「自主避難」という行動に対する責任と賠償請求

j-castニュースが配信していた「東京、神奈川などから九州への自主避難者 『一定の汚染ある』と賠償請求、に疑問相次ぐ」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。
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j-castニュースが配信していた「東京、神奈川などから九州への自主避難者 『一定の汚染ある』と賠償請求、に疑問相次ぐ」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

「原発事故後の不安から、東京や神奈川など関東地方から九州に移り住んだ自主避難者らが国や東電を相手に損害賠償を求めて提訴すると報じられた」ことを受けての記事です。

「福島県からの避難者らが国などを提訴し」ましたが、「関東からの自主避難者らも9月までに訴訟を起こすことも報じられ」ました。

「避難者らは、事故後の放射線拡散の不安から九州に転居し」ましたが、「住み慣れない土地で精神的苦痛を受けたと訴えている」とのことです。

記事では、「東京都葛飾区から福岡県内に家族3人で避難した元高校教諭の男性(60)」が紹介されており、「40年の教師人生で培った人間関係が断ち切られたことが一番悲しい。国と東電の責任を追及したい」と会見で話したそうです。

これを受けネットでは、「ホットスポットの問題はあるものの、自主避難で賠償まで求めるのはどうなのかと疑問が相次いだ」という記事です。

2 不信

確かに原発事故はかなりの不安を巻き起こし、特に小さい子供を持たれていた家庭ではかなりの不安があったのは確かかと思います。

それに政府の対応にも問題があり、本来真っ先に出すべきデータを開示しなかったことや(原発事故に関する「言論統制」)、データの公表に問題があったり(原発事故2題)「大丈夫」と言っておきながら、結局避難せざるを得なくなってしまった地域もあります。

こうしたことが政府に対する不信感を招いたことは間違いなく、私自身も当時の政府や東電の対応は大いに批判されてしかるべきかと思います。

ただ、その一方で、国民の対応についてもどうかと思うものがあったことも確かです(放射線と差別)。

また、確かに政府発表が信用できないとは言っても、全てが全て信用できないという態度もどうかと思っており(震災がれき受け入れ反対と新興宗教)、全く信用できないから九州まで逃げる、それに掛かった金額の賠償を求めるというのもどうかという話です。

3 裁判

裁判は個々の事案で判断されるべきなので、一概にどうこうというつもりはありませんが、一般論として、それほど危なくないところから「自主避難」したのであれば、それは基本的に自己責任の範囲内ではないでしょうか。

あとは個別具体的に近くにホットスポットなどがあったのであれば、転居の必要性は認めるが、果たして九州が妥当だったかという判断をしていき、賠償額を決めるという話になるかと思います。

ただ、ここでやっかいなのは、「それほど危なくないところ」と言うのは、後になってわかるという話で、往々にしてわかってから逃げたのでは間に合わないことが良くあります。

人は何かをなすとき、自分自身で様々な情報を得て判断していくわけですが、必ずしも全てが全て最良の選択ができるわけでありませんし、当時の切羽詰まった状況では、得られる情報も限られていたでしょうし、先に述べたように信用できなかったいうのもわからないではありません。

結果、後から考えると、おかしな行動になってしまうことはよくある話ですが、そのことについての「責任」といった場合、どこまで他人の干渉があり、どこまでが自分の責任と認められるかという話ではないでしょうか。

4 最後に

取り返しがつかなくなる前に行動しようというのもよくわかる話で、後から特に子供の健康を第一に考えれば、はっきりしていない状態なのだから、最も安全な策をとろう、最悪のことを考えて行動しようというのもわからないではありません。

なければないでこしたことはないものの、実際、万が一ということもあり、もしかしたらということのために行動するという心理は大変良く理解できます(ただ、程度問題で、これが行き過ぎると不安障害などになってしまうわけですが)。

そういう意味で一概にこうした「自主避難」という行動を批判するつもりはありませんが、自分の行動(選択)には自分で責任をとるというのが原則である以上、自分でした避難という行動(選択)について、損害賠償まで求めるのは特別の事情がない限りどうかというのが私の基本的な意見です。

(2014年3月8日「政治学に関係するものらしきもの」より転載)

震災復興 画像集
東日本大震災・手を合わせる女性 (01 of23)
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東日本大震災から2年半を迎え、多数の犠牲者が出た宮城県南三陸町の防災庁舎前で手を合わせる女性=11日午後 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
気仙沼に秋の味覚(02 of23)
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東日本大震災から2年半の11日、宮城県気仙沼市の気仙沼漁港で今季初のサンマが水揚げされた。北海道沖で捕れた約80トンを水揚げしたのは第六安洋丸(同県石巻市)。同港に係留中、津波で陸に打ち上げられたが、修理して出漁している。漁労長は「今年は群れが薄くて苦労したが、大きいものが捕れてほっとしている」と話した。 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
東日本大震災・第十八共徳丸とコスモス(03 of23)
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朝日に照らされる「第十八共徳丸」とコスモス=11日午前、宮城県気仙沼市 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
東日本大震災・2年半ぶりに灯った明かり (04 of23)
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宮城県石巻市の長面(ながつら)、尾崎(おのさき)地区に25日、東日本大震災以来約2年半ぶりに電気が届いた。同地区は居住が認められない「災害危険区域」だが、仕事などで日中滞在する住民らにとっては待望のライフライン。東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域を除いた被災地では最後の復旧となった。水産業に従事する小川英樹さん(32歳、中央)は「電気がきたことによって、できる作業の幅が広がる。これが復興の第一歩」と作業場に灯った明かりを見上げた。 \n\n撮影日: 2013/08/25 (credit:時事通信社)
大熊町のJR大野駅構内 (05 of23)
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立ち入りが規制されている福島第1原発がある福島県大熊町のJR常磐線大野駅構内。 \n\n撮影日: 2013/08/15 (credit:時事通信社)
漁業の復興・生イカの水揚げ (06 of23)
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日本有数の漁獲量を誇る八戸漁港の市場に水揚げされる生鮮スルメイカ。東日本大震災の被害から復興が進むものの、円安による原油価格の高騰が漁業関係者の痛手となっている=1日午後、青森県八戸市 \n\n撮影日: 2013/08/01 (credit:時事通信社)
仙台七夕まつり (07 of23)
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商店街に鮮やかな吹き流しが飾られた「仙台七夕まつり」。今年のテーマは、東日本大震災の復興への思いと、全国の支援者の気持ちをつなげていくとの意味を込めた「つなぐ」=6日夜、宮城県仙台市内 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
jlp15031626(08 of23)
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(credit:時事通信社)
スイカ割りで祝う3年ぶり海開き (09 of23)
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東日本大震災以来3年ぶりの海開きで行われたスイカ割り大会=7月28日、茨城県北茨城市の磯原二ツ島海水浴場 \n\n撮影日: 2013/07/28 (credit:時事通信社)
被災地つなぐ1000キロリレー (10 of23)
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東日本大震災の被災地をランニングと自転車で駆け抜ける「未来(あした)への道1000キロ縦断リレー」が行われている。25日に青森県八戸市を出発し、約700人のランナーが東京(8月7日)までたすきをつなぐ。30日はバルセロナ五輪金メダリストの岩崎恭子さんらが津波の爪痕が残る宮城県南三陸町の防災庁舎前を通過した(写真)。コースは東京五輪が実現した場合の聖火リレーのルートを想定している。 \n\n撮影日: 2013/07/30 (credit:時事通信社)
日本酒を購入する安倍首相 (11 of23)
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「南三陸さんさん商店街」で日本酒を購入する安倍晋三首相=29日午後、宮城県南三陸町[代表撮影] \n\n撮影日: 2013/07/29 (credit:時事通信社)
3年ぶりに復活したトコヤッサイ (12 of23)
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東日本大震災で開催が途切れ、3年ぶりに復活した創作踊り「トコヤッサイ」のコンテスト=27日午後、宮城県南三陸町 \n\n撮影日: 2013/07/27 (credit:時事通信社)
成長する松の苗木 (13 of23)
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高田松原の松ぼっくりから採れた種から育った松の苗木=3日、岩手県陸前高田市 \n\n撮影日: 2013/07/03 (credit:時事通信社)
福島の海水浴場 (14 of23)
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東日本大震災のがれき撤去が終わり、3年ぶりに海開きした四倉海水浴場。東京電力福島第1原発事故による放射能汚染水漏れの風評被害で訪れる海水浴客もまばら=15日午前、福島県いわき市 \n\n撮影日: 2013/07/15 (credit:時事通信社)
福島県いわき市で3年ぶりの海開き (15 of23)
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東日本大震災のがれき撤去が終わり、3年ぶりに海開きした四倉海水浴場。打ち寄せる波に子どもたちが歓声を上げていた=15日午前、福島県いわき市 \n\n撮影日: 2013/07/15 (credit:時事通信社)
プロ野球球宴・黙とうする全セマスコットキャラクター (16 of23)
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試合前、東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげる全セのマスコットキャラクター=22日、福島・いわきグリーンスタジアム \n\n撮影日: 2013/07/22 (credit:時事通信社)
漁業の復興・サメの水揚げ (17 of23)
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東日本大震災の津波で被災した気仙沼港に水揚げされたモウカザメ。高級食材のフカヒレが切り取られ、身は加工食品などの原料となる=5月23日午前、宮城県気仙沼市の気仙沼漁港 \n\n撮影日: 2013/05/23 (credit:時事通信社)
「千年希望の丘」が完成 (18 of23)
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東日本大震災の津波で生じたがれきを使い造成された「千年希望の丘」。津波の勢いを弱めるための防災拠点、震災の教訓を後世に伝える公園の役割も持たせる=9日午前、宮城県岩沼市 \n\n撮影日: 2013/06/09 (credit:時事通信社)
飛行するブルーインパルス (19 of23)
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「東北六魂祭」で、上空に白いスモークでハートマークを描く航空自衛隊の「ブルーインパルス」=1日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/01 (credit:時事通信社)
飛行するブルーインパルス (20 of23)
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東北六魂祭パレードが行われる国道4号の上空を飛行するブルーインパルス=1日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/01 (credit:時事通信社)
パレードの青森ねぶた (21 of23)
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福島市で2日間にわたり行われた「東北六魂祭」が2日、閉幕した。福島わらじまつりや青森ねぶた祭など東北6県の夏祭りが勢ぞろいし、東日本大震災の鎮魂と復興を祈った。来場者数は計25万人に上った。写真は2日目のパレードに登場した青森ねぶた=2日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/02 (credit:時事通信社)
六魂祭の山形花笠まつり (22 of23)
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東北六魂祭2日目のパレードで、練り歩く山形花笠まつりの踊り子=2日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/02 (credit:時事通信社)
被災地の仮設商店街 (23 of23)
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東日本大震災の被災地で営業する仮設商店街=5月23日、宮城県気仙沼市 \n\n撮影日: 2013/05/23 (credit:時事通信社)