「どうしてあの人は当事者意識がないのか」と嘆く前に

どうして、私たちは周囲の人に対して「当事者意識を持ってほしい」と思ってしまうのでしょうか。

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当事者意識がない人はいない

先日、とあるセミナーに参加し、組織開発*を実践する際の進め方と関わる人の変化について考える機会がありました。

参加者は組織開発に携わっている人が中心で、自分の職場を改善したい人からコンサルタントまで経験値はさまざま。

参加者同士でディスカッションする中で、共通の課題認識として浮かび上がってきたことの一つが「当事者意識の醸成」でした。

「当事者意識を醸成するためには何がカギになるのか」

「当事者意識が醸成されるのは、いつ、どのような状況なのか、どのような関係性が生まれた時なのか」

喧々諤々の議論を重ねる中で、見えてきたことがあります。それは、「そもそも当事者意識を持っていない人はいない」ということ。

言い換えれば、「対象(組織やプロジェクト、業務など)に関わる全員が当事者としての意識を持っている」ということでした。

その人が対象と「関わっている」という時点で、何らかの当事者意識は生まれているのです。

では、どうして、私たちは周囲の人に対して「当事者意識を持ってほしい」と思ってしまうのでしょうか。

そこで意識しなくてはならないのは、たとえ同じ職場で同じものを見ていたとしても、実際に見えているものは人それぞれに異なっているということです。見えているものが異なれば、対象との関係性、そして当事者としての意識も異なってきます。

つまり誰かの当事者意識について「ある」「ない」「強い」「弱い」と考えるのは、あくまで「その人から見た相対的な評価」にすぎないのです。

*組織開発というのは、「組織の健全さ、効果性、自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、革新させていく計画的で協働的な過程である。」とワーリックは定義しています。

まずは自分自身の覚悟を本音で語ること

たとえば職場のメンバーに対して「当事者意識を持ってほしい」と感じるとき、その「当事者意識」は「オーナーシップ」と言い換えることができるかもしれません。

単なる当事者意識とオーナーシップの違いは、対象への関わり方の深さです。

そこで本当に望んでいるのは「メンバーにも自分と同じように対象を見て、同じように関わってほしい」「自分が対象を動かすんだ、リスクを負ってでもこれを達成するんだ、という気概を見せてほしい」ということではないでしょうか。

では、どうすればメンバーに「自分と同じように」対象を見て、同じように対象に関わってもらうことができるのでしょうか。

それには、「自分自身がどのように対象を見て、どのように関わっていきたいのかをメンバーに理解してもらい、共感してもらうことが第一歩」と私は考えています。

ただし、これは容易なことではありません。ものごとが予定通りに進んでいるときほど対象との関係性について考えないので、メンバーも「自分の関わり方が他の人とどう異なるのか」理解する機会がないためです。

誰かと衝突する、自分の役割が変わる、事件が起きるなど、状況が変化したり先行きが不透明になってきたとき、はじめて「自分がこれに対して、どう関わるのか?どうしたいのか?」と考えはじめます。

だからといって、予定通りに進んでいることを崩すのは得策ではありません(有効かもしれませんが)。

一つの方策として考えられるのは、自分自身が臨んでいることへの覚悟や、相手を巻き込んででも成し遂げたいものへの気持ちを、具体的な体験や気付きを交えながら率直にメンバーに伝える機会を作ることです。

そして、その話をメンバーがどのように受け取り、感じたのか、しっかり聞き取るということを重ねていきます。

当事者としての考えをお互いに伝え合うと、メンバーが感じていることや見ていること、そしてその理由を知ることができます。

そしてメンバーは、「オーナーシップ」について、一方的な押し付けではなく自分が身に付けるべきものとして考えられるようになります。

これは対話(ダイアログ)やストーリーテリングといった手法で、職場を改善していく際などさまざまな場面で活用されています。

対話の結果生み出されるものは、もしかしたら当初考えていた「当事者意識」とは別物になっているかもしれません。

それでも、対話を重ねることで、メンバー全員の対象とのかかわり方が明確になり、「どうしてあの人は...」と嘆くことのない職場に変化していくはずです。

Text by Furukawa

2017年2月15日 Sofia コラムより転載