本田圭佑は4年間で作り上げてきた"本田像"の作り直しを迫られている

本田圭佑の昨季は、浮かんではまた沈む、まさにジェットコースターのような1年だった。シーズン初戦となったロシア・スーパーカップでは、ゼニト相手に2得点を挙げる活躍で優勝に貢献し、移籍へ向けてアピールするも、ロシアからの脱出に失敗。昨年11月の日本代表の欧州遠征では、ベルギー戦で自ら「課題」と語ってきた右足でのシュートを決め、またひとつ収穫を得るも、CSKAモスクワではリーグ戦出場18試合で1ゴールという低調な結果に終わる。
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本田圭佑の昨季は、浮かんではまた沈む、まさにジェットコースターのような1年だった。

シーズン初戦となったロシア・スーパーカップでは、ゼニト相手に2得点を挙げる活躍で優勝に貢献し、移籍へ向けてアピールするも、ロシアからの脱出に失敗。昨年11月の日本代表の欧州遠征では、ベルギー戦で自ら「課題」と語ってきた右足でのシュートを決め、またひとつ収穫を得るも、CSKAモスクワではリーグ戦出場18試合で1ゴールという低調な結果に終わる。ついに辿りついたミランでも、入団会見の際に浴びたまぶしいばかりカメラのフラッシュは、やがて痛烈なブーイングへと変わっていった。

そして極めつけは、ブラジルW杯初戦のコートジボワール戦。あの先制ゴールは、4年前のカメルーン戦を思い起こさせ、自らの言葉でチームメイトに「優勝」の2文字を強く信じさせたように、応援する側の期待も最高潮に高まった。だが、ブラジルから最後に届いた言葉は、反省、そして自戒の弁だった。

もちろん、情状酌量の余地はある。とりわけミランでは、加入直後に監督交代があり、新たにチームの指揮を取ったセードルフ前監督から与えられたポジションは、自身の特徴を生かしづらいサイドMFだった。また、シルビオ・ベルルスコーニ名誉会長の娘であるバルバラ・ベルルスコーニと、強化責任者であるアドリアーノ・ガリアーニによる権力闘争も、現場に混乱を招いた。一方、足首の負傷などで、そもそも100%戦えるコンディションになかったという己の過失があったのも事実だ。全てが環境のせいだったわけではない。

そんな不安定な1年を経て迎える新シーズン。本田は、まさに真価を問われることになる。W杯コロンビア戦の後に、「また一から自分のモノサシ作りをする必要がある」と語ったように、この4年間で作り上げてきた“本田像”の練り直しを迫られている。クラブOBのフィリッポ・インザーギを新監督に据えた新生ミランで、果たして背番号10は輝きを取り戻せるのか。それは今後のキャリアを左右するものにもなるはずだ。

そんな中、チームは9日に、新シーズンに向けて始動。その翌日にはインザーギ新監督の就任会見が行われた。その会見で、弱冠40歳の青年監督は、4-3-3を基本システムとし、本田は3トップの右サイドか、中盤のインサイドMFとして起用する考えがあることを示唆した。つまり、本田にとっては昨季同様、得意とするトップ下が存在しない状況で戦うということになる。ただ“ゼロからのスタート”を模索する本田にとっては、これも自己改革の1つのチャンスと位置付けられるはずだ。

ポジション争いのライバルとしては、今夏にサンプドリアから完全移籍を果たしたアンドレア・ポーリとパリSGから加入したジェレミー・メネズが挙げられる。前者には将来性、そして後者には、かつてローマでプレーした時の経験値というアドバンテージがある。一方、本田のチーム合流は、このギネス・インターナショナル・チャンピオンズカップ直前に予定されており、彼らと比べればスタートで少々出遅れる。ただし、シーズン当初からチームの一員として準備できるのは、大きなメリットだ。この夏を通じて、チームメイトとの意思疎通も十分に図られるだろう。

「日本の男は決して諦めず、強い精神力を持ち、しっかり規律を重んじる。自分もそれをピッチで示したい」

今年1月の入団会見で、現地記者から「サムライスピリットとは?」という質問を受けた際、本田はそう答えていた。今度こそ、その言葉どおりの姿をイタリア人たちに見せつけてもらいたい。

フットメディア

Foot!でもお馴染み、スポーツコメンテイター西岡明彦が代表を務めるスポーツメディア専門集団。 語学が堪能で、フットボールに造詣が深いライター陣のコラムは、様々な媒体において高い評価を得ている。 J SPORTSでは、プレミアリーグ中継やFoot!などの番組演出にも協力している。

(2014年7月18日「海外サッカーコラム」より転載)