークに近づいてきています。そう、学会で感じました。

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(タブレットパソコンにペンで書いた数式の例)

書き心地の問題はかなり改善されてきたと感じるのです。

もしもタブレットや電子黒板で複雑な計算ができるのであれば、おそらく世の中の多くの紙のノートとチョークの黒板は、電子にとってかわられるはずです。現状の電子黒板やタブレットのペンの問題点は、細かい線が描きづらいということと、書き心地が悪いということ。この2つのために、タブレットで細かい計算をするのがとても煩わしいのです。これらの問題点を改善できれば、数学の授業での電子黒板+タブレット率は飛躍的に上がると思います。そして、数学の授業をクリアできれば...おそらくどんな科目でも電子黒板を使うようになるであろうと想像されるのです。

電子黒板のメリットを思いつくままに書くと、

○拡大縮小が簡単、修正が簡単

○図形やグラフを簡単に描くことができる

○保存、複製が簡単、提示も簡単

○消去がさっとできる、保存した前のページをもとに戻すことができる

○休んで聞き逃した講義の板書を家で学習できる

○教科書やプリントを黒板に提示して指し示すことができる

...などなど。

デジタル化された学校での数学の授業をここで想像してみます。

○「はい、今日は教科書124ページの定理の証明から」と言って、先生が教科書のページを入力したら、各学生のタブレットには自動的に124ページが提示されます。

○電子黒板には教科書124ページが提示されていて、それを指し示しながら先生が電子黒板にアンダーラインを入れていきます。先生が途中、余白で定理の証明に出てきた式の変形を電子黒板に書き込みます。生徒はそれをぼうっとみながら「ふんふん」と言っています。

○定理の説明が一通り終わったら「板書を保存して新しいページ」ボタンを先生が押します。電子黒板が新しいページに切り替わり、教科書の125ページ(次のページ)が電子黒板にさっと提示されます。

○例題を先生が黒板で解いたのち、先生が5分ほどで練習問題2問を解くように指示します。学生が練習問題2問をタブレットに解いていきます。

○5分ほどして、先生がA君とBさんを指名します。A君とBさんはタブレットに書いた自分の答案を電子黒板に送ります。電子黒板には2人の解答案が示されます。

○そこに先生が赤い字で採点しながら書き込んでいきます。終わったらそれも保存。

○授業が終わって家に帰ったら、学校の授業の復習をします。タブレットには自動的に保存された板書がそのまま表示されます。もし授業を休んだ場合には、学校のポータルサイトから授業の板書をダウンロードして、今日の授業を自力で復習します。

...とこんな感じになるかも知れません。

別の言い方をすると、今までよく見かけた「先生教科書わすれました」とか「授業が始まったのに教科書を開けてない」とか「解いた問題を前に出させて答案を書かせる」とか「黒板を全部消して次の話にいく」とか「先生黒板が見えません」とか「昨日休んでたから何をやったかわかりません」とか、そういう光景が無くなる、ということです。宿題をしてこない学生とか、タブレットの電源を入れずにぼうっと座ってる学生はいるかもしれませんが。

とりあえず、教育の風景が近い将来がらっと変わる日は近い気がするというわけです。

今あるチョークの黒板を取り外してまで電子黒板にする学校は少ないかもしれませんが、本当に電子黒板とタブレットが数学の授業で使いものになるようであれば、チョークの黒板が設置されている教室ではなく、電子黒板が設置されている教室を使う先生は増えるはずです。新しい教室を作るたびに、チョークの黒板ではなく電子黒板が備え付けられた教室が増えるはずです。

さらに電子黒板は、そのソフトによって違うとは思いますが、いろんな意味で教育の可能性を広げてくれます。例えば弱視の学生も、拡大を簡単にできるので授業参加が格段に容易化されるであろうし、不登校の学生でも家にいながら勉強できる道がかなり開かれるわけです。

すでに模擬試験などでは採点がデジタル化されていますし、学習塾なども形態が変わってくる可能性が高いです。センター試験が廃止されて、2020年から新しい試験が導入されるとのこと。教育のデジタル化は、おそらく近い将来、多くの学校で何らかの変化をもたらすはずです。これからどうなるのか、目が離せない状況です。