汚染水、今度はタンク北側井戸の地下水から放射性物質3200ベクレル検出

東京電力福島第一原発の貯蔵タンクから高濃度の放射能汚染水が漏れた問題で、東電は9月9日、タンク北側の観測用井戸で8日採取した地下水からストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質を1リットル当たり3200ベクレル検出したと発表した。
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時事通信社

東京電力福島第一原発の貯蔵タンクから高濃度の放射能汚染水が漏れた問題で、東電は9月9日、タンク北側の観測用井戸で8日採取した地下水からストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質を1リットル当たり3200ベクレル検出したと発表した。時事ドットコムが伝えた。

タンク南側の井戸でも同650ベクレル検出されている。井戸は深さ7メートルで、地下水は地下5メートルより下にある。漏洩による地下水汚染の疑いがさらに強まった

4日にタンクの南側約20メートルにある観測井戸から採取した地下水から、1リットルあたり650ベクレルを検出。今回3200ベクレルを検出したのは、タンク北側約20メートルの観測井戸の地下水で8日に採取した

■ 汚染水漏れタンク、10月までに交換計画策定

政府は9日、福島県楢葉町の東京電力福島復興本社で、福島第一原発の放射能汚染水対策に関する現地調整会議の初会合を開いた。会合では東電に対し、大量の漏出が発覚したのと同型のタンク300基に貯蔵した汚染水を、強固な構造のタンクに移す計画を策定し、10月に開く次回会合で報告するよう求めた。

会議では、タンク取り換えのほか、万が一タンクから汚染水が海に流出するのを防ぐために側溝にふたをしたり、タンクの周りの堰(せき)をかさ上げしたりするなどの具体的な対策も決めた

会議は現地での情報共有や連携を強めるため、政府の原子力災害対策本部に設置された。赤羽一嘉経済産業副大臣を議長に、関係省庁や東電、福島県の担当者が参加し、月1回開く。

■ IAEA、日本に調査団を派遣

国際原子力機関(IAEA)の定例理事会が9日、ウィーンの本部で5日間の日程で始まった。天野之弥事務局長は冒頭演説で、福島第一原発の汚染水漏れは「緊急に対処する必要のある最優先課題」と強調した

そのうえで、IAEAはいつでも日本を支援する用意があるとして、この秋、ことし4月に続いて、調査団を日本に派遣することを明らかにした

また、天野事務局長は、今月、日本政府が発表した汚染水対策については、「重要な前進だ」と評価しました。

演説のあと記者会見した天野事務局長は、「汚染水の問題は、原発事故の影響がまだ続いていることを示している。非常に重要な問題で、中期的、長期的な観点から抜本的な対策が必要だ」と述べた

■ 東電、ベータ線とガンマ線を区別せず

福島第1原発のタンク汚染水漏えい問題で、東京電力がタンクで「毎時1800ミリシーベルト」の放射線量を計測したと発表したことに批判が相次いでいる。極めて高い線量との印象を受けるが、実際には、計測した放射線は、透過力が弱く簡単に防御できるベータ線がほとんどで、強い透過力のガンマ線と区別せず合算値として発表した。専門家は「誤解を招く」と指摘、原子力規制委員会は測定の指導に乗り出した。

47NEWSによると、合算値の発表は以前から行われ、原子力規制委員会の 田中俊一 (たなか・しゅんいち) 委員長は8月21日の記者会見で「まったく別のものを一緒にしているということで、まずいのではないか」と疑問を呈していた。だが区別は徹底されず、東電は今月3日にも同じタンクの再測定で2200ミリシーベルトの合算値を原子力規制庁に報告。規制庁はガンマ線のみを追加測定するよう東電に指示した。

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ベータ(β)線

ベータ線は、原子核から飛び出してくる電子の流れであり、マイナスの電気を持っています。ベータ線は空気中では10メートル以上透過する場合がありますが、薄いアルミニウム等の金属板で遮へいすることができます。

ガンマ線は、電波や赤外線や可視光線などと同じ電磁波の一種です。アルファ線やベータ線が放出されたあとの原子核は、たいてい興奮状態になっており、興奮のエネルギーをガンマ線に変えて放出します。透過力はβ線よりも強く、重い物質である鉛や厚い鉄の板で遮へいすることができます。

(北海道電力 放射線の基礎知識「放射線は遮へいできます」より)

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