通信制高校で4割、定時制高校で3割が卒後進路「その他」

きっかけの提供から一歩踏み込む
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進路「その他」で卒業を迎える高校生

通信制高校や定時制高校には、不登校経験を持っていたり、経済的に苦しい家庭の一員であったり、さまざまな生きづらさを持つ子どもたちが通っている。そのなかで、少しでも進学しやすい社会的環境を創っていこうと、奨学金制度の拡充が叫ばれているのは子どもたちにとって大きな希望になり得るだろう。

平成27年の各高校の卒業生の進路状況構成比を見ると、通信制高校や定時制高校を卒業した後、大学や専門学校などに進学する子どもたちの割合は全日制高校と比較して明らかに低く、進学を希望しないだけでなく、進学したいが経済的な事情などによりその選択肢を持っていない子どもたちが少なからずいることは想像に難くない。

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この通信制高校で4割、定時制高校で3割が卒後進路で「その他」となっていることをどのように捉えたらいいのだろうか。ここには夢をかなえるために就職や進学を選ばなかった子どもたちもいるだろうし、アルバイトで生計を立てることを選択した子どもたちもいるだろう。そして、そのなかには進学の選択がそもそもなく、学校に通うことだけで精一杯の生活で将来のことを考える余裕のない子どもたちもいる。

通信制・定時制高校の子どもたちに「人のつながり」と「仕事」をつくる認定NPO法人D×P(ディーピー)は、年間1,000名の高校生たちとかかわっている。学校内に就労相談室を設置し、インターンシップや就職支援を行う一方、学校の外でも子どもたちとかかわっている団体だ。

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昨年、D×P代表の今井さんから「生きづらさを抱える高校生にプログラミングという未来を生き抜くツールを渡したい」という話をもらった。就職や進学以外にも彼らの持つ感性や才能を活かしていくためには、進学支援や就職支援という出口戦略に加え、プログラミングスキル獲得は、次代の生存戦略になり得るということだった。

しかし、それだけでは足りない。今井さんにも私にも共通する問題意識として「そもそも彼らは自分のパソコンを持っていない。自宅にもない家庭もかなり多い」ことだ。学校での授業はもちろんのこと、まとまったプログラミング習得をしても、彼らが才能を形にするパソコンというツールがない。

それを実現するために「TECH募金」を立ち上げ、現在、支援者を募っている。

きっかけの提供から一歩踏み込む

現在、若者支援の文脈でも同じ課題にあたっている。基本的なITスキル形成の機会も、基本的なプログラミング学習についても、スキル獲得を目指す少なくない若者が自分のパソコンを持っていない。自宅にあったとしても家族共用のため使える時間が限定されている。

こうなると講座を通じて得られた知識や技術を応用してみることも、自分でインターネット上にあるさまざまな学びの機会を十分に使いこなすことも難しい。パソコンを持たない若者、子どもたちにとってパソコンを持っていないことは、自分の未来を切り開き、才能を形にすするチャレンジができない致命的な環境なのだ。

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育て上げネットで発刊した「若年無業者白書」でも、自分が使うことのできるパソコンの保有率は求職型で65.8%、非求職型で72.6%、非希望型 で56.1%であった。彼らが高校時代にパソコンを持っていたかどうかはわからないが、支援現場の感覚値からすると以前から保持しておらず、いまも自分のパソコンは所有していないものと推察する。

だからこそ、新しいチャレンジの必要性を強く認識するい至った。それは自らの力で未来を切り開きたいと考える高校生にプログラミングの技術習得の機会提供の一歩先まで踏み込むことだ。そのひとつがパソコン本体を提供すること。それも真新しいパソコンの入った箱を開けるときのドキドキ感、セットアップから起動までのワクワクするような体験をしてほしい。

またプログラミング技術の獲得だけでなく、いま周囲にいる友人とは異質の世界や地域で生きてきた新しい仲間も作ってほしい。そこで出会った仲間とインターネットを通じて議論し、切磋琢磨しながら未来を創っていってほしい。そういう想いからパソコンは新品を渡し、プログラミング合宿への参加を通じて新たなつながりのきっかけを提供したい。

※TECH募金では、最初のプログラミング合宿先にライフイズテック株式会社のサマーキャンプを選択した。今後は選択肢を広げてきたい。上記映像はライフイズテック社の合宿イメージ。

生きづらさを抱える高校生の可能性を信じる

普段、楽しいことがないと愚痴っぽく語る子や、何か世界が変わるようなことをしたいとぼんやり思っている子、そしていまの自分を変えていこうとする高校生は、こういう映像の中の世界に飛び込み、そこから戻ってきたときどんな気付きを得て、どのように成長するだろうか。

このチャレンジはすべての高校生を包摂し、個々の抱える課題を一気に解決することには到底つながらない。また、現時点でとても生きづらい状況下において、パソコンとプログラミング技術習得にチャレンジできる高校生はとても少ないかもしれない。

それに加えて、パソコンという高校生にとって高額なツールを譲渡することへの批判、新品である必要はないという意見があることも認識している。それでも少なからず10代の高校生、しかも生きづらさを抱える子どもたちが、その感性や才能を信じ、彼らの可能性を応援する小さな取り組みを積み重ねていくことは、政府が担うべき社会保障の拡充とは別の、小さな二つのNPOと高校生の可能性を信じる大人のチャレンジであると信じている。

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