「日本という国に根強く残る性別役割分担の名残」 ニューヨークタイムズが描く、日本のワーキングマザーの生きづらさ

「女性が負う負担を軽減しながら、より多くの女性に働くことを促した」という、安倍晋三首相の「ウィメノミクス」にも反論しました。
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ニューヨークタイムズの記事より
ニューヨークタイムズ

「日本のワーキングマザー 妻の課題な負担・夫の過少な支援」。こんなタイトルのニューヨークタイムズの記事(2月2日付)が、話題となっている。

2人の子どもを育てながら働く女性の1日に密着し、朝から晩まで家事や子育て、仕事に追われて息をつく暇もない過酷な様子を描いたルポタージュ。

男性が家事や育児に関わる時間の国際比較、「名もなき家事」問題、そして女性の管理職比率の低さや男性の長時間労働にまで切り込んだうえで、日本のワーキングマザーが置かれた状況が、たくさん写真と文章で浮き彫りにされている。

例えば、保育園に提出する連絡ノート。

記事中に登場するニシマサさんという女性は、子どもの体温、家庭での食事の内容、睡眠時間や1日のタイムスケジュールを記入する。小学生の長男の宿題を確認するのも彼女の役割だ。女性は家庭を優先しているため、8年間も昇給・昇格がない。記事は、「今、日本の女性たちは両刃の剣に直面しています」と指摘する。

「女性の負担を軽減しながら、働くことを促した」?

安倍晋三首相は1月23日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の演説で、「女性活躍政策(ウィメノミクス)」について「女性が負う負担を軽減しながら、多くの、より多くの女性に、働くことを促した」と評価し、以下のように述べた。

その結果、いまや、雇用された女性は200万人増えた。繰り返します。新たに付加されるかたちで、200万人の女性労働力が増えたのです。女性の労働参加率は67%、日本では歴代最高で、米国などより高い比率になっています。

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ダボス会議で演説する安倍晋三首相
ロイター通信

記事は、この安倍首相の演説内容についても反論する。

しかし、日本の多くの女性は職場で限られた役割に甘んじている。女性の、ひいては日本全体の願望の最大の障害のひとつが、彼女たちの肩にのしかかる、家庭での家事や育児の負担だ。

これは、日本という国に根強く残る性別役割分担の名残からくるものだ。日本の女性たちの労働参加率が記録的な高さを更新している一方、彼女たちの膨大な家事や育児の負担は減る気配がない(記事より引用)

「家の中を見れば分かる」NYTも日本語でツイート

記事を執筆したのは、リッチ素子・ニューヨークタイムズ東京支局長。Twitterに「マーケティングのプロで、3人の子どもの母親であるニシマサさんと1日を過ごしました。彼女がいつ働いているのか、不思議です」と取材の感想を投稿している。

異例の和訳記事も公開し、家事育児の家庭内分担についての意見も募集している。ニューヨークタイムズの公式Twitterでも日本語で「日本のワーキングマザーが働きにくい原因は、家の中を見れば分かる」と投稿。「共感する」「良記事」「夫婦間の話し合いの問題」などの反応が寄せられている。