ハラスメントの実態は? 荻上チキさんらが調査「議論のたたき台にしてほしい」

記者会見では「数字は数字。どういう社会のあり方を目指すのか」と問いかけました
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記者会見した小島慶子さん、永田夏来さん、荻上チキさん(左から)
中村 かさね(kasane nakamura)

評論家の荻上チキさんらが1月21日、厚生労働省で開いた記者会見を開き、電車など公共空間やSNSでのハラスメント行為の調査結果を発表した。

調査は2018年9月、東京・千葉・埼玉・神奈川の1都3県に住む15〜49歳の男女27万1480人を対象に、インターネットで行った(有効回答数は1万1903人)。会見には、荻上さんのほか、永田夏来・兵庫教育大大学院講師とタレントの小島慶子さんが出席。調査費用は約200万円で、ハラスメントのない未来を目指す「#WeToo Japan」によるクラウドファンディングなどで集めた。

痴漢被害とスカートの長さは関係なし

「体を触られる」「性器など体の一部を直接見せられる」など何らかの被害を受けた経験がある女性は7割に上り、男性の3割を大きく上回った。

電車内での痴漢被害経験と、スカートの長さや服装、通勤・通学時間との関係も調べた。スカートの長さと被害の有無はほとんど相関がなかった一方、通勤時間が長く、私服よりも制服を着ていた方が被害に遭いやすかった。

「本人がコントロールできない要因で痴漢被害に遭っていることが分かった。本人努力には限界があり、制服をなくしたり、社会に蔓延しているジェンダー差別をなくすことが、遠回りに見えても痴漢被害をなくす効果的な方法です」(荻上チキさん)

オンラインでの被害「セクハラは女性で、誹謗中傷は男性」

LINE、Facebook、Twitter、Instagramーー。どのSNSでもハラスメントはあるが、「不快な性的アプローチを繰り返された」経験はすべてのSNSで女性の方が多く、最も高かったのはTwitterで12.2%だった。

一方、「見知らぬ相手に誹謗中傷された」経験は、すべてのSNSで男性が女性を上回った。最も高いのはInstagramで15.9%だった。

「露出度が高い服装なら痴漢されても仕方ない」でいいのか?

ハラスメントや性的被害を訴えると、被害者が責められることがある。調査からは、そんな現状と課題も浮かんだ。

「ワールドカップ開催中の渋谷など、人混みで痴漢にあっても仕方ない」と考える人は、男性で30.9%、女性で24.7%。「露出が高い服を着ている人は、痴漢にあっても仕方ない」という項目では、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した女性は男性を上回る45.6%で、女性の間でも意見が分かれた。

一方、「冤罪があるかもしれないので、痴漢を告発する時にはよく考えるべきだ」と考える男性は74.8%で、女性(63.5%)より10ポイント以上多かった。

会見で、荻上さんは「現状を数字で可視化して共有することで、まずは同じテーブルで議論を始められる状況を作りたい」と訴えた。

「どういう社会を目指すかという議論のたたき台にしてほしい」

「何がセクハラか分からない」。そんな戸惑いの声もよく聞く。不快だと思う境界は、男女によって大きく異なることも明らかになった。

例えば、女性の9割は「見ず知らずの異性から連絡先を渡される」ことを「不快」だと感じるが、男性の4割近くは「不快」だとは感じていない。「自分の体を触られる」ことを不快だと感じない女性は1.6%だが、男性では9.9%に上った。

「男女の認識差はもちろん、同じ性別でも認識には個人差がある。数字は数字。少数派が多数派に合わせろ、というのではなく、どういう社会のあり方を目指すのか、という議論のたたき台にしてほしい」(永田夏来さん)

「ほら、女性だって被害者に落ち度があると思っている、と数字を盾にとる人もいるかもしれない。そうではなく、『ハラスメントはいけないんだ』という前提を共有したうえで、なぜこんな風に考えてしまうんだろう、というところを議論したい」(小島慶子さん)

調査では、既婚未婚や子どもの有無、親との同居、学歴や年収なども尋ねている。今後はさらに分析を重ねていく予定だ。