ヘイトスピーチ、罰則付きで禁止する全国初の条例が制定。川崎市長「被害に遭われた方たちは喜んでくれていると思う」

川崎市では在日コリアンが多く住む地域などで、ヘイトスピーチとされる街宣活動が繰り返されてきました。
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2016年、川崎市中原区でヘイトスピーチに抗議する人たち
時事通信社

公の場でのヘイトスピーチなどの差別的な言動を、罰則付きで禁止する川崎市の条例が12月12日、市議会本会議で可決、成立した。差別的な言動を何度も繰り返した場合、最高で50万円の罰金を科される可能性がある。罰則付きでヘイトスピーチを規制する条例は全国で初めてとなる。

「総員起立であります」。12日午前11時20分ごろ、条例が川崎市議会の本会議場で起立採決されると、議長がそう宣言した。傍聴席に集まった約50人の市民らはじっと採決の様子を見つめ、可決後には議場の外で、涙ながらに電話をする人の姿も見られた。

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罰則付きでヘイトスピーチを禁止する条例を可決、成立させた川崎市議会の本会議場
時事通信社

川崎市の福田紀彦市長は本会議後、記者団の取材に対し、「なるべく早く実効性のある条例を作りたかった。在日韓国、朝鮮籍の方だけではなく、多くの外国籍の方々も含めて、あらゆる差別をなくしていくための条例。今まで被害に遭われた方たちは、喜んでくれていると思う」と述べ、条例成立の意義を強調した。

条例の正式名称は「川崎市差別のない人権尊重まちづくり条例」。市内の道路や公園、広場などで拡張器やビラ、プラカードなどを使って、外国にルーツを持つ人たちに対して差別的な言動をすることを禁じる。違反者には、「勧告」や「命令」が出され、それでも繰り返す場合は、氏名や住所を公表できる。市が刑事告発し、裁判で有罪が確定すると、50万円以下の罰金が科される可能性もある。

罰則をつけてヘイトスピーチを規制することをめぐっては、憲法が規定する表現の自由を制限しかねないとする懸念もある。この点について福田市長は「一部条例案の修正をするなど、十分配慮した。表現自由は最も大切な自由の一つである」と説明した。

川崎市が罰則付きの条例制定に踏み切った背景には、市内の在日コリアンが多く住む地域などで、ヘイトスピーチとされる街宣活動が繰り返されてきた事情がある。川崎市での問題は、国が2016年にヘイトスピーチ対策法を制定する契機にもなった。

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条例の成立後、記者団の取材に答える川崎市の福田紀彦市長
TARO NAKAZAKI/HUFFPOST JAPAN

対策法では地方自治体に対して「地域の実情に応じた施策」を求めている。福田市長は今回の条例制定についても「罰則付きということで、非常に重たいものではあるが、(川崎市の)地域の実情を踏まえたものだと思っている」と語った。

この日の本会議では、自民党会派が提出した条例の付帯決議も賛成多数で可決した。付帯決議は、外国にルーツに限らず、日本人を対象にした差別でも、必要な対応を検討するよう求める内容。自民党市議は討論の中で、「市民を分断するようなことはあってはならない」と指摘した。付帯決議について福田市長は、「全ての市民が不当な差別を受けてはならないのは、当然のこと。その趣旨をしっかりと市民に伝えていかないといけない」と述べた。

ヘイトスピーチを自治体が禁止する条例の制定が、全国で続いている。福田市長は「川崎市の取り組みが、他の自治体や国に伝わっていく意味で、大きな意味がある。(今回の条例成立は)一里塚だというふうに思う」と述べた。

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