日本の未来のあるべき姿をデンマークに見た。

先月11月末にデンマークのロラン島を訪問しました。デンマークと言えば、再生可能エネルギー先進国として有名であるとともに、最近国連が発表した世界幸福度報告書2013で世界一幸福な国にランキングされた国としても注目されています。
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先月11月末にデンマークのロラン島を訪問しました。デンマークと言えば、再生可能エネルギー先進国として有名であるとともに、最近国連が発表した世界幸福度報告書2013で世界一幸福な国にランキングされた国としても注目されています。

そんな世界一幸福な国とされる税金の高いこと!消費税はなんと25%。税金が高い分、国民が納得するようなシステムが充実しているのでしょうね。大学の学費までは無料だったりと。税金が高いだけに国民は政治にも口を出す。選挙の投票率は9割ぐらいが当たり前だそうです。民主主義がしっかり根付いてるのでしょう。

民主主義が根付いていて幸福度世界一の国。そして再生可能エネルギー先進国。様々な面で日本の目指すべき将来の青写真が見つかる国ではないかと思いました。そんなデンマーク訪問の主目的は再生可能エネルギーだけでエネルギー自給を果たしているロラン島を視察することでした。

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(原発建設予定地に出来たロラン島のウィンドファーム)

前からちょくちょくお名前をお見かけしていたニールセン北村朋子さんにツアーを組んで頂き、ロラン島のエネルギー事業を強力に推進してきた「ミスター・エネルギー」とも呼ばれるロラン市市議会議員レオ・クリステンセンさんに、現在ロラン島で進む水素エネルギーを活用した水素コミュニティのお話や、原発計画が一時はあったものの、国民的議論の結果、原発に依存しないエネルギー計画と立ててきた歴史など聞きました。このあたりの詳細はニールセン北村朋子さんの著書『ロラン島のエコ・チャレンジ―デンマーク発、100%自然エネルギーの島』をおすすめします。

なお、ロラン島は、今年の9月には根本復興大臣、新藤総務大臣、甘利経済再生担当大臣の3大臣が訪問するなど、日本政府も注目している場所です。ロラン島のエネルギー自給率は500%!農家は畑で野菜を収穫するようにエネルギーも収穫する。それが常識だそうです。

■2013年11月23日 デンマーク、ロラン島にて

ロラン市市議会議員 レオ・クリステンセンさんのお話(通訳ニールセン北村朋子さん)

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クリステンセンさん:

「デンマークは九州と同じぐらいの面積で、人口は約560万人。一人当たりGDPは日本よりも高い。1973年にオイルショックが発生。当時、デンマークのエネルギー自給率は5%ぐらいしかなかったため、原発計画に拍車がかかり、デンマーク中で原子力発電所を作っていこうという計画が出来た。

しかし1974年にOOA、原子力情報組織というNGOが設立され、OOAの提案で3年間政府も国民も原子力発電のことを勉強しようというモラトリアム期間が認められた。

その結果、政府と国民の間で話し合いが進み、このような小国で原子力発電所の事故が起きたら影響が大きすぎるということで、1985年に最終的に原子力発電に依存しないエネルギー政策を採択するに至った。

1997年にはエネルギー自給率100%を達成し、2010年には121%(日本は4.8%)となった。再生可能エネルギーだけだと、現在35%ぐらいの割合となっている。

日本の政治家がよく再生可能エネルギーに移行すると経済成長が鈍るということを指摘するが、そんなことはなく、デンマークは1980年以来、エネルギー消費を抑えながら、再生可能エネルギーに転換しつつ経済は成長できるということを証明している。

デンマークの中期エネルギー計画では、2020年までに全電力消費の50%を風力エネルギーでまかなうとしている。2050年には化石燃料から完全に脱却しようとしている。

ロラン島では風力発電の適地のため、世界初の洋上風力発電事業や、原発建設予定地でのウィンドファーム事業などを次々と始め、小規模原発と同等の2,500GW/hをロラン島外に輸出するほどになっている(ロラン島内の消費は480GW/h)。

コペンハーゲンから遠いエリアのロラン島を含むエリアは、高齢者が多い過疎地だったため、『腐ったバナナ』と呼ばれてきたが、現在は『グリーンバナナ』と呼び方が変わってきている」

クリステンセンさんにどうしても最後に聞きたいことがあって質問した。

関根:

「日本は311を経験してもなお、デンマークのようにエネルギー転換のための中長期的な計画を建てられず、再稼働、新設、輸出を行おうという方針を政府は持っている。どうすれば、日本は原発から卒業出来るのでしょう。何が必要なのでしょうか」

クリステンセンさん:

「原発を国の政策で、国が保証してやってきたのに、事故があったから止めろと言われて、誰が保証してくれるのか。止まったら回収ができない。誰が負担するのか決まるまではどうにもならない。これを話すべきなのに政治家は、誰も国民に話したがらないように思う。本当は国民が納得して電力料金の上のせ負担として払っていかなければならない。

あと、これまで原子力発電で電力を供給してきた人たちが、原発が止まっても、グリーンな電力を作っていける、うまい方向転換をしていく道筋をつくっていくことが大切(対立するのではなく)。そのためにも国が国民にこのようなエネルギー転換が必要だから、増税や電力料金アップの負担が必要なんだと説明する。 そして、エネルギー転換がしやすくなるため、またはエネルギー転換せざるを得ない法律を作らなければ、なかなか変われないのではないか」

この他の会話を含めて印象深かったことは、対立を避けて今ある電力会社インフラや人材や技術を最大限活かすべきだということを彼が強調していたことだ。こ れまで、電力会社が原子力発電をしていたために、日本国民の多くが電力会社に対して不信感や不満を持っているだろうが、その考えを変え、電力会社が再生可能エネルギーを発電する主役となるように導かなければならないということ。そしてそのような方向に向くような、向かざるを得ないような政策を政府がつくる こと。

エネルギー転換に大切なこと。それは感情的に反発してこれまでの大手電力会社と闘うようなことではなく、冷静に今あるリソースを最大限活かす行動ができるかどうかということ。確かにそうなのかもしれないと思う。なお、この取材後、原発はすべて電力会社から切り離して国有化し、廃炉費用をすべて国が責任を持ち負担すべきではないかとより強く思うに至った。そして国としていつまでに全原発を廃炉にしていつまでに再生可能エネルギーを中心とした発電に切り替えて いくか明確に目標をつくり、その動きを政策で応援すること。2020年までに全電力の50%を風力エネルギーでまかない、2050年には化石燃料から完全に脱却するというデンマーク。日本は水力、波力、地熱など、活用できる再生可能エネルギーに恵まれているのだから、やればできるはず。

できる、できないではなくて、エネルギー転換は、やるか、やらないかの世界なんだから。

日本の主な原子力発電所と関連施設
北海道電力の泊原発(01 of18)
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北海道電力の泊原子力発電所。右端が3号機(北海道泊村)\n\n撮影日:2012年05月05日 (credit:時事通信社)
東北電力東通原発 (02 of18)
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敷地内に活断層があると指摘された東北電力の東通原子力発電所1号機の原子炉建屋(中央奥の白い建物)。右端の塔は排気筒。左端の茶色の建物は事務本館=2013年06月19日午後、青森県東通村 (credit:時事通信社)
東日本大震災・女川原子力発電所 (03 of18)
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女川原子力発電所(宮城・女川町)\n\n撮影日:2011年04月12日 (credit:時事通信社)
福島第2原子力発電所(04 of18)
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東京電力福島第2原子力発電所=5日、福島県楢葉町、富岡町(時事通信社チャーター機より)\n撮影日:2013年03月05日 (credit:時事通信社)
福島原発/福島第1原発の4号機(05 of18)
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福島第1原発の4号機=15日午前11時48分、福島県大熊町[代表撮影]\n\n撮影日:2014年01月15日 (credit:時事通信社)
東海第2発電所(06 of18)
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日本原子力発電の東海第2原子力発電所=5日、茨城県東海村(時事通信社チャーター機より)\n撮影日:2013年03月05日 (credit:時事通信社)
新潟県中越沖地震・柏崎刈羽原子力発電所(07 of18)
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東京電力の柏崎刈羽原子力発電所。(左から)5,6,7号機(16日午後、新潟県柏崎市)[時事通信ヘリコプターより]\n撮影日:2007年07月16日 (credit:時事通信社)
浜岡原発と御前崎市街地(08 of18)
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中部電力浜岡原子力発電所(奥)と御前崎市街地=2012年10月03日、静岡県 (credit:時事通信社)
志賀原発訴訟・志賀原発 (09 of18)
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北陸電力の志賀原子力発電所。左側が2号機(石川・志賀町赤住)\n撮影日:2009年03月12日 (credit:時事通信社)
日本原電敦賀発電所(10 of18)
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日本原子力発電敦賀発電所。左が日本初の軽水炉として1970(昭和45)年に営業運転を開始した1号機。右は2号機(福井・敦賀市明神町\n\n撮影日:2012年03月06日 (credit:時事通信社)
関西電力美浜発電所(11 of18)
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敷地内の断層が活断層の疑いがあるとして、原子力規制委員会の調査対象となっている関西電力美浜原発(右から1号機、2号機、3号機)=8日午後、福井県美浜町 \n\n撮影日:2013年12月08日 (credit:時事通信社)
大飯原発(12 of18)
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関西電力大飯原発3、4号機の建屋。写真左側では、敷地内断層調査のため試掘溝を掘削する工事が行われている=2013年06月15日午前、福井県おおい町 (credit:時事通信社)
関西電力高浜原子力発電所(13 of18)
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関西電力高浜原発。右手前から1、2号機、左手前から3、4号機の建屋=27日、福井県高浜町\n\n2013年06月27日午前、福井県高浜町 (credit:時事通信社)
島根原発の1号機と2号機 (14 of18)
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中国電力島根原発1号機(手前)と2号機(島根県松江市)\n\n撮影日:2011年11月28日 (credit:時事通信社)
四国電力伊方原子力発電所(15 of18)
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佐田岬半島の瀬戸内海側にある四国電力伊方原子力発電所。頭が青色の建物が左から1号機、2号機、3号機=2012年11月18日、愛媛県西宇和郡伊方町 (credit:時事通信社)
玄海原発(16 of18)
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九州電力玄海原子力発電所(奥)。左から4号機、3号機(佐賀・東松浦郡玄海町)\n\n撮影日:2011年05月24日 (credit:時事通信社)
川内原子力発電所 (17 of18)
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再稼働の前提となる安全審査に絡む川内原発の現地調査で、九州電力(左側)から説明を受ける原子力規制委員会の委員ら=2013年09月20日午前、鹿児島県薩摩川内市[代表撮影]\n\n (credit:時事通信社)
高速増殖炉「もんじゅ」(18 of18)
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日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」=2013年6月6日、福井県敦賀市 (credit:時事通信社)