インドのメディア事情 ネット人口は世界2位、貧困層への浸透が課題【ルポ】

約12億5千万の人口を抱える巨大新興国インドでは、ニュースサイトや既存の新聞といったメディアや、それを支えるIT(情報技術)環境はどんな状況なのか。現場を歩いてみてみた。
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Wataru Nakano

ハフポスト・インド版が2014年12月、開設した。世界で13番目、アジアでは日本、韓国に続く3番目となる。約12億5000万の人口を抱える巨大新興国インドでは、ニュースサイトや既存の新聞といったメディア、またそれを支えるIT(情報技術)環境はどんな状況になっているのか。現場を歩いた。

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ニューデリーの書店に並ぶ新聞各紙。インドの地域言語など約20言語、計100種類の新聞をそろえているという=12月8日

 ■インターネット急成長、世界第2位

インドは新聞もデジタルも元気な国だ。日本新聞協会によると、2011年の有料日刊紙は日本が106紙なのに対してインドは約4400紙あり世界最大規模。また2012年のインドの発行部数は約1億1000万部で、日本の約4770万部の倍以上だった。一方、インターネット利用者は2014年末で約2億4000万人と見込まれ、アメリカを抜いて中国に次ぐ世界2位の「ネット大国」なのだ。インド商工会議所連合会は2018年末に約4億9000万人へ増えるとみる。

ソーシャルメディアを活用して2014年5月の総選挙の勝利に結びつけたとされるのが、インド人民党(BJP)だ。IT責任者のアルビンド・グプタ氏は「選挙で勝利したのはデジタルの力が大きい。大きな影響力を認識している」と話す。選挙期間中はTwitterやFacebookなどを使い、党のマニフェストや候補者情報を流した。英語や公用語のヒンディー語だけでなく、インド各地域の15言語で発信した。1時間に30回のメッセージを出したこともあるという。

ネットが拡大するのを受け、アメリカ発のBuzzFeedが2014年夏にインド版を開始するなど、ネットメディアも次々に立ち上がっている。

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芝生の上で新聞を読む男性(左)と、歓談する人たち=12月12日、ニューデリー

■子供はネットカフェで宿題

急成長しているとはいえ、ネット人口は全体の約2割に過ぎない。特に、パソコンやスマートフォンの貧困層への普及は進んでいない。ちなみに、スマートフォンはGoogleのAndroid搭載のものがほとんどという。知人のインド人ジャーナリスト、ラトナディープ・バネルジ氏は「Apple製は高くて、持っている人は少ない」と説明した。

ニューデリー近郊の新興ビジネス都市グルガオン。高層オフィスビル街の近くに狭い道路の旧市街が広がっている。その一角、ビルの一室に薄暗いインターネットカフェがあった。日本と違って、席の仕切りもドリンクバーもない簡素な造りだ。

男子生徒のアンルス・ドベイさん(13)はネットで画像を集めながら、野生生物についての宿題に取り組んでいた。「みんなそうだよ」と屈託なく笑ったが、友達と同じように自宅にはパソコンがないという。

別のネットカフェでは、少年らが対戦型のテレビゲームを楽しんでいた。14歳の少年は「2日に一度はここに来る。いつも1時間半くらいいるかな」と話した。

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ニューデリー郊外のインターネットカフェ。アンルス・ドベイさんがパソコンで宿題に取り組んでいた=12月8日

■貧困層の通信、政府は改善計画

インドのシリコンバレーといわれる南部のバンガロール。ヒューレットパッカードやシーメンスなどの欧米企業のほか、インドの大手IT企業が集まっている。

この地の公立高校を訪ると、「コンピューター教室」と書かれた看板がかかる教室には、パソコンは1台も置かれてなかった。校長のシャイラジャ・SNさんは「配備を待っているが届かない。生徒の将来にはITの知識が欠かせないのですが……」と嘆いた。

日本の小中高にあたる私立学校にも足を運んだ。パソコン教師のJ.ジャヤラクシュミ氏は「生徒たちはパソコン授業がとても好きだ」と話す。生徒は約4000人というが、パソコンが備えられた教室は一つだけで、25台の旧型パソコンが並ぶだけだ。学校理事長のP.サドグナムルティ氏は「パソコン教育は、生徒らが大人になったときに重要だと思う。しかし、ここの子供たちは貧しくてパソコンを持っていない」と話した。

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パソコン理論の授業を受ける生徒たちと教師(左)=12月11日、インド・バンガロール

総選挙の後に政権を樹立したモディ首相は2014年8月、独立記念日演説で貧困層や農村部にもブロードバンド環境を提供すると述べた。ネットの基盤が社会の隅々に広まった後、どんな未来が来るのか。

ハフポスト・インド版と連携するタイムズ・インターネット社のサティアン・ガジュワニCEO(最高経営責任者)は「新聞は曲がり角にさしかかっている」と指摘。アメリカのスタンフォード大学でネットビジネスを学んだまだ29歳の若者だ。

「ネットの成長とともに、インド版の影響力も責任も増すだろう」。ガジュワニ氏は力を込めた。

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ニューデリーの書店に並ぶ新聞各紙。約20言語の計100種類の新聞をそろえているという=12月8日 (credit:Wataru Nakano)
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ニューデリー近郊にあるインターネットカフェ。夕方、子どもたちはパソコンでゲームを楽しんでいた=12月8日 (credit:Wataru Nakano)
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ニューデリー郊外のインターネットカフェ。アンルス・ドベイさんがパソコンで宿題に取り組んでいた=12月8日 (credit:Wataru Nakano)
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歩きながらスマホを操作している男性=12月10日、インド・バンガロール (credit:Wataru Nakano)
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パソコンを備えた教室に立つ教師J.ジャヤラクシュミ氏=12月11日、インド・バンガロール (credit:Wataru Nakano)
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パソコン理論の授業を受ける生徒たち=12月11日、インド・バンガロール (credit:Wataru Nakano)
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パソコン理論の授業を受ける生徒たちと教師(左)=12月11日、インド・バンガロール (credit:Wataru Nakano)
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モディ首相が描かれた大きな幕がかかるインド人民党の本部。フェイスブックなどソーシャルメディアの案内も記されていた=12月12日、ニューデリー (credit:Wataru Nakano)
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スマホで友人らを撮影する生徒たち=12月12日、ニューデリー (credit:Wataru Nakano)
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芝生の上で新聞を読む男性(左)と、歓談する人たち=12月12日、ニューデリー (credit:Wataru Nakano)
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ショッピングモールの敷地内でスマホを見る男性(右)ら=12月10日、インド・バンガロール (credit:Wataru Nakano)
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ショッピングモールの敷地内でスマホを見る男女=12月10日、インド・バンガロール (credit:Wataru Nakano)
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ショッピングモールにある映画館のタッチパネルを触って情報を検索する子どもたち=12月10日、インド・バンガロール (credit:Wataru Nakano)
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インド門周辺でスマホを手に記念撮影をする男性たち=12月12日、ニューデリー (credit:Wataru Nakano)
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アリアナ・ハフィントン氏(左)とインド版のスルティジス編集長(右)=12月8日、ニューデリー (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルを前にポーズを取る男女=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルを訪れていた子供たち=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルの正門。これをくぐるとタージがある=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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正門から見たタージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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正面から見たタージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルと、水路=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルの正門=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルと訪問者=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルと水路=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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下から見上げたタージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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横から見たタージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルの塔「ミナレット」。この上から礼拝の呼びかけをする=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルの裏側の出入り口=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハル敷地内にあるモスク=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハルから見たヤムナ河。首都ニューデリーに続く=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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タージ・マハル敷地内にあるモスク=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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正門と水路=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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横から見たタージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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横から見たタージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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横のモスクから見たタージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)
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横から見たタージ・マハル=2014年12月13日 (credit:Wataru Nakano)