教育への公的支出日本は最下位 奨学金制度が鍵=OECD報告書

経済協力開発機構(OECD)は加盟国の教育状況の調査結果「図表でみる教育2013年版」を発表した。2010年の日本の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は前年と同じ3.6%で、加盟国で比較可能な30カ国中最下位だった。最下位は4年連続。日本では高等教育機関の授業料が高いにもかかわらず...
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japanese college student in the class room
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経済協力開発機構(OECD)は加盟国の教育状況の調査結果「図表でみる教育2013年版」を発表した。2010年の日本の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は前年と同じ3.6%で、加盟国で比較可能な30カ国中最下位だった。最下位は4年連続。日本では高等教育機関の授業料が高いにもかかわらず、奨学金を受けている学生が少ないことも指摘しており、OECDは「高等教育を受ける人が増えれば社会への利益還元も大きい。公的な経済支援を充実させていくことが重要」としている。

発表によると、教育機関に対する公的支出のGDP比は、OECD加盟国の平均が5.4%。最も高かったのは、デンマークの7.6%。以下、ノルウェー7.5%、アイスランド7.0%、ベルギー・フィンランド6.4%と続く。イギリス5.9%、アメリカは5.1%、韓国は4.8%。

日本では子ども1人あたりの公的支出額は1万596ドルで、比較できる29カ国中12位。OECD平均(9313ドル)を上回っている。

一方、幼児期から大学までの教育にかかる費用のうち、授業料や給食費などを家庭が支出する割合は29.8%。2010年に公立高校の授業料が無償化されたこともあり、前年より2.1%低くなったが、加盟国29カ国中5番目に高く、依然日本では家庭の負担が重い。特に大学など高等教育で他の国と比べて負担が大きく、小中高校の教育経費に占める公的支出はOECD平均(91.5%)と同水準の93%だが、高等教育では家庭からの支出が約65.6%を占め、OECD平均の2倍以上になっている。しかも、2000年と比較しても増加傾向にあるという。

安倍内閣が6月14日に閣議決定した「第2期教育振興基本計画」では、教育予算の「OECD諸国並みを目指す」という文言の掲載が見送られている。財政健全化を優先したい財務省が「子ども1人あたりでは見劣りしない」と主張し、結局「OECDなど諸外国の教育投資の状況を参考」との表現にとどまった。

日本では大学の授業料が高いにもかかわらず、奨学金を利用する学生の割合が少ないことも調査結果で指摘されている。

2010~11年度の国公立の高等教育期間の平均授業料は5019ドル。比較できる国の中で5番目に高い。それにも関わらず、公的な奨学金の利用者は約4割。そのうち、給与型奨学金はわずか3%しかない。OECDは「授業料が高い他のOECD諸国と比べても、奨学金を受けている学生の割合が少なく、特に給与型奨学金の割合が小さい」と指摘する。

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日本学生支援機構の奨学金は原則、貸与型奨学金のみ。無利子と利息付きの2タイプある。ただ、近年は不況などの影響で未返済額が増加。2011年度末で約876億円に上っている。そこで、同機構は、学ばない学生に対して奨学金の打ち切りに踏み切ったとハフィントン・ポスト日本版の記事が伝えている。

こうした現状を受け、文部科学省の検討会でも奨学金のあり方が議論されている。

専門家らによる「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」(主査=小林雅之・東京大教授)は6月17日、無利子奨学金の拡充などを盛り込んだ「中間まとめ」案を示した。

朝日新聞デジタルによると、最大の焦点は給付型奨学金の導入。委員の間で求める声は多いが、財源確保の問題のほかに「借りて返すという現行のシステムには教育的側面がある」との声もあるという。2年前に147億円を概算要求したものの、財務省に認められなかった経緯もある。

「中間まとめ」は次のようになっている。

  • 貸与型の奨学金は無利子を基本とし、拡充する
  • 社会人の学び直しも奨学金で支援する
  • 返還の方法や金額は、限定的になっている所得連動型の対象を広げ、より柔軟な形にする
  • 年10%の延滞金の利率を引き下げる

朝日新聞デジタル 「奨学金よりよいあり方は 文科省検討会、拡充へ中間案」2013/6/28)

OECDもまた、学生支援の強化策として所得連動型の奨学金制度を充実を提案する。この所得連動型奨学金は、返済額を卒業後の収入に応じて考慮する仕組み。つまり、高収入を得られる職に就いた人は、返済額が多くなる。

日本学生支援機構は、卒業後に一定収入を得るまでは返済期限が猶予される所得連動返済型の無利子奨学金を新たに設けた。ただ、無利息奨学金の要件に加え、所得制限がある。

アンドレア・シュライヒャーOECD教育局次長は「授業料が高いことが問題でなく、学生たちをサポートする公的な経済的支援を充実させていくことが重要。所得連動型の貸与奨学金制度や家計収入に応じた助成を組み合わせることで、全ての学生が財政的なアクセスを保証されて、高等教育にかかるお金を借りることに対するリスクを抑えることができる」としている。

「教育再生」を重大課題に掲げる安倍政権。教育に対する公的支出、学生への公的支援のあり方が今後も議論される。みなさまのご意見をお聞かせください。