STAP細胞の特許はどうなってしまうのか?

STAP細胞の件、自分は専門ではないので内容のコメントは差し控えますが、天下の理研って結構お粗末なんだなあという印象を持ったことは書いておきます。
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STAP細胞の件、自分は専門ではないので内容のコメントは差し控えますが、天下の理研って結構お粗末なんだなあという印象を持ったことは書いておきます。基本は税金で運営されているわけですし、海外から見た日本の科学研究の信頼性を損なうという点でも困ったものだと思います。

さて、小保方さん(さらに、問題のNature論文共著者であるバカンティ教授、笹井氏、若山教授、小島教授ら)を発明者とした国際出願がされていることはこのブログでも書きました。その特許出願はどうなってしまうのでしょうか?

まず、国際出願(PCT出願)という制度について簡単に説明しておきます。これは、PCT(特許協力条約)という条約に基づいた制度であり、多数国への出願を容易にするために、スイスのジュネーブにあるWIPO(世界知的所有権機関)に出願を行なっておくとPCT加盟国に出願したのと同等の効果を得られる制度です。

ただ、PCT出願をしただけでは実体審査が行なわれるわけではなく、各国で実体審査を行なってもらうために国内移行と呼ばれる手続きを行なう必要があります。審査は各国の特許庁で行なわれます。WIPOはあくまでも一時的に特許出願を寝かせておくための場所だと思って下さい。この国内移行の〆切日が優先日から原則として2年半です(国によって多少異なります。〆切日までに国内移行しないと特許出願は取り下げになります。この出願の場合は今年の10月24日がその〆切日です。現時点ではどの国にも国内移行は行なわれておらず、完全に寝かされた状態になっています。

仮に国内移行されるとどうなるのでしょうか?すると国内移行された国で実体審査が始まります(日本を初めとするいくつかの国では審査請求というもうひとつの手続きを経て実体審査が始まります)。

特許要件のひとつとして実施可能性があります(実現不可能な発明を独占させるのはおかしいので当然です)。ということで、あくまでも仮定の話ですが、STAP細胞がこの特許の明細書に記載された方法では作成できないことが明らかになった場合には特許化されることはないでしょう。

また、これもあくまでも仮定の話ですが、明細書の記載(実験結果等)にねつ造があった場合はどうなるのでしょうか?

日本では詐欺行為により特許を受けると刑事罰の対象になります(文言解釈の限りでは出願するだけでは刑事罰対象にはならないようですね)。

第百九十七条 詐欺の行為により特許、特許権の存続期間の延長登録又は審決を受けた者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

米国では、特許法には規定がないですが、たぶん連邦刑法に引っかかると思います。たぶん、18USC1001条により5年以下の禁固刑と思います(この辺はちょっと自信がないです)。

まあ、現在の状況で国内移行するとは思えませんが、特許取得における詐欺行為は厳しく罰せられ得ますよという説明のために書いてみました。

余談ではありますが、この記事を書く際の調べ物で知りましたが、一昔前のES細胞ねつ造事件(Wikipedia)の当事者であった韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)氏のまさに問題となった研究に基づく特許出願が米国特許庁でつい最近に登録されてしまったという事件があったようです(New York Timesの記事)。よりによってこのタイミングでという感じです。

まあ特許庁に追試の施設があるわけではないので、明細書の記載のつじつまが合っていれば登録する運用になっているのはしょうがないですが、(少なくとも生物学分野の関係者であれば)誰でも知っているような事件をスルーして登録してしまう米国特許庁審査官はザル過ぎないかという批判が巻き起こっているようです。

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(2014年3月14日「栗原潔のIT弁理士日記」より転載)