「SNSのフェイクニュース対策は不十分」ドイツ政府が規制法案を出した背景とは

「SNS運営企業のユーザー報告対応に関し、拘束力のある基準を設け、違法な投稿の削除を義務付けるものだ」
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ドイツのハイコ・マース法相

ドイツのハイコ・マース法相は、フェイクニュースを含むSNS上の違法な投稿を取り締まり、FacebookなどのSNSが違法な投稿を迅速に削除せず放置した場合、最大5000万ユーロ(約61億円)の罰金を科す法案を提出した。

ハイコ・マース法相が3月14日に提出した法案では、SNSサイト各社は24時間体制の相談サービスを設置し、ユーザーによる違法コンテンツの報告に対応することが求められる。

BBCによると、マース法相は、法案ではドイツが違法コンテンツとして禁止しているヘイトスピーチが規制対象となるほか、内容が中傷的であったり、人の名誉を毀損するものであった場合、フェイクニュースにも罰則が適用されうると述べた。「明らかに違法」とみなされた投稿はすべて24時間以内に削除するか閲覧不可としなければならず、違法性が比較的低い案件についても、7日以内に解決しなければならない。

この法案は、ドイツで生活するシリア難民がFacebookを相手取った訴訟に敗訴してからちょうど1週間後に提出された。裁判は、原告をテロリストだとする誤った投稿画像の削除を巡って争われた。画像は、難民保護施設を訪れたアンゲラ・メルケル首相と原告が一緒に写真撮影する姿を捉えたものだった。

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先週あるシリア難民が、自分をテロリストだと決めつける誤った投稿について、Facebook社に削除を求める裁判で敗訴した。 ドイツのアンゲラ・メルケル首相と記念撮影する彼の画像が、インターネットで拡散した。 FABRIZIO BENSCH / REUTERS

マース法相は、中傷する投稿の報告についてSNS側の対応は改善されているが、対策はまだ不十分だと指摘した。マース法相は声明の中で、今回提出された法案は「SNS運営企業のユーザー報告対応に関し、拘束力のある基準を設け、違法な投稿の削除を義務付けるものだ」と述べた。

マース法相が引用した政府の青少年保護機関の調査結果によると、ユーザーから報告のあった違法コンテンツのうち、Facebookが削除あるいは閲覧禁止処置を取ったのは39%に過ぎず、報告後24時間以内に削除された投稿はわずか33%だった。

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ドイツの青少年保護機関による調査で、Facebookはユーザーから報告のあった違法コンテンツのうち39%しか削除またはブロック処置をしていないことが分かった。 STEPHEN LAM / REUTERS

また、Twitterでは、違法と判断される投稿のうち削除されたのはたったの1%で、24時間以内に削除された投稿はなかった。最も優れた対応をしていたのはYouTubeで、違法コンテンツの90%が削除されていた。しかしそのうち82%は、報告から削除までに24時間以上の時間がかかっている。

YouTubeの広報担当者は声明の中で「法案は発表されたばかりで、我々は現在、細部を分析している」と述べた。「違法なヘイトスピーチに早急に対処できるよう、今後もシステムの改善を続けていく」

FacebookはBBCの取材に応じたが、法案についてはコメントを控えた。しかしFacebookは、報告のあったコンテンツの削除率を調べる調査を独自に受けており、それらの調査では政府の調査結果よりも良好な数値が出ているとコメントした。

ハフィントンポストUS版はTwitterに取材を申し込んだ。法案についてのコメントは得られなかったが、Twitterは、この数週間でフィルター機能の追加やユーザーサポートの強化など有害なコンテンツに対抗するための方策を新たに展開したと述べた。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

ヨーロッパの極右
フランスの国民戦線(01 of10)
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国民戦線は今回の欧州議会選挙で、反移民の方針を訴えて支持を集め、フランスで約25%の得票を得て24議席を獲得した。\n\nマリーヌ・ル・ペン党首は、同党の毒を抜き、ソフト路線に切り替えようと熱心に取り組んできた。彼女は、自身の父親であり党創設者でもあるジャン=マリー・ル・ペンにさえも矛先を向けている。そのジャン=マリー・ル・ペンは先月、「エボラウイルス」なら欧州の移民問題を「3カ月で」片付けてくれるだろうと発言したばかりだ。同氏はこれまでも、フランスの差別禁止法の下で何度も有罪判決を受けているほか、ナチスのガス室は「第二次世界大戦の歴史では些細なことにすぎない」という発言でも有名だ。 (credit:Getty Images)
ドイツ国家民主党(02 of10)
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ドイツ国家民主党(NPD)は、 欧州議会選挙で得票率1%を得て1議席を獲得。欧州議会に初進出を果した。同党は、基本政策として移民の受け入れ停止を訴えており、「シンティ・ロマ人ではなくお年寄りのための予算を」や「ボートは満員だ(移民を受け入れる余地はない、という意味)」というスローガンを掲げて選挙活動を繰り広げたほか、ヨーロッパは「白人のための大陸」だと公言してはばからない。また、ナチスの思想であった「国家社会主義」を垂れ幕に掲げて行進したこともある。人種差別主義ならびに反ユダヤ主義であると批判されている。 (credit:Getty Images)
ギリシャの「黄金の夜明け」(03 of10)
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ギリシャの超国家主義政党「黄金の夜明け」は、暴力的な行動で有名だが、選挙に備えて兵士用ブーツを脱ぎ捨て、スーツに着替えた結果、欧州議会で初の議席を獲得した。\n\n党の広報担当者はまんじの入れ墨を入れているほか、かなりの数の党員が、犯罪組織の一員だとして逮捕・服役中だ。また、ギリシャ国内のモスクやユダヤ教の礼拝堂シナゴーグ、墓地などには、同党のスローガンがなぐり書きされている。\n\n2012年5月に行なわれたギリシャ議会総選挙では、「けがれた国を一掃しよう」をスローガンに掲げ、「ギリシャ人限定」で食糧配布を行なった。党の広報担当者が議会で、『シオン賢者の議定書』(1900年前後に書かれたとされる「ユダヤ人が世界征服を企んでいる」という内容の書で、ナチスをホロコーストに導いたと言われている)の一節を引用して発言したこともある。黄金の夜明けは現在、ギリシャで第3位の政党になっている(日本語版記事)。 (credit:Getty Images)
真のフィンランド人(04 of10)
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フィンランドの反EU、大衆主義政党「真のフィンランド人」は、欧州議会選挙で予想したほどの結果をあげられなかったものの、2議席を獲得した。そのうちの1人ジェームズ・ヒールビサーリ議員は2011年、自身のブログに、イスラム教徒に関する発言を書き込んで罰金刑を受けている。また、もう1人は、フィンランド独立記念日を祝う舞踏会への出席を、「同性カップルは見るのも嫌だ」と言って断わっている。 (credit:Getty Images)
デンマーク国民党(05 of10)
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デンマーク国民党」は、27%近い得票率を獲得し、欧州議会の議席を2倍に増やした。党首は元介護士のピア・キェアスゴーで、ムスリムに対する差別的発言を繰り返している。\n (credit:Getty Images)
オランダの自由党(06 of10)
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オランダの「自由党」は、欧州議会で4議席を維持したが、党首であるヘルト・ウィルダースは、親EU政党が上位を占めた選挙結果にがっかりしているはずだ。同党首は、オランダへのイスラム系移民受け入れ全廃、ならびに現在オランダに住んでいるイスラム系移民の送還を訴えている。同党は、2010年のオランダ下院選挙で第3党になっている。 (credit:Getty Images)
ハンガリーの「ヨッビク」(07 of10)
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ハンガリーの「ヨッビク」(右翼青年協会)は、欧州議会で最も極右色を明確にしている政党のひとつだ。今回も2009年の欧州議会選挙と同様に3議席を獲得し、得票率は14.7%だった。同党は、ハンガリー在住ユダヤ人に対し、ユダヤ人名簿への署名を要求している。 (credit:Getty Images)
オーストリア自由党(08 of10)
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オーストリア自由党は、党の基本政策である反移民を訴えて議席数を大幅に増やし、全体のおよそ5分の1の票を集めた。欧州議会の議席数は2から4に倍増し、フランスの国民戦線と手を組む考えを示している。 (credit:Getty Images)
イタリアの北部同盟(09 of10)
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イタリアの「北部同盟」は、イタリアで6%の得票率を獲得した。同党に所属するある元欧州議会議員はかつて、「アフリカが偉大な人物を輩出したことがないのは、どんな百科事典を見てもわかる」と発言したことがある。 (credit:Getty Images)
イギリス独立党に負けたイギリス国民党(10 of10)
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ニック・グリフィンが党首を務める「イギリス国民党」(BNP)は、欧州議会の議席を失った。同党で唯一欧州議会議席を持っていたアンドリュー・ブロンズは離党していた。\n\nグリフィン党首は、イギリス国民党こそ本物の「人種差別主義」政党であり、イギリス独立党(UKIP:欧州連合からの脱退を主な目的としている)に投票した人は勘違いをしたのだと語っている。なお、Huffington日本語版過去記事では、イギリスの極右団体「イングランド防衛同盟」(EDL)の画像集も紹介している (credit:PA)

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

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