諫早湾干拓、漁業者に強制金支払いへ 「開門しなければ1日49万円」

長崎県の諫早湾の奥を堤防で仕切った国営諫早湾干拓事業について、再び開門を国に促す司法判断が下された。福岡高裁は6月6日、漁民が求めていた一審・佐賀地裁の「開門しない場合は強制金を支払う」との決定を支持し、国の抗告を棄却した。
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時事通信社

長崎県の諫早湾の奥を堤防で仕切った国営諫早湾干拓事業について、再び開門を国に促す司法判断が下された。

福岡高裁は6月6日、漁民が求めていた一審・佐賀地裁の「開門しない場合は強制金を支払う」との決定を支持し、国の抗告を棄却した。47NEWSは、12日から1日49万円を漁業者側に支払う公算が大きいと伝えている。

国は最高裁の判断を仰ぐため許可抗告したが、佐賀地裁が命じた開門期限は11日に迫っているため、国は翌12日分から開門まで1日49万円を開門賛成派の漁業者側に支払う公算が大きくなった。

(47NEWS「国、諫早湾制裁金支払いへ 12日から開門まで漁業者に - (よんななニュース)」より 2014/06/06 18:12)

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諫早湾奥部を閉め切る潮受け堤防の「工事」で落とされる約300枚の鋼板(長崎・吾妻町) 撮影日:1997年04月14日=時事通信社

諫早湾干拓事業は、「動き出したら止まらない大型公共事業」の代名詞といわれる。1950年代から農水省が構想してきた大型干拓事業。食糧確保のための水田用地から灌漑用水確保、水害防止など目的は次々変わり、1997年に潮受け堤防が閉じられ、3500haの農地と調整池が「ギロチン」と呼ばれる約300枚の鋼板によって仕切られた。2007年に完成し、2008年から営農が始まっている。

2000年にはノリ漁業が記録的な凶作となるなど、干拓で潮の流れが変わったことで漁業に悪影響があるとたびたび指摘されてきた。漁業関係者が国に開門した上での調査を求めた裁判で、福岡高裁は2010年に5年間の開門を命じる判決を出し、当時の菅直人首相は上告せず確定した。

一方、できあがった干拓地で農業を始めた農業関係者は、開門すれば農業に悪影響があるとして、長崎地裁に開門差し止めの仮処分を申請し、地裁は2013年11月12日にこれを認めた。矛盾する司法判断に挟まれた国は、2013年12月20日の期限を過ぎても開門しなかった。

これに対し、漁業関係者49人が、国に開門を求めるため、開門しなかった場合の強制金を支払うよう求める「間接強制」を申し立て、佐賀地裁が4月11日に1人あたり1日1万円、1日計49万円の支払いを国に命じ、国が特別抗告していた。

開門に反対する農業・漁業関係者も強制金の支払いを求めており、6月4日に長崎地裁が、開門した場合に1日49万円の強制金支払いを命じた。国は開門してもしなくても、強制金を支払わなければならない状況になっている。

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諫早湾奥部を閉め切る潮受け堤防の「工事」で落とされる約300枚の鋼板(長崎・吾妻町) \n\n撮影日:1997年04月14日 (credit:時事通信社)
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