少年Aの手記「今すぐ出版中止を」遺族が訴える 神戸連続児童殺傷事件

1997年に神戸市内で連続児童殺傷事件を起こした元少年が手記を出版することに対して、遺族が6月10日「今すぐに出版を中止し、本を回収して」と訴えた。
|

1997年に神戸市内で連続児童殺傷事件を起こした元少年が手記を出版することに対して、遺族が6月10日「今すぐに出版を中止し、本を回収して」と訴えた。毎日新聞などが報じた。

当時14歳だったため、少年法に配慮して「少年A」とマスコミで報じられた男性は、現在32歳。1997年2月から5月にかけて、神戸市須磨区内に住む児童5人を襲い、小学4年生の女児と小学6年生の男児を殺害、3人に重軽傷を負わせた。「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」の名前で犯行声明を地元の新聞社に送って、社会に大きな衝撃を与えた。刑事罰の対象年齢を16歳から14歳に引き下げる少年法改正のきっかけになったと言われている。

今回、発売される手記「絶歌」。著者名は「元少年A」。朝日新聞デジタルによると、早ければ10日から書店に並ぶ予定で、版元である太田出版の岡聡社長は「少年犯罪が社会を驚愕させている中で、彼の心に何があったのか社会は知るべきだと思った」と話している

産経WESTによると男性は手記の中で、事件前からの性的な衝動を告白。事件に至るまでの精神状況や、2004年に関東医療少年院を仮退院した後、日雇いアルバイトで生計を立てていたことなどを記している。巻末では遺族や被害者家族への思いも綴ったという。

■「私たちの思いは完全に無視された」と遺族

この手記の出版に対して、元少年に当時11歳だった息子を殺害された土師守(はせ・まもる)さんが10日、弁護士を通じて以下のような談話を出した。

加害男性が手記を出すということは、本日の報道で知りました。

彼に大事な子どもの命を奪われた遺族としては、以前から、彼がメディアに出すようなことはしてほしくないと伝えていましたが、私たちの思いは完全に無視されてしまいました。なぜ、このようにさらに私たちを苦しめることをしようとするのか、全く理解できません。

先月、送られてきた彼からの手紙を読んで、彼なりに分析した結果をつづってもらえたことで、私たちとしては、これ以上はもういいのではないかと考えていました。

しかし、今回の手記出版は、そのような私たちの思いを踏みにじるものでした。結局、文字だけの謝罪であり、遺族に対して悪いことをしたという気持ちがないことが、今回の件でよく理解できました。

もし、少しでも遺族に対して悪いことをしたという気持ちがあるのなら、今すぐに、出版を中止し、本を回収してほしいと思っています。

神戸新聞NEXT|社会|加害男性の手記「今すぐ出版中止を」土師さん 神戸連続殺傷事件 2015/6/10 13:01)

神戸連続児童殺傷事件
(01 of12)
Open Image Modal
14歳の男子中学生に殺害された小学校6年生の土師淳君の頭部が置かれていた神戸市立友が丘中学校の校門(兵庫県神戸市須磨区)\n\n撮影日1997年06月11日 (credit:時事通信社)
(02 of12)
Open Image Modal
連続通り魔事件で亡くなった山下彩花ちゃんが襲われた現場(兵庫・神戸市須磨区)\n\n撮影日:1997年06月29日 (credit:時事通信社)
(03 of12)
Open Image Modal
神戸新聞社に送られた神戸の小学生男児殺害事件の犯行声明文と挑戦状(兵庫・神戸市)\n\n撮影日:1997年06月28日 (credit:時事通信社)
(04 of12)
Open Image Modal
容疑者逮捕を発表する兵庫県警の山下征士捜査一課長(中央)と小林敏恭須磨署長(兵庫・神戸市須磨区)\n\n撮影日:1997年06月28日 (credit:時事通信社)
(05 of12)
Open Image Modal
校門前で記者会見する友が丘中学校の岩田信義校長(兵庫・神戸市須磨区) \n\n撮影日:1997年06月30日 (credit:時事通信社)
(06 of12)
Open Image Modal
中学3年の容疑者の顔写真を掲載したとして法務省の回収勧告を受け、記者会見するフォーカスの田島一昌編集長(右)と山本伊吾編集部副部長(東京・新宿区の新潮社)\n\n撮影日:1997年07月04日 (credit:時事通信社)
(07 of12)
Open Image Modal
殺人容疑の少年が捨てたとされる南京錠とのこぎりを発見するため、少年の自宅近くの「向畑(むこうはた)ノ池」を捜索する兵庫県警の捜査員(兵庫・神戸市須磨区)\n\n撮影日:1997年07月06日 (credit:時事通信社)
(08 of12)
Open Image Modal
同年代の少年らが見つめる中、神戸地裁に入る少年を乗せたマイクロバス(兵庫・神戸市兵庫区)\n\n撮影日:1997年07月25日 (credit:時事通信社)
(09 of12)
Open Image Modal
インタビューに応える神戸連続児童殺傷事件被害者の父親(神戸市中央区)\n\n撮影日:2003年05月13日 (credit:時事通信社)
(10 of12)
Open Image Modal
神戸児童殺傷事件の加害者男性が関東医療少年院を仮退院したことについて記者会見する小畑哲夫関東地方更生保護委員会委員長(東京・千代田区の法務省)\n\n撮影日:2004年03月10日 (credit:時事通信社)
(11 of12)
Open Image Modal
土師淳君が殺害された現場、通称「タンク山」に建てられた慰霊碑。一連の事件の舞台となった町並みを山の上から見渡している(兵庫・神戸市須磨区)\n\n撮影日:2007年05月19日 (credit:時事通信社)
(12 of12)
Open Image Modal
出版が決まった元少年Aの手記「絶歌」 (credit:太田出版)
【関連記事】