「結婚しない人が増えたのは自然なこと」荒川和久さんが指摘する「ソロ社会」とは

未婚・非婚化は自然の成り行きで、結婚しない人が罪悪感を感じる必要もない。広告代理店・博報堂で、独身の男女について研究を続けている荒川和久さんは、著書「超ソロ社会」で、このように指摘している。
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「日本オワタ」「申し訳ない」——。

「生涯未婚率、男性が23%、女性が14%に急増で過去最高に」。そんな調査結果が報じられると、ネット上には絶望感や罪悪感を表現する言葉が溢れた。

結婚しない人が増えている。その現象が、少子化や孤立リスクと結びつけられ、ネガディブに報じられる、あるいは受け止められることは、統計が出るたびに巻き起こる、恒例行事ともはや化している。

しかし、広告代理店の博報堂で、独身の男女について研究を続けている荒川和久さんは、著書の『超ソロ社会-独身大国日本の衝撃』(PHP新書)で、未婚化・非婚化は自然の成り行きで、結婚しない人が罪悪感を感じる必要もない、と指摘している。

生涯未婚率の急増を報じた新聞記事には「生涯未婚率が高くなることが孤立リスクを招く」という分析が加えられていたものもあった。しかし、そもそも結婚していれば「孤立リスク」は、ないのだろうか?

その疑問への答えも、荒川さんの見解では「ノー」となる。「むしろ、奥さんに依存していて、もうそろそろ定年の男性」が一番危険だ、と警鐘を鳴らす。来るべき「ソロ社会」を、私たちはどう生きていけばいいのだろうか?荒川さんに聞いた。

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■始まりはマーケティング

——「ソロ男(ソロ活動系男子)」の調査を始められたのはなぜでしょう?

「消費を動かすのは女性」とよく言われます。これは、男性と比べて女性のほうが消費性向が高い、つまり可処分所得のうち消費支出にまわす率が高いからで、それはその通りなんですね。かつて消費の主役だった主婦もそうですが、働く女性や女子高生など、脚光を浴びるのはいつも女性ばかりで、男性は蚊帳の外でした。でも、よくよく調べたら、消費性向は確かに女性のほうが高いんですが、消費支出の実額としては、男性のほうが高いわけです。特に、独身男性ですね。

案外知られていませんが、未婚男性は人口が多い。未婚女性より300万人も多いんです。さらに、生涯未婚だけではなく、平均初婚年齢も30歳を過ぎて晩婚化も進行しています。そうすると「独身男性」って、消費金額も多く、人口も多い上に、独身でいる期間も長い。市場としての彼らのポテンシャルは無視できないわけです。そうして始まったのが博報堂の「ソロ男プロジェクト」でした。それが『結婚しない男たち』という最初の本になり、二冊目の『超ソロ社会』へとつながるわけです。

でも、深掘りをすればするほど、実は全く違う面が見えてきました。

これまでは、世代論が通用していたと思うんです。高卒、大卒の違いはあれ、みんなおよそ20代前半で働き始めますよね。結婚も、以前は20代のうちに男女ともだいたい結婚してました。30代前半には子どもが産まれ、50歳ぐらいで子どもが独立する——。みんな年齢に応じて同じライフステージを進んでいたんです。横並びだった。だから世代論っていうのが通用したわけです。

でも、今は未婚化、晩婚化だけではなく、離婚率も増えています。もう「ソロ」は、マイノリティではなくなりつつあります。ライフステージの変化と年齢がリンクしなくなってきているんですね。独身のままの人と、結婚して子どもがいる人とでは、消費意識や人生の価値観も大きく違うのは明白だと思いますが、そうすると昔のように「バブル世代」とか「団塊ジュニア世代」とかで、生まれた世代で一括りにできた時代ではなくなっているわけです。むしろ年齢関係なく、家族なのかソロなのかの違いの方が大きい。

■「ソロ需要は昔からあった。供給がようやく追いついただけ」

——「おひとり様」向け商品が今は多くありますね。ソロは大事なターゲットという認識、広告業界ではすでに常識になったのですか?

いえ。それでも圧倒的多数は家族向けです。

ただ、スーパーマーケットの売り上げは、90年後半以降ずっと横ばいです。一方で、1970年代に日本に登場したコンビニ業界の売り上げはずっと右肩上がりに伸びて、もうすぐスーパーに追いつきそうですね。コンビニ売上高の推移と単身世帯の上昇推移は、ほとんど一緒です。コンビニの成長は、こうした単身世帯の需要、特に男性客をつかんだことは大きいと思います。今後は、スーパーでもそういう動きが出てくると思うんですよ。

実は、家計調査によれば、男性の単身世帯の外食費、酒代などは、一家族分を凌駕しています。率ではなく、実額で超えているんです。

ソロ男というと、コンビニで弁当やおにぎりなどの調理食品ばかり買うというイメージがあります。確かにそういう面もありますが、健康意識の高いソロ男が増えていまして、最近は、コンビニで弁当などは買わないんですよ。米は糖質だから摂らない。そのかわり、千切りキャベツをご飯に見立ててどんぶりに入れ、その上に惣菜やレトルト食品を乗せて、キャベツ丼にして食べる人なんかもいます。あと、豆腐を温めて、下に敷いて、その上に乗せて豆腐丼にするとか。だから、低糖質の肉系のお惣菜やレトルトの商材は支持されるんです。

——そういう商品は便利ですが、ちょっと佗しいような気もします。

そうでしょうか。本人たちはむしろ嬉々として達成感を感じていますよ。確実にダイエットできます。彼らの工夫した食事を「ソロ丼」として書籍を出したいくらいです。

他にも、例えば、旅行です。今でこそ旅行の「1人旅プラン」は増えましたが、昔は最小催行人数2名以上というツアーしかなくて、1人旅しようとすると割高だったんですね。しかも、山奥の趣のある温泉旅館へ行くと「1人じゃ泊まれません」とか言われるわけです。自殺でもされると思われたんでしょうね。そういう時代でも、1人旅するソロ男たちはいたわけです。「『ソロ』向けの商品が出てきたから、一人旅ブームが生まれた」わけではなく、昔から、そうしていた人はいて、やっと供給が追いついた。

なぜなら、以前は、それこそ皆婚時代ですから、企業で商品開発を手掛ける部署の課長や部長の年代は既婚者ばかりで、そうした需要に気付けませんでした。でも、今では、そういう意思決定権者にもソロ男が増えてきたということがあります。

こうした「ソロ」向け商品やサービスは確実に支持されます。ソロ男たちは1人当たりの消費単価が高くて、なおかつ、人口も多いわけですから、それに、一度ファンになると一途に支持する優良顧客になりやすいという特性もあります。一度支持されるだけで圧倒的に違うんですよ。

もはや、ソロはマイノリティではありません。かつて「標準」と言われた「夫婦と子」世帯も、2010年には「単身世帯」に追い抜かれています。昔みたいに、家族だけターゲットに考えていれば全てOKっていう時代ではなくなってきていることは事実です。

■「9割は結婚したい」というデータはウソ

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——政府や自治体主導の少子化対策として結婚を推奨する政策には、おかしなものも混じっているという指摘があります。その出発点として典型的な、「9割は『いずれ結婚するつもりの人』だ」という、出生動向調査の使い方の恣意性について、本書では指摘されていますね。

その設問自体は、「いずれ結婚するつもり」か、「一生結婚しないつもり」かのどっちか?っていう二者択一なんですよ。そう聞かれたら、多くの人は「別に一生結婚したくないつもりじゃないしな...」って思うじゃないですか。

この出生動向基本調査には、この後に続く質問があるんですね。「いずれ結婚するつもり」と答えた人に、「1年以内に結婚したい」「理想的な相手が見つかれば結婚してもよい」「まだ結婚するつもりはない」と聞いていますが、結果は、男性45%、女性41%は「まだ結婚するつもりはない」と答えています。(2015年出生動向調査結果より)

ですから、正確にいえば、「結婚したいという人が9割」と言う言い方は間違いで、「9割がいずれ結婚するつもりでいるが、男女とも4-5割はまだ結婚するつもりがない」というのが正しいんですね。にも関わらず、なぜかそこの「9割が結婚したい」の部分だけにフォーカスされているんです。

生涯未婚になる人だって、最初から「絶対結婚しない」って決めてる人なんて、ほとんどいないと思います。ずっと結婚願望がありながら、だけど結果的に結婚できなかったという人もいるでしょう。でも、特に意識することもなく気が付いたら50歳になってました、という人もいるんじゃないでしょうか。

■「昔の家族は、会社の分家だった」

——逆に、昔はなぜほぼ100%結婚できたのでしょう。

いろいろ要因はありますが、ひとつには、かつての女性にとっては結婚こそが、本当の就職であり、自らの経済基盤獲得のための手段だったことがあげられます。大袈裟にいえば、彼女たちにとって結婚は死活問題で、結婚しないという選択肢がなかったわけです。

もうひとつは、「お見合いシステム」。通常のお見合いだけではなく、当時の職場での出会いによる恋愛結婚も、お膳立てというべき「社会的お見合いシステム」だったと思います。企業は、昔は「お嫁さん」になる女性を採用しましたし、男性はとにかく会社の中で伴侶を見つけるという風潮だったわけですし。

ある種、職場という共同体が家族的だったんですよね。田舎から出てきて、会社の寮に入って、会社のメンバーと昼も、夜も一緒にご飯を食べて、それは、もはや「大きな家族」と言ってもいいくらいなんですよ。そういう共同体の中で、男女が出会い、結婚して核家族を作った。それは、いわば会社の分家みたいなもんかもしれないですね。

男性は結婚をすることによって養うべき家族ができて、「会社に一生忠誠を尽くします」って約束したようなもんですが、会社側も「きみのために、ちゃんと給料を払います。年齢と共に給料も上げます」っていう、ある意味「幸せ」な契約関係が続いてたとも言えるわけです。結婚する女性としても、夫となる人が会社からお墨付きをもらったようなものだし、安心だった。

でも、それがバブル崩壊で終身雇用・年功序列やめますという話になると、そうした昭和の人生設計が通用しなくなってしまった。そうなると「会社の人と結婚したところで、私の将来安泰じゃないわよね」って女性も考える。「私、自分で頑張んないと生きていけないわ」と思うのは当然です。もちろん、これだけが未婚化の要因とは言いませんが、影響のひとつと言えると思います。

——少子化対策として、職場結婚を進めようという取り組みも地方自治体などでは行われています。内閣府の検討会では「社内の既婚者が結婚を勧める」というような提言案が一時まとまりそうになり、批判も多かったのですが。

職縁結婚促進が婚活対策に重要だっていうことは間違ってないんです。さきほど言ったように、職場結婚はひとつのシステムとして機能していましたから。昔の会社には部活動もあったし、運動会や遠足もありました。そういう場で出会いや交流があったことは事実です。

だからといって、昭和型の家族的な会社制度に回帰するのは難しいと思います。そこに社内の既婚者とか上司とかが関与すると尚更面倒になります。上司が部下に結婚を勧める、なんて、このご時世「セクハラ」「パワハラ」になりかねません。コミュニティとしての場の提供と、「結婚を強要する」のを一緒にしてはいけないと思いますね。

■「ソロで生きる力とは、人とつながる力」

——「場の提供」でいうと、本書では「ソロで生きるには、人とのつながりがなくてはいけない」という一見矛盾したような指摘がありました。

ひとりでいるっていう物理的孤独状態と、ひとりにさせられているっていう心理的孤立状態とは、全然違うと思うんですね。それは既婚者でも同じで、子どもや家族がいても、ひとりになりたい時もありますよね。家族だとなかなか難しいようで、「家の中でお父さんが1人になれる場所は風呂とトイレしかない」なんて話もあるらしいですが。

状態としての「孤独」ということを、寂しい、辛い、悲しい、というふうに思いがちなんですけど、問題なのは、心が孤立しちゃうことなんです。心が孤立するというのは、誰ともつながってないってこと。たとえ集団の中に所属していたとしても、家族がいたとしても、誰ともつながっていないと感じた瞬間、人間は心の孤立を感じるんです。

逆に、ひとりで部屋の中でいても、周りの誰かとつながっているっていう実感を感じられたら、その人は孤独であっても孤立ではないんですね。そこが大事で。

——逆に、結婚をしていても「孤立」する人はいる。

例え結婚していても、「唯一依存」になっちゃう人は心に孤立感を抱えがちです。既婚者の中に、孤立予備軍なんていっぱいいると思いますよ。特に、男性。熟年夫婦で、奥さんだけに依存してしまう旦那さんがいますが、まさにそうです。万が一、奥さんと死別や離婚をした場合、彼にとって唯一の依存先が消滅してしまうことになります。そうすると彼自身もいなくなっちゃうんですね。自分自身も空っぽになっちゃって。それが心理的孤立なんですよ。

実は私が一番危惧してるのは、そうした昭和的な家族モデルにどっぷりはまっていた人たちが、これから大丈夫なのか?っていうところなんですよ。

そういうおじさんに「友達は?」って聞くと、職場の友達しかいないんです。職場以外の新しいつながり作りを、社会人になってから何十年間も怠ってた。会社にいれば、まだ友達関係が継続しますけど、会社辞めたら1通も年賀状来ないし、誰も連絡してこなくなります。

逆に女性は、世の中のお母さんたちを見てれば分かるんですけど、子供が独立した瞬間に教室通ったり、歌舞伎やコンサート行ったり、突然生き生きしだします。新しい友達も作ったりしています。結婚しようが子供ができようが、人とのコミュニケーションを絶やさない人が多い。女子会とかも含めて、ずっと継続してる。一方、男性はそういうことが内発的にはなかなかできない。仕事ならできるのに、プライベートではできないんですよね。

誰もがいつ何時、ソロになるリスクはあります。奥さんだけとか職場だけとかという唯一依存は危険です。個人としてのネットワークの拡充をしておくことが大切なんです。

要は、それこそが「ソロで生きる力」です。ソロで生きる力とは、別に、誰とも関わらない、仙人みたいなサバイバル生活をする能力ということではありません。逆説的ですが、ソロで生きる力とは、むしろ、誰かとつながる力です。人は誰かとかかわり合いながら生きるものです。自立心とは、誰の力もいっさい頼らないことではなく、頼れる依存先を複数用意できることで生まれるもので、依存先がひとつしかないという状況の方こそ憂うべきです。

会社の上司とゴルフ行くのもいいですけど、それより、職場外での知り合いや友達を作るための行動を起こした方がいいと思います。60歳を過ぎていきなりそう行動しようとしても難しいですから。

■クラウドファンディングがつながりの場に

——今ソロ生活者、あるいは予備軍である私たちは、ソロとして、どういうふうに場を、つながりを持っている必要があるでしょうか。

エリアによっても違いますが、都市部になってくると、地域コミュニティは希薄になってきますから、どうしてもつながりは自分で作らないといけません。でも、待ってたって来ないので、そういう場を見つけていかないと駄目ですよね。

でも、それは、異業種交流会とかではないです。名刺を何百枚集めることとかに意味はないですから。

——場を見つけて参加する、難しいようにも思いますが。

一番、可能性があるのはクラウドファンディングだと思いますよ。クラウドファンディングって、「支援」とその「リターン」という構造になっていますが、あれは実は最高の出会いの場なんですよ。

誰かが何かに挑戦したいっていうことに対する支援みたいなことが今すごく流行ってて。例えば面白いのが「私、ヒッチハイクで日本縦断したいのでお金ください。近所を通った人は泊めてください」というような案件があったり。リターンは何かっていうと、「私の毎日の旅の模様を実況放送します」とかだったりするわけです。「そんなのいらない」って思う人も多いと思うんですけど、でもそういうので、全国の見知らぬ人から結構な額の支援がされるんですよね。

で、彼女が通過するある地点でみんなが集まったりする。当然お互いみんな初対面なんですよ。でも、「こういうのを応援する人たちなんだね」っていうことがお互いわかっていますから、基本的に心がつながれたりします。彼女への支援という行動を通じて、バラバラに集まって来た人たちが、その場で瞬時に知り合いになり、友達関係になれる。

——外向的な人であればパーティーとかにガンガン参加できるかもしれません。でもソロでかつ内向的な人は、どうすればいいんでしょう?

「参加しても知り合いがいない」とか「どうせぼっち参加になるから」とか、自分で自分にリミッターをかけないほうがいいですよ。とにかく、なんでもいいから1回なにかに参加してみることです。意外にも、ぼっちで参加する人がとても多いことに気付きますよ。最初は、ぼっち参加でも、みなさん帰る時にはたくさんの人とつながっていきます。

面白いですよ。普通の生活していたら一生会うこともなかったような、学歴も職業も年齢も育った環境も違う者同士が、価値観や興味の合致だけでそこに集い、つながれるなんて、ある意味奇跡ですよ。

それから、内向的か外向的かという気質はあまり関係ありません。人と会って交流すればするほど、自分の中の多様性が活性化します。「自分が変わる」のではなく、人とのつながりで「新しい自分が生まれます」。そのためにも、ぜひ皆さんにはまず行動していただきたいですね。

——本の中で、クラウドファンディングで制作費の一部を集めた映画の『この世界の片隅に』の事例も出てきます。出資した方は、例えばTwitterなんかで関連ニュースがあると、一生懸命リツイートして盛り上げようみたいな感じで、あれもやっぱり一つの場というか、つながりになっている。

そうですね。だって、エンドロールに名前が出るわけですよ。映画館で見たんですが、多分支援した人なんでしょうね。自分の名前をずっと探してました。で、見つけて「あった!来た!」とか言ってるわけです。そりゃそうですよね。うれしいと思いますよ。もはやお客さんではないですよね。一緒に作った側になれるわけです。「私が、俺が支援したから、この映画は完成したんだ」って、こんな達成感なかなかないですよ。

■ソロと、家族の分断を超えて

——「『ソロ』の良さ」というのは何かありますか?

ソロは、単なる状態です。ソロがいいとか悪いとか、ソロでいることのメリットとか、ソロはこんなに楽しいとかって言うことは、結婚はいいよって押し付けてくる人と全く一緒。人間の本質は独身とか既婚とかの状態で左右されるもんじゃありません。

そもそも、結婚している人と結婚していない人とがお互いにそれぞれの生き方を受容できないで、分断していることの方が不健全なのです。互いに相手の義務や自己責任を押し付け合っても何も解決しませんから。そうした「状態」に依存した分断はなくすべきだと思います。

子どもに関して言えば、産んだ親だけが子どもに対する責務を果たせばいいという話じゃないと思うんです。子どもを産むことよりも、育てることの方を大切に考えるべきだし、「自分は関係ない」ではなく、社会が育てるという視点が必要です。生涯ソロでも、子どもを育てるということで言えば、いろんな形で貢献することが可能です。

子ども向けのサッカー教室で教えたり、絵本の読み聞かせイベントしたり、直接的に接して子どもの育成に貢献するのもいいですが、いちばん大事なのは、頑張って働いて税金を納めることであり、できるだけ消費をして経済を活性化させることだと思います。それがまわりまわって、子どもたちを育てることにつながるのです。

バウマンはじめ多くの社会学者が言うように、社会の個人化はますます進むでしょう。地域や職場、家族といった、かつては安全強固だった共同体は、残念ながら失われていきます。今後は、個人のネットワークの拡充によって、ひとりひとりが新しい関係性を自ら生み出すことが求められます。それは家族の絆のような強固なものである必要はありません。ゆるいつながりでいいから、たくさん用意できることが大事です。地縁や血縁ではなく、共感する考え方や共通の目的行動としてつながる。そうした「拡張家族的な関係性」が未来の新しいコミュニティを作り上げるのだと思いますね。

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▼荒川和久さんプロフィール

あらかわ・かずひさ。

博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー。早稲田大学法学部卒業。博報堂入社後、自動車・飲料・ビール・食品・化粧品・映画・流通・通販・住宅など幅広い業種の企業プロモーション業務を担当。キャラクター開発やアンテナショップ、レストラン運営も手がける。独身生活研究の第一人者としてメディアにも多数出演。著書『超ソロ社会-独身大国日本の衝撃』(PHP新書)『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)。

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ハフポスト日本版では、自立した個人の生きかたを特集する企画『#だからひとりが好き』を始めました。

学校や職場などでみんなと一緒でなければいけないという同調圧力に悩んだり、過度にみんなとつながろうとして疲弊したり...。繋がることが奨励され、ひとりで過ごす人は「ぼっち」「非リア」などという言葉とともに、否定的なイメージで語られる風潮もあります。

企画ではみんなと過ごすことと同様に、ひとりで過ごす大切さ(と楽しさ)を伝えていきます。

読者との双方向コミュニケーションを通して「ひとりを肯定する社会」について、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

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