菅直人元首相、安倍首相を批判「混乱の責任をすべて私に押し付けようとした」

「安倍晋三議員は東電本店の幹部と一緒になって、混乱の責任をすべて私に押し付けようとしたのだ」
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安倍晋三首相のメールマガジンで嘘を書かれ名誉を傷つけられたとして、菅直人元首相が安倍氏に謝罪文の掲載と損害賠償を求めた訴訟で、菅氏は12月5日、公式ブログを更新し、「事件は東電の責任逃れ体質に起因している」と批判した。安倍首相が東電の幹部とともに、菅元首相に責任を押し付けようとしたと主張している。

菅氏が「嘘を書かれた」と主張していたのは、安倍首相が野党時代の2011年5月20日に発行したメールマガジン。安倍氏は東京電力福島第一原発事故時の菅氏の対応について「やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです」「菅総理は間違った判断と噓について国民に謝罪し直ちに辞任すべきです」などと書いていた

これに対し菅氏は、「海水注入の中止を指示していないうえ、実際に注入は中断していなかった。記事はすべて虚偽だ」として2013年7月、約1100万円の損害賠償を求めて提訴したが、2015年12月3日、東京地裁は菅氏の請求を棄却する判決を下した。永谷典雄裁判長は「(実際には東電が決めた)海水注入を菅氏が決めたという虚偽の事実を海江田万里経済産業相(当時)ら側近が流したことなど記事は重要な部分で真実だった」と述べ、「記事は違法な人身攻撃ではなく、論評として適切だった」と認定した

この判決を菅氏は不服として、4日、東京高裁に控訴。5日に更新したブログで菅氏は、「混乱の背景を説明しておきたい」として事故当時の様子を説明。原発の操作は東電に責任があり、住民避難については菅氏の責任だったと解説し、海水注入の部分は菅氏ではなく東電側の責任で行われたとして次のように強調した。

例えば放射性物質を放出するベントというオペレーションを行う場合、基本的には東電が判断して実行するが、住民避難にきわめて大きな影響があるので、東電は事前に承諾を求めてきた。しかし、原子炉への注水など直接住民避難に関係のない操作は東電の判断で行われた。3月12日の最初の淡水の注入開始も東電の判断で行われ、私に対して事前の相談はなかった。淡水がなくなった後の海水注入も東電の判断で行わることには何ら問題なかった。

海水注入事件の真実|菅直人オフィシャルブログ「原発ゼロと平和な未来」の実現を目指してより 2015/12/05)

その上で、「海水注入を止めろと言ったのは東電の武黒氏など東電幹部」であり、海水注入の開始時刻を菅氏に報告していなかったことを「おもんばかり」止めろといったのではないかと分析。これが、混乱を起こしたと批判した。

一方、当時、福島第一原発の所長だった吉田昌郎氏が、東電幹部の言うことを無視して海水注入を続けていた。菅氏はここで安倍氏を引き合いに出し、「安倍晋三議員は海水注入の継続を知らなかった東電本店の幹部と一緒になって『海水注入を止めたのは菅総理』と断定し、混乱の責任をすべて私に押し付けようとしたのだ」と主張した。

2011年の福島第一原発のすがた
出動拠点となるJヴィレッジで防護服に身を包んだ作業員たち(01 of19)
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(credit:ASSOCIATED PRESS)
破損した4号機(02 of19)
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破壊された4号機(03 of19)
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Jヴィレッジで作業員の線量チェックをしているところ(04 of19)
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バスの中から眺めた福島第一原発の風景(05 of19)
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防護服に着替えようとする作業員(06 of19)
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Jヴィレッジで器具の手入れをする作業員たち(07 of19)
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Jヴィレッジから福島第一原発に向かう(2011年11月12日)(09 of19)
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作業へと向かうため集合する作業員たち(10 of19)
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作業前にも線量を計測する(11 of19)
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当時環境大臣だった細野豪志氏が視察(12 of19)
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細野氏の挨拶に臨む作業員たち(13 of19)
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福島第一原発に築かれたバリゲード(14 of19)
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緊急用の赤電話が見える(15 of19)
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Jヴィレッジに戻った作業員たちはまっすぐ線量計測へと向かう(16 of19)
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避難区域内の街の様子(17 of19)
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福島第一内部(18 of19)
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中に入る時には、靴も含めてビニールで包む(19 of19)
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