「MERY」記事量産、経験者が語る現場 「ノルマ90分に1本、遅いと指導も」

「ネットにある情報を探してつなげるだけ。取材するという概念は全くなかった」

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取材に応じた女子大生(左上)

女性向け人気サイト「MERY(メリー)」の全記事が、7日から非公開になりました。サイトを所有するDeNAのメディア事業をめぐっては無断転載や内容に誤りのある記事が多数掲載されていた可能性が出ています。では、いったいどんな人が記事を書いていたのでしょうか。「仕事場は雑居ビル」「90分に1本がノルマ」。インターン生として「MERY」で記事を書いていたという女子大生に話を聞くことができました。

女子大生が記事量産

「就活もあるし、身バレだけは勘弁してください。社員さんにはインターン生が記事を書いていたことは口外しないように言われてましたので」

取材に現れたアキナさん(仮名)は、黒髪サラサラのロングヘアに、長い脚が目立つミニスカート姿。

今時のおしゃれに敏感な女子大生という雰囲気で、見た目はフィギュアスケーター時代の浅田舞さんに似ていると思いました。都内の名門私大に通う2年生だそうです。

アキナさんがインターンをしていたのは「MERY」の運営会社でDeNA傘下の「peroli(ペロリ)」です。特定されるのが怖いので詳しい期間は話せないとのこと。

サークル仲間に誘われたのがきっかけでした。

「サークルの同級生に数人いました。ほとんど辞めましたが」と話します。

選考は面接と記事1本の提出。他のインターンを紹介すると紹介手当が出たそうです。

90分に1本執筆のノルマ

インターン生はキュレーターと呼ばれ100人以上はいたそうです。

キュレーター?

時代の最先端っぽい、いかにもキラキラした呼び名ですが、渋谷の雑居ビル3階が仕事場でした。

人口密度は「ぎゅうぎゅう詰めではないけど、高校のクラスよりは全然多い」程度の一室に常時30~40人くらいが出入り。

個人個人が狭い感覚で机に並んでPCに向かい、ただひたすらカタカタと無言で記事を書いたそうです。

「90分に記事1本書くことがノルマ。達成できないと社員の指導対象になる」そうで、指導対象とは「要するに目をつけられる存在になる」ことだそうです。

元インターン生がやりとりしていたメールの一部には具体的な数字が並びます。

「1記事にかかった時間の平均(重要!)○○分」

「○○分は少し遅いかもしれません(・ω・)次回は頑張りましょう」

出退勤は個々人が自由に決められるが、月40時間は勤務しなければならない決まりだったとか。

「インターンといえば聞こえはいいけど、要するにバイト。時給は1千円くらいだった」と話します。

キーワードを最低10個入れる

執筆するインターンには書き方を示した「マニュアル」が渡されたそうです。

・記事全体の説明文には内容を示すキーワードを2回以上ダブらせる、画像を多用し記事にキーワードを10個以上入れる......

・食べ物なら「食べログ」、化粧なら「@cosme(アットコスメ)」......など参考リスト一覧が網羅。

素人目にも検索エンジンに引っかかりやすくするSEOを意識した内容だったそうです。

たとえば「△△温泉めぐりで行くべき10選」という記事を書くとします。

地名やテーマパーク名、飲食店名、食べ物名に加え、「女子旅」「カワイイ」「オシャレ」「スイーツ」など、女子が好むあらかじめ用意されたキーワードを「タグ付け」していき、それに合わせてインスタグラムなどから画像を見つけ、引用という一文を添えてバシバシ貼り付けたそうです。

「数人がグループで記事作成」

学生の間では「マニュアル」と認識されていたこの指示について、アキナさんはこう語ります。

「わたしの感覚では、記事のほとんどはインターン生が書いていたと思います。数人がグループになっていて、誰かが記事を書くと、Slack(グループチャットツール)でチェックするように回ってきました。うーん。ごくたまにすごく短い記事だったり、キーワードが少なかったり、明らかにマニュアルに沿っていない記事がありました。それが一般ユーザーの記事だったのかなあ」

取材という概念はなかった

実際に行って見たり、電話して聞いてみたり、そういったリアルな取材はなかったの? と聞くと、「一切なかった」とのこと。

「ネットにある情報を探してつなげるだけ。取材するという概念は全くなかった」と話します。

週に1回は集会という名のミーティングもありクレームの共有も多かったそうです。アキナさんはこう続けます。

「○○からクレームが来たから、インスタ画像の引用をしないように。××サイトの記事は引用NGになったから使わないように......といった注意喚起が頻繁にありました」

「だんだんメジャーなサイトから引用できなくなってきて、90分で1本書くのが難しくなりました。一方、勤務時間外でネタを探したり、他のキュレーターが書いた誤字脱字の校閲作業を負わされたり。時間の融通がきくというだけでは割が合わないなと思って辞めました」

一方、それってパクリ記事を作っているという意識はなかったの? と聞くと、「そう言われればそうだなという気持ちはあります」

「でも、引用元を記せばOKというルールだったし。社員さんの指示に思考停止状態だったというか、深く考えなかったです」と話します。

それって楽しいの?

「楽しくはなかったですね。ただこなしてただけ。有名なサイトだったし、他のインターンも有名大の学生ばかりだったから、まあ安心だろうという空気に流されてしまいました」

悪いことを手伝ったような......

アキナさんは約40~50本の記事を書いたそうです。

サイト全体が非公開になる前にすでに見られなくなったそうで、「それはそれで、悲しかったです」。

最後に今思うことは?

「就活の自己PRに書けると思って有名サイトでインターンしたのに、悪いこと手伝わされていたみたいで......。今じゃ人に言えないですね」

就活のネタ探しという女子大生の思惑と、安価な労働力の確保という企業の思惑が一致したからこそ、成り立っていたのでしょうか。

後味の悪い取材でした。

DeNA「転用推奨する文言、確認できず」

DeNAは、MERYでは他の9サイトで発覚したような「他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねないマニュアル」は存在しなかったとの姿勢を崩していません。

7日に都内で開かれたDeNAの記者会見でも守安功社長は「MERYを運営しているペロリ社の中川綾太郎社長にも確認をし、転用を推奨するマニュアルはないと判断している」と説明。小林賢治・経営企画本部長も「実際にマニュアルを調べたが、転用を推奨する文言は確認できていない」と述べました。

一方で会見では、一般ユーザーが投稿する「まとめサイト」の形をとっていたMERYの記事のうち44%を「雇用ライター」と呼ぶ、DeNAが雇ったアルバイトやインターンが執筆していたことが明らかにされました。

記事の多くを「雇用ライター」が書いていたにもかかわらず、MERYの記事には多数の無断転用や規約違反の疑いが浮上しています。

他の元インターン生からも同様の証言

他のインターン生からも話を聞きました。

春ごろにインターンをしていたユキコさん(21)=仮名=も、「PDFで2枚くらいだったかな? 転載を奨励していると読めるマニュアルはありましたよ。わかりにくくて、ほんと使えないマニュアルで、社員さんによく質問をしたので、社員さんも存在を把握していたし、『なかった』というのはおかしいと思いますけど」と証言します。

「もともと営業のインターンを経験できると聞いて応募したのですが、やらされたのはキュレーターとして原稿を書くことでした。インターン生は8人~10人程度のグループを組まされ、経験が長いキュレーターが指導する態勢でした。バイトリーダーみたいな存在ですね。注意されるとき以外、社員さん側から関わってくることはなかったですね。インターンなのに」とユキコさんは話します。

「週に1回グループの集会があり、記事1本を何分で書けたかを評価されます。90分に1本書くのがノルマで、遅い子はタイピングソフト『寿司打』を使って、速くタイピングできるように練習してくるように注意されました。記事の内容よりも本数重視でしたね」

「画像引用については、事務所に所属しているモデルはクレームが来るから使うなと言われていましたね。いつまでたっても営業のインターンはできないし、正直、こんな風にコンテンツを使い回していいのかな、と後ろめたい気持ちもあって辞めました」

やっていたことはアキナさんと同じだったようです。

DeNA「調査中」

こうした元インターン生の証言から、

・組織的に記事を量産する態勢があったのか

・転載を奨励するマニュアルはあったのか

について、DeNAにあらためて質問したところ、調査中のため、現段階では具体的な肯定・否定を示すことはできないとの回答でした。同社は、今後、第三者委員会の調査で問題の本質を明らかにし対応策を示していく、としています。

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