【地下鉄走って90年】銀座線1000系特別仕様車両

東京メトロは2017年1月17日、我が国初の地下鉄電車、旧1000形をモチーフとした、銀座線1000系の特別仕様車両を営業運転した。

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識別帯はないが、レモンイエローが"銀座線の車両"を主張している。

東京メトロは2016年11月に銀座線1000系の特別仕様車両が登場し、2017年1月17日に営業運転を開始した。我が国初の地下鉄電車、旧1000形をモチーフとしたのが特徴で、通常の営業運転のほか、イベントにも使われる予定だ。

■レモンイエローをさらに強調したエクステリア

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1000系は2011年9月に登場し、翌2012年4月11日にデビュー。

東京メトロは、銀座線用の1000系を01系と同じ38編成投入する予定だったが、可動式ホーム柵の整備やダイヤ改正(2017年1月23日実施)の関連で、2013年に2編成(第39・40編成)の追加増備を決定した。折しも銀座線は「伝統×先端の融合」をコンセプトとした全面リニューアルに取り組んでおり、社内から「そのまま同じ車両にするのは......」という声があがっていたという。

そこで追加増備の2編成については、"よりお客様に楽しんでほしい"というコンセプトで、「伝統」に基づいた特別仕様車両に決め、地下鉄では大変珍しいイベント対応車にした。

エクステリアは従来車(第1~38編成)以上に強烈なインパクトを放つ。フロントガラスの周りと側窓ピラーの黒、側面の窓枠、前面の突当て座など、アルミ車体の"地肌"をレモンイエローに、乗務員室側の握り棒と開閉ハンドルを無塗装から真鍮(しんちゅう)色(銅と亜鉛の合金)に、それぞれ変更された。

従来車に比べ、渋く、精悍な顔立ちになり、乗客から高く評価された「レモンイエローの華やかさ」が増したと言えよう。

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1000系特別仕様車両の車体側面

車体の帯も3色から、ウインドシルを模擬したデザインに変更されたほか、側窓及び戸袋と行先表示器のあいだに、ウインドヘッダーの模擬が加えられた。設計当初、リベットなどの模様を入れる案もあったが、"スッキリとした壮観な車両"にするため、省略された。

鋼製車体の旧1000形が産声を上げた1927年は、溶接技術が発達していなかったので、金属板同士をリベットで打ち込んだほか、窓枠や出入口周りの強度を保つため、ウインドシルとウインドヘッダーで補強し、頑丈な車両を作り上げていたのだ。

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1灯ヘッドライトの現役車両は、蒸気機関車や京浜急行電鉄800形などがある。

灯具については、LEDヘッドライト(前部標識灯)を従来車の2灯白色から1灯電球色に変更され、ガラス製レンズの保護金具を再現した。1灯減ったとはいえ、照度に関しては従来車と変わらない。一方、LEDテールライト(後部標識灯)も形状を旧1000形と同じデザインとした。

行先表示器は従来車と同じ白色LEDで、行先に駅ナンバリングが追加された。車両部によると、従来車も順次改修されているという。

なお、台車や走行機器などは従来通りである。

■インテリア

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1000系特別仕様車両の車内。

従来車は現代的な明るい雰囲気だったが、特別仕様車両は旧1000形をできるだけ再現し、木目調主体の化粧版も相まって暖かみがある。

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優先席は、貴賓席を彷彿させる色調だ。

ロングシートの一般席は緑のシートモケットで、色調は旧1000形より明るい。一方、優先席は地下鉄開業当初に存在しておらず、客室の雰囲気に合わせるため、深みのある赤とした。従来車の優先席も赤だが、色彩が異なる。また、手すりは真鍮色としているが、優先席は従来通り一部分を除きオレンジとした。

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1000系特別仕様車両の吊り手。

吊り手はバネで跳ね上がるリコ式の再現を検討していたそうだが、乗客のニーズや安全性の観点から、現代に合わないと判断され、模擬形状にした。

特筆すべきなのは、一部丸形の吊り手が採り入れられたこと。東京メトロの前身、営団地下鉄時代から、吊り手は握りやすい"おむすび形"を標準としており、今や関東地方の鉄道事業者にも広がっているからだ。

車両部によると、丸形の吊り手を採り入れたのは、リコ式模擬形状の雰囲気に合わせるためだという。

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地下鉄博物館に展示されている旧1000形と、現役の1000系は、いずれも日本車両製。

車端部の妻面に掲げられている車両の銘板も旧1000形を再現。地下鉄開業当初、日本語の横書きは右から左へ書いていたので、車両メーカーと製造年も旧字体とした。

LED室内灯は調色機能を追加。通常の営業運転では4000K(ケルビン)の蛍光色、イベント時では2700Kの電球色で客室を照らす。蛇足ながら、旧1000形は間接照明の電球色に対し、1000系は直接照明(従来車は蛍光色のみ)である。

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通常の予備灯は、各車両4つの室内灯で対応されている。

特別仕様車両の"目玉"といえるのは、イベント用の予備灯だ。車両部によると、地下鉄博物館に展示されている旧1000形の予備灯を持ち帰り、3Dスキャナーでスキャンしたという。

銀座線は変電所の境目ごとに、線路脇に敷設された第3軌条(直流600ボルトの高圧電流が流れる)と第3軌条のあいだが離れている。旧1000形や2000形などの古い車両は、室内灯の電源を台車に装架された集電靴から直接得ていたため、ポイント通過時や駅到着前に室内灯の瞬間停電及び、予備灯を点灯していた。

その光景も1993年7月30日で見納めとなり、瞬間停電は伝説となった。

イベント用の予備灯は、先頭車の集電靴の加圧条件をTIS(Train control Information management System:車両制御情報管理装置)により検知し、速度、走行距離、加減速度を演算。先頭車から順に瞬間停電及び予備灯が再現される。実際に点灯された姿を見ていると、電球色の室内灯といっしょに点灯させると、華やかさが増すように思う。

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特別仕様の戸袋広告枠。

なお、イベント用の予備灯設置に伴い、一部の戸袋広告枠は係員が広告を挿入しやすいよう、固定式から外開き式に変更された。当然のことながら、乗客は勝手に動かしてはならない。

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東京メトロは、2015年度の新製車からフリースペースを各車両に設置。

このほか、フリースペースは各車両に設置(従来車の第1~20編成は、1・6号車のみ)、LCD式の旅客情報案内装置は、2016年度の増備車から日比谷線用13000系と同じ3画面式に変更されており、2015年度以前の従来車も順次改修されている。

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01系の置き換え完了後、可動式ホーム柵の整備が進められる。

特別仕様車両の第39編成は冒頭で述べた通り、2017年1月17日に営業運転を開始。残る第40編成は同年3月中旬の予定だ。これに伴い、銀座線のイメージだけではなく、日本の鉄道車両の概念をも変えた01系が、34年の歴史にピリオドを打つ。

【取材協力:東京地下鉄】