南シナ海で米中対立、板挟みにあうマレーシアの「綱渡り」

マレーシアは大抵の場合、中国の軍事的進出に対する懸念は大したことではないように振る舞ってきたが…
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Reuters

クアラルンプールで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議では、南シナ海の言及をめぐり日米と中国が対立し、共同宣言の採択は見送られたが、その板挟みにあったのがホスト国であるマレーシアだ。

このことは、マレーシアと他の東南アジア諸国が中国と米国の間で、いかに難しい綱渡りを余儀なくされているかを物語っている。特に先週、米海軍の駆逐艦が南シナ海南沙(同スプラトリー)諸島に派遣され、中国が造成した人工島付近を航行してからはなおさらだ。

マレーシア政府の統計によると、中国は同国最大の貿易相手国。フィリピンやベトナムなど同じく南シナ海で領有権を争う他の東南アジア諸国とは対照的に、マレーシアは大抵の場合、中国の軍事的進出に対する懸念は大したことではないように振る舞ってきた。

だが米国防当局者らの話では、マレーシアは他の東南アジア諸国と同様、南シナ海における中国の海洋進出に対抗するため、米国の軍事的プレゼンス拡大を求めているという。

「地域全体で求められているのが分かる。マレーシアがいい例だ」と、米国防総省高官は語った。

カーター米国防長官は5日、米軍の原子力空母を視察するが、それにはマレーシアのヒシャムディン国防相が同行。カーター氏はマレーシア海軍も訪問する。

両国はまた、海兵隊による合同軍事演習も来週に控えている。

「他の分野でも合同軍事演習の招待を受けている。多くの活動が進行中だ」と、前述の米国防総省高官は述べた。

マレーシアは、東南アジアを通過する米軍の艦船や航空機に補給などの支援を行う取り決めを長い間結んでおり、同国の港には米艦が頻繁に寄港している。

米議会調査局(CRS)によると、マレーシアに寄港した米艦船数は2000年代初めにはほんのわずかだったが、2011年には年間30回以上と着実に増加している。

マレーシアのある高官は今週、同国が中国寄りにも米国寄りにも見られてはいけないとし、「バランスを取らなければいけない」と匿名を条件に語った。

ヒシャムディン国防相も今週、同地域外の国々が緊張を高めないことを望んでいるとし、「われわれは中国とも米国とも関わり続ける。実際に両国と関わっているという事実こそが、両国への明白なメッセージだ」と語った。

<中国の哨戒活動>

同地域で高まる安全保障問題、とりわけ中国の海洋進出にマレーシアがもっと注意を払うよう、ここ数年訴えてきたと、米国など西側の外交官らは語る。

中国軍の艦船は、マレーシア領ボルネオ島のサラワク州沖にある曾母暗沙(同ジェームズ礁)付近で定期的に哨戒活動を行っている。

衛星画像を見た外交官や専門家は、中国の巡視船がジェームズ礁の北方に位置する南康暗沙(同南ルコニア礁)でも半永久的なプレゼンスを維持しているとみる。

「広範な安全保障問題、特に南シナ海におけるマレーシアの役割と重要性は、戦略上ますます高まっている」と、ある西側の外交官は指摘。「重要なのは、マレーシアが先頭に立ち中国と対立することを期待するのではなく、同国が正しいことを行うよう促すことだ」と語った。

だが、当のマレーシアは中国を疎遠にしようとはしていない。同国はマラッカ海峡で9月、中国海軍と合同軍事演習を実施した。

マレーシアは伝統的に、軍事的には米国と、経済的には中国と関係を築いてきたと、ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のシニアフェロー、Oh Ei Sun氏は指摘。

しかし、9月に行われた中国との合同軍事演習や、米国などが主導する環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加は、マレーシアと米中との関係がいかに深化しているかを如実に示すものだと同氏は説明。「両国との間で綱渡りを強いられるため、ますます困難な仕事となる」との見方を示した。

(Yeganeh Torbati記者、翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)