あいちトリエンナーレだけの問題ではない。「行政側の萎縮」を危惧する声も。参院会館でアーティストらが院内集会

小田原のどかさんは「今回のトリレンナーレは関わっていると周りに言いづらい雰囲気がある」と現場の人の声を紹介した。
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「あいちトリエンナーレ 2019」の「表現の不自由展」中止や文化庁からの補助金不交付を受けて、参議院会館で院内集会が10月7日に開かれた。

イベントはアート関係者や政治家をつなぐ目的で、若手アーティスト・アートマネージャーによる「project the barb」実行委員会が主催した。トリエンナーレに作品を出展している小田原のどかさんやアートや法律の専門家作田知樹さんらが出席した。

主催者の南雲由子板橋区議は東京芸大卒。アートと政治に両方に携わる立場から、「アーティストからも、政治家からもいろんな声を聞く。アーティストと政治家を繋げて、国会の中に持ち込めないか」と集会の趣旨を説明した。

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南雲由子板橋区議
Rio Hamada / Huffpost Japan

集会では一連の騒動に対する意見や、解決するプランなどを自由に話し合った。

小田原のどかさんは、2011年から長崎原爆を扱う作品制作に取り組んでおり、トリエンナーレでは愛知県豊田市の会場に出展している。

自主規制・検閲について意見を求められると、過去に自身の作品が、原爆を理由に助成金がおりなかった経験があると明かした。

「私が特に懸念するのは、若い世代が、自分の表現をしたいという作家の中で、こういう傾向の作品はダメなんじゃないかとか、検閲を受けやすいというような認識が広がってしまうことです」

「作家が何を作るのかと、それがどういう助成を受けるのかは別の問題」と断った上で、「萎縮はしていくだろうし、こんなに大きなことになって、攻撃対象になりやすいだろうと認識している」と懸念を示した。

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小田原のどかさん
Rio Hamada / Huffpost Japan

小田原さんはまた、アーティスト以外のトリエンナーレ関係者の考えを知るため、ボランティアやトリエンナーレのスタッフ、市役所職員、キュレーター、地元美術館の関係者ら数十人を集めたエピソードを紹介した。

助成金の不交付決定される前のタイミングだったが、現場では“萎縮”する雰囲気があったという。

「現場の声としては、今回のトリレンナーレは関わっていると周りに言いづらい雰囲気がある。電車の中でトリエンナーレのTシャツを着ることが、前回・前々回は宣伝になるので、ボランティアが終わってもわざとTシャツを着ていたが、不自由展の中止で多くの脅迫や批判が寄せられて、Tシャツを着づらかったという実感ベースの話を聞きました」

表現の不自由展が再開した場合も、「名古屋で警備強化しても、豊田市の方に来て、危害を加えたりしないか」という不安を現場は抱えているという。

表現の自由を求めるアーティスト、萎縮する行政

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作田知樹さん
Rio Hamada / Huffpost

集会では参加者から、行政側の自粛・萎縮に関する意見が多く上がった。

作田さんは「助成金をもらう側が自己検閲することを懸念しています。地方自治体が自粛するような前例となってしまいかねない」と指摘した。

今回の「表現の不自由展」は、出展作品に対する抗議・脅迫が殺到したため中止に追い込まれたが、愛知県や名古屋市などの開催自治体もその矢面に立たされていた。

参加者の男性は「行政側の萎縮が働くと思う。お金を出すだけだから縮する必要はないし、政治的に偏っていることもないから臆することはないと思うのですが、市民から寄せられる意見、たくさんの不満が募ってくると、そういう予測できるものに助成しづらい」と影響を危惧した。

別の男性も「アーティストよりも、はるかに早い段階で、行政の方は萎縮している。アーティストの立場からすれば、自由な空気を守るのが一番大事なこと。ただ、明らかな弾圧があれば、国民は黙るし、それよりも先に自治体が黙る。アーティストは後になってからその状況に気づく」と述べた。

そうした“萎縮”が進まないように、批判にさらされる可能性がある場合に相談できる専門的な組織が必要だと、参加者の女性は指摘した。

「運営している人たちだけで相談して、どうにかするのが通常だと思います。このままプログラムを運営をしていくと、電凸や世論が激しく批判にさらされる可能性がある時に、相談できる組織や事例を蓄えた専門的な団体がないと、運営側だけでは対策しきれない。 そういった組織ができれれば良い」

愛知県の大村秀章知事は7日夜、表現の不自由展を8日午後に再開すると発表した。