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リモートワークのために徳島へ引っ越したエンジニアが移住して感じた意外なこと

徳島県にクラウド名刺管理の《Sansan》が構えるサテライトオフィスで働く團洋一さん。田舎で働くとのんびり出来ると思ったけれども…意外な生活が待っていたという。
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クラウド名刺管理の《Sansan》が徳島県に開設したサテライトオフィス『Sansan神山ラボ』。2013年よりここで働くのが團洋一さんだ。團さんはエンジニアとして東京から徳島に移住。望んでいたはずの田舎暮らしは苦労の連続だった!?

満員電車に乗ると、体の調子がおかしくなる

徳島県にある築70年の古民家を再利用し、サテライトオフィス"Sansan神山ラボ"を開設しているSansan株式会社。

田舎への移住は「セミリタイアして、悠々自適にのんびり働く」というイメージもあるが、《Sansan》はエンジニアに創造力を発揮してもらい、ハイレベルな仕事を実現するためにサテライトオフィスを運営。リモートワークを取り入れている。その一人として、2013年11月より“Sansan神山ラボ”で働いているのが、エンジニアである團洋一さん(32歳)だ。

團さんはもともと徳島出身。大学卒業後、一度は地元でSEとして就職したが、転職をきっかけに東京へ。東京で約5年間働いた後、徳島県神山町への移住を決めた。

移住を考えたきっかけは、東京暮らしのストレスだった。團さんいわく「通勤で満員電車に乗るとすぐに体の調子がおかしくなる」のだそうだ。また、結婚して家族ができ、将来的には子どもを田舎で育てたいという想いも背中を押した。

移住から約1年半。田舎暮らしで苦労したこととは?最近ではブームともいえる地方移住のリアルなところに迫った。

サボるよりむしろ働き過ぎる!? リモートワークの盲点

― 徳島に移住して、最初からスムーズに業務はできたのでしょうか?

いやぁ全然ダメでした(笑)。

ボトルネックになったのはチームのみんなとのコミュニケーションで…伝わってるだろうと思ったことが伝わっていない、情報が入ってこないということも多かったです。

Skypeやチャットでのやり取りは、相手の表情がよくわからないので、「あれ、この人怒ってる?」と受け取ってしまって、気に病むことも多かったです。正直、「こんなに迷惑をかけるなら会社にいないほうがいいんじゃないか」というくらい大変で…。

― どう問題を解決したのでしょう?

上手くいかない理由を考えた時、根本にあったのが人間関係で。やり取りする相手のことをよく知らないまま仕事をしていたので、気をつかう場面も多かったんです。

なので「一度、東京の皆さんとリアルな場所で働かせてください」と会社にお願いしました。妻には申し訳ないと思いつつ、僕だけ東京に戻って2ヶ月間働かせてもらいました。

― 人間関係がしっかりしていない段階では、リモートワークはすべきじゃないということでしょうか。

そうですね。もちろん、一人で完結できるような仕事や働き方ならいいと思いますが、チームでの仕事は人間関係が一番大事だと思います。2ヶ月くらいはリアルな「場」で一緒に働いたほうがいい気がします。その間、飲み会に参加しているだけでも全然違うかもしれません(笑)。

僕の場合、それでも運が良くて「将来的に私もリモートしたい。團さんが上手くいくように協力したい」「ツラさを理解するために俺もやってみる」という人が周りにいました。だから導入ツールやフローが洗練されていった部分も多いですね。

どうしても「自分が好きでリモートワーカーをやってるんだから、困ったことは自分で何とかしなきゃ」みたいになりがち。でも、実際は一人ではどうにもできないことがほとんどなんですよね。一人で解決しなきゃ…なんて思わないほうがいい。協力者を見つけたほうがいいし、もっといえば、部長や役員クラスの理解がないと厳しいと思います。

― 企業側がリモートワークを導入する時、気をつけたほうがいいこともありますか?

会社が心配するのは「リモートだとサボるんじゃないか?」というところだと思うんですけど…実際、僕の場合は逆で。働き過ぎちゃうんですよね…仕事をしてる姿を見てもらえるわけじゃないんで、とにかく結果を残さないと…なんて気負って。

プログラマなのでコードを書くしかない。アウトプットを出すしかない。でも一人で出来ることには限界がある。そういう意味でも、一人で抱え込みすぎない方がチームとして成果も出る気もします。

隣に住むおばあちゃんが、畑仕事を教えてくれる

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― 移住してから生活やプライベートで変化はありましたか?

家が信じられないくらい広くなりました(笑)。戸建てで庭と畑があって。食べ物や水が変わったからか、気持ちの問題か、体調もわるくないですね。

自転車で通勤しているのですが、景色を見ながら、信号が全くない道をすーっと走って、通勤のストレスは減ったと思います。オフィスになっている古民家には畑もあるんですけど、ちょっと畑仕事をして、リフレッシュした気持ちで仕事にとりかかったり。

― もともと自然や畑、野菜などにも興味があったのでしょうか?

いえ、全然ありませんでした。

もともと東京では下町にあるような居酒屋で飲んでばかりで食にも無頓着で。だから「へぇ畑があるんだ」「まぁあるならやってみようか」というレベル。で、やってみると育って「できるじゃん」みたいな。家にも畑があるんですけど、隣に住むおばあちゃんが教えてくれるんですよ。まあ半分はちゃんと世話しなきゃダメでしょ!って叱られながらやっていて(笑)。

― 逆に田舎暮らしの大変さがあれば教えてください。

1年ちょっと春夏秋冬を通して生活して…まあ四国ってけっこう温暖なイメージがあるじゃないですか。全く違って。まず冬はフツーに雪が降るけど、神山だと外は寒いし、室内はもっと寒い。そういう家の作りになってないので、ただの広い家なんですよね。もう本当にMacBookのアルミのところが心底憎くなるぐらい寒いです。

で、春になれば春で…村が花粉に包まれます。去年は花粉がひどすぎて寝込んだりもして。夏は涼しいけど、湿気もすごい。ソファがカビちゃって嫁がすごい激怒しました(笑)。秋が一番過ごしやすい季節ですかね…。食事は本当においしいですけど、やっぱりその代償はありますよ。

巨大蜘蛛と格闘しても、「もう人生終わり」とは思わない

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― けっこう過酷な生活ですね(笑)。生活において何に重きを置くかというところですよね。

そうですね。東京だと本当に満員電車がニガテで。「この満員電車であと数十年と通勤できるのかな」とか「老後どうなるんだろう」とか、ふと不安になることもありますよね。

「仕事」と「生きる」というところで「仕事」が優先だったんです。仕事をしないとお金がもらえない。それがもしなくなったら「人生終わりなんじゃないか…」くらいに思ってしまう。どうしても都会って「お金」の重要性がすごく高い気がするんです。

でも、神山に住んでみて、それが逆転しちゃって。お金はあればいいけど、ぶっちゃけなくてもいいかって(笑)。貯金が0円になっても生きていける気がしたというか。誰かしらモノをくれるし、部屋や道具も貸してくれるし。

確かに、田舎に暮らしていると、手のひらくらいの巨大な蜘蛛が家に出たり、大変なことも多いですが、だからといって「もう人生終わり」なんて思わないんですよね(笑)。

こんなことを言ったら怒られるのかもしれませんが、「仕事」だってホントは1個に絞る必要ってないのもしれない。百姓ってよく言うじゃないですか。あれって「100個の仕事を持ってる」という意味に近いらしいんです。だから、小さいことを100個やっていけば1個か2個ダメになっても、あと98個あると思える。

プログラミングも、ずっとよりレベルの高いプロになりたいと思っていたのですが、考え方が少し変わりました。もちろんスキルは磨きますが、プログラマも1個の「仕事」だし、畑仕事も同じ1個の「仕事」だし。

そういう意味で、逆に休日ってなくなりました。平日はプログラミングして、土日は畑仕事して。田舎の人って本当に休まないんですよ。土日でも朝早くから元気に働いている。都会の人のほうが週休2日とかよく休んでいるんじゃないですかね(笑)。

― 移住されたことで、仕事という言葉の意味が「お金を得るもの」ではなくて、「生きていくこと」に近いものになったのかなぁと個人的に感じました。リモートワークの例も参考になる部分が多かったです!本日はありがとうございました。

[取材・文]白石勝也

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