「聖書は闘いを禁じていない」総合格闘技に挑む牧師たち(動画)

この映画は、総合格闘技(MMA)を実践する宗教指導者たちの世界を探究し、「自らを愛するように隣人を愛しながら、その顔に思いきり膝蹴りを食らわせることができるのか」と問いかけている。
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冒頭の動画は、2014年のナッシュビル映画祭ボストン・インデペンデント映画祭の公式上映作品に選ばれ、アメリカ各地で上映会が予定されているドキュメンタリー映画『Fight Church(ファイト・チャーチ)』の予告編だ。

「闘う牧師たち」については数年前から話題になっているが、この作品は、その独特の世界を垣間見ることができる興味深い内容となっている。

この映画は、総合格闘技(MMA)を実践する宗教指導者たちの世界を探究し、「自らを愛するように隣人を愛しながら、その顔に思いきり膝蹴りを食らわせることができるのか」と問いかけている。

この作品を制作したブライアン・ストーケル監督は、ハフィントンポストUS版の取材に対し、今回の映画制作に関心を抱いたのは、アメリカ各地に「闘いの教え」を説く牧師がいるばかりか、そのコミュニティーが多数存在すると知ったからだ、と教えてくれた。人々に教会に足を運んでもらう手段として、「闘いの教え」を説く教会が何百もあるのだ。

監督は「闘いの教え」を、「教会に人を呼び集めるための、闘いに関連したことすべて」と定義しているが、こうした教えを正式に採用しているいないにかかわらず、「男性向けの教会活動の一環として総合格闘技を取り入れている教会は、数えきれないほどあるとわかったのです」と、監督は語る。

格闘技の教室や観戦イベントを開いている教会もあれば、教会の敷地内で総合格闘技の試合を実際に開催している教会もあるという。

同映画の公式サイトではこう述べられている

私たちの目標は、完全に客観的な立場を貫きながら、楽しめる物語として事実を紹介することです。私たちの意見や感情をさしはさまず、事実に自らを語らせたいのです。2007年のアカデミー賞にノミネートされたドキュメンタリー映画『ジーザス・キャンプ――アメリカを動かすキリスト教原理主義』と同様、この映画は、登場する挑戦的な人物たちを、客観的に、そしてしばしば共感的なかたちで紹介していきます。私たちは観客に、宗教と暴力の結びつきについて、自ら考察してもらいたいと思っています。

教会で闘いの教えを説くのは、一見、矛盾しているように見える。イエスは弟子たちに、「頬を打たれたら、もうひとつの頬を差し出せ」と教えたからだ。しかしこうした牧師たちは、救世主としてのイエスを、「たくましい人間」の理想型として見ている。

監督によれば、総合格闘技に関連する教会の活動には、小さな男の子から大人まで、年齢を超えて参加者が集まっており、「男らしさ」についての特定の理念が強調されているという。

予告編の中で、1人の牧師はこう語っている。「キリスト教主流派の教えは、男性を女性化させるものだ」。また別の牧師は「タフな男は、救世主も必要としている」と述べている。「われわれは互いに顔を打ち合う、神を恐れる人間たちにすぎない」と述べる牧師もいる。

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闘いの教えを正当化する際によく持ち出されるのが、「聖書には、スポーツとしての闘いを具体的に禁ずる箇所が見あたらない」という主張だと、監督はハフィントンポストUS版に対して説明する。

闘いの教えを正当化する別の方法は、旧約聖書に登場するダビデ(古代イスラエル王国の王)やサムソン(古代イスラエルの士師で怪力の持ち主)といった英雄を引き合いに出すことだ。両者とも、戦場での実力と才能でよく知られた存在だ。

両監督が詳しく話を聞いた教会は、大半が(「宗教右派」とかなり重複している)福音派の教会であり、カトリック教会や南部バプテスト連盟は、「闘いの教え」に批判的だという。

この作品を監督したのは、キリスト教徒のギャンブラーを題材にしたドキュメンタリー映画『ホーリー・ローラーズ』を撮影したブライアン・ストーケル監督と、2011年のアカデミー賞ドキュメンタリー短編賞を受賞した『セイビング・フェイス』(顔に酸をかけられて負傷するパキスタンの女性たちをテーマにした映画)で有名になったダニエル・ユンゲ氏の両氏だ。

[Yasmine Hafiz(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]

「世界のユニークな教会47選」
ハットルグリムス教会(01 of47)
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アイスランド、レイキャビクにある (credit:Flickr:deischi)
米空軍アカデミーの礼拝堂(02 of47)
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コロラド州コロラドスプリングス (credit:WikiMedia: Carol M. Highsmith )
マリンガの大聖堂(03 of47)
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ブラジル、パラーニャ (credit:WikiMedia)
ロンシャンの礼拝堂(04 of47)
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フランス、ロンシャン\n設計はル・コルビジェ (credit:Flickr:bobarcpics)
Thorncrownの礼拝堂(05 of47)
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アーカンソー州 (credit:WikiMedia)
サンミッシェル・デグイルの礼拝堂(06 of47)
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フランス (credit:WikiMedia)
Chapel of the Holy Cross(07 of47)
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アリゾナ州セドナ (credit:WikiMedia)
パラポルティアニ教会(08 of47)
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ギリシア、ミコノス島 (credit:WikiMedia:)
塩の礼拝堂(09 of47)
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コロンビア、クンディナマルカ県 (credit:Flickr:mckaysavage)
聖ジョージ教会(10 of47)
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エチオピア、ラリベラ (credit:Photo by Sean Gallup/Getty Images)
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ノルウェー\n※ノルウェーには12~14世紀ごろに、と呼ばれる独特な木造教会が数多く建てられた。ヴァイキングたちが信仰していた北欧神話から、キリスト教に帰依していった時代のもので、キリスト教とヴァイキング文化が融合しているのが特徴。ヴァイキング船の造船技術が用いられ、屋根にある龍の飾りは、魔除けに使われた船頭の飾りと同様という。現存するのは30ほどしかない。現在のボルグン・スターヴ教会は1738年に造り直したもの。 (credit:WikiMedia)
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ニュージーランド、クライストチャーチ (credit:WikiMedia:)
ラス・ラジャス大聖堂(13 of47)
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コロンビア (credit:WikiMedia)
原宿教会(14 of47)
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Tokyo, Japan (credit:Flickr:japanese_craft_construction)
クリスタル・カテドラル(水晶の大聖堂)(15 of47)
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カリフォルニア州ガーデングローブ (credit:Flickr:Prayitno)
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モスクワ、赤の広場 (credit:Flickr:flickr.annieandrew)
ヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂(17 of47)
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スペイン・サラゴサ (credit:Flickr:Catedrales e Iglesias)
聖ギルダスの礼拝堂(18 of47)
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フランス (credit:Flickr:Rhian vK)
マドンナ・ラクリメ聖堂(19 of47)
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イタリア、シシリー島 (credit:Flickr:MeRyan)
ジュビリー教会(20 of47)
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イタリア、ローマ (credit:Flickr:mac.rj)
雪の教会(21 of47)
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ドイツ、バイエルン州のMitterfirmiansreut (credit:Getty Images)
グルントヴィークス教会(22 of47)
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デンマーク、コペンハーゲン (credit:WikiMedia)
空気でふくらむ教会(23 of47)
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イギリス、サンダウン (credit:Getty Images)
エヴリー大聖堂(24 of47)
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フランス、パリ郊外 (credit:Getty Images)
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ドミニカン共和国 (credit:WikiMedia)
Felsenkirche(26 of47)
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ドイツ、Idar-Oberstein (credit:WikiMedia)
Stykkishólmskirkja(27 of47)
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アイスランド (credit:Flickr:giuliaduepuntozero)
植物の礼拝堂(28 of47)
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イタリア、ベルガモ (credit:WikiMedia:)
巡礼教会(29 of47)
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ドイツ、Neviges (credit:Flickr:seier+seier)
サグラダ・ファミリア(30 of47)
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スペイン、バルセロナ\nアントニ・ガウディの未完作品 (credit:Flickr:loloieg)
石の教会(遺跡)(31 of47)
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トルコ、ギョレメ (credit:WikiMedia)
アッシジの聖フランチェスコ教会(32 of47)
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ニューメキシコ州 (credit:WikiMedia)
Chapel of Reconciliation(和解の礼拝堂)(33 of47)
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ドイツ、ベルリン (credit:Flickr:joshua l)
ブラザークラウス野外礼拝堂(34 of47)
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ドイツ、ケルン郊外 (credit:Flickr:karaian)
ファースト・ユニテリアン教会集会所(35 of47)
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ワイオミング州マディソン\nフランク・ロイド・ライトの建築 (credit:WikiMedia)
セドレツ納骨堂(36 of47)
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チェコ、プラハ郊外\nセドレツ墓地内の全聖人教会地下にある。この教会と納骨堂は約4万人の人骨を保管し、そのうち約1万人分の人骨を用いて礼拝堂内の装飾をしていることで知られる。 (credit:Flickr:fdecomite)
Church of the Sacred Heart(37 of47)
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ドイツ、ミュンヘン (credit:WikiMedia:)
スヴェティ・クリツ(38 of47)
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クロアチア (credit:WikiMedia)
ドナウ・シティ教会(39 of47)
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オーストリア、ウィーン (credit:WikiMedia)
崖の教会(40 of47)
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ジョージア州Katskhiクリフ (credit:WikiMedia:)
Valleaceronの礼拝堂(41 of47)
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スペイン、Valleaceron (credit:Flickr:yamiq)
サン・ペドロ大聖堂(42 of47)
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(credit:Flickr:oldandsolo)
聖ヨハネ教会(43 of47)
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英国サセックス州ブロードブリッジ・ヒース (credit:WikiMedia)
犬の教会(44 of47)
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ヴァーモント州セントジョンズベリー (credit:Flickr:superba_)
サン・オウガスチン教会(45 of47)
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フィリピン、パオアイ\n1606年にできたフィリピン最古の石造り教会。世界遺産に指定されている。 (credit:WikiMedia)
St. Joseph the Betrothed Ukrainian Greek Catholic Church(46 of47)
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イリノイ州シカゴ (credit:Flickr:cliff1066™)
オークランド大聖堂(47 of47)
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カリフォルニア州オークランド (credit:WikiMedia)
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