【真田丸】高視聴率を支える、三谷幸喜の「型破り」なドラマ運び

一族一人ひとりの個性を、群像劇の得意な三谷氏が、1年間かけて、しっかりと描き出していくはずだ。
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大河ドラマ“定番”をすっ飛ばした『真田丸』に見える三谷幸喜氏の自信

稀代のヒットメーカー・三谷幸喜氏のオリジナル脚本への注目の高さからか、第3回の放送を終えた現在も、初回19.9%から20.1%、18.3%と大台前後の高視聴率をキープしているNHK大河ドラマ『真田丸』。その始まりの物語はといえば、大河ドラマの定番描写をすっ飛ばして、武田家の滅亡がドラマチックに描かれ、いきなり飛ばしている印象。そこには三谷氏の意気込み、はたまた自信が表れているのか。まだ第3回だが、そこからは史実を描く硬派なドラマのなかでのコミカルな部分の“三谷らしさ”も見えてきた。

◆過去の大河ドラマと比較して際立つ軽妙さ

徳川家康に死を覚悟させた、戦国時代最後の名将といわれる真田幸村(本名:真田信繁)の生涯を描いた同作。定番の幼少期をすっとばし、第1話「船出」から、いきなり主演・堺雅人が登板。ティーンエイジャーの信繁を、いきいきと演じて見せた。3年前のドラマ『半沢直樹』(TBS系)で歴史的視聴率を記録し“視聴率男”の異名を持つ堺のそんな信繁役の姿は、ドラマファンにとってもうれしい限りだろう。

初回から、真田家が仕える武田家の滅亡がドラマチックに展開されるやいなや、第2回「決断」、第3回「策略」と、真田家の人たちが知恵と結束で、戦国時代混乱の末期を切り抜けていく様子がテンポよく描かれる。現段階で同作における、三谷らしさ、らしくなさについて言及するのは時期尚早だが、これまでの大河ドラマと比較すると、『真田丸』は、ナレーションに頼らず、会話劇で物語が進んでいく軽妙さが楽しい。例えば、平岳大の迫真の演技が話題を集めた武田勝頼最期のシーンでは、勝頼の父・武田信玄の亡霊が登場。偉大な父の存在に苛まれ続けた、勝頼の苦悩は視聴者の涙を誘った。

真田家の面々も実によくしゃべる。武田家の滅亡により、これから誰につくべきか? を親子3人で話し合うシーンでは、真田家の主・昌幸(草刈正雄)の本音に、翻弄されるふたりの息子の姿がユニークだ。今回のタイトル『真田丸』は、大坂冬の陣で、真田信繁が築いた最強の砦の名前であると同時に、真田家の家族を乗せた、一そうの船というたとえでもある。歴史ファンの間で真田一族は、信繁ひとりではなく、ファミリーとしての魅力が強い。信繁以上に、策略家としての功績を残した信繁の父・昌幸や、関ヶ原の戦いでは父、弟と敵味方に別れて東軍(徳川)につき、真田家を守った兄・信幸(大泉洋)をはじめ、個性豊かなキャラクターが並ぶ。

◆出し惜しみのない、活気のあるドラマ運びからにじむ自信

男たちに限らず、女性陣も然り。肝っ玉ばあちゃんのとり(草笛光子)を筆頭に、母・薫(高畑淳子)や姉の松(木村佳乃)らも、現代的なセリフまわしで大いにしゃべり、明るく笑って、物語を盛り上げる。一族一人ひとりの個性を、群像劇の得意な三谷氏が、1年間かけて、しっかりと描き出していくはずだ。コミカルな役どころの多い大泉ふんする、クールな兄・信幸の芝居場となるであろう「犬伏の別れ」など、信繁以外のドラマにも目が離せない。

真田一族以外にも「真田十勇士」の人気キャラクター、猿飛佐助(藤井隆)や、信繁の幼なじみ・きり(長澤まさみ)や信繁の初恋の相手・梅(黒木華)など、話題の登場人物たちも、第3話までにほぼ出揃った。出し惜しみのない、活気のあるドラマ運びは、三谷氏の自信の表れなのかもしれない。

こうしてみると、会話劇や個性的なキャラクター像、物語の展開など、史実を硬派に描く大河ドラマのなかでの“三谷らしさ”が節々に表れてきているようにも見える。新府城を脱出し岩櫃城へ向かう真田家一行が野盗に遭遇するシーンや、農夫に扮して顔に泥を塗るシーンなど、高畑演じる信繁の母・薫が見せる戦中の緊張感を感じさせない周囲とのやりとりが、その一端として楽しめるのだ。もちろん“らしさ”とはそんなキャラクターの濃さやコミカルな会話劇だけではないだろう。それが結実していくこの先の、あっと言わせる三谷節に期待したい。

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