新井浩文被告事件の判決は12月2日。検察は懲役5年求刑、弁護人は無罪主張。裁判のポイントは?

弁護側は、強制性交罪の要件である暴行脅迫は用いておらず、同罪は成立しないとして、改めて無罪を訴えた。
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新井浩文被告(2012年撮影)
時事通信社

派遣型マッサージ店の女性従業員に性的暴行を加えたとして、強制性交罪で問われた新井浩文被告の公判が10月23日、東京地裁(滝岡俊文裁判長)で行われた。検察側は、「犯行は卑劣で悪質」などと指摘し、懲役5年を求刑。弁護側は、強制性交罪の要件である暴行脅迫は用いておらず同罪は成立しないとして改めて無罪を訴え、結審した。

新井被告は2018年7月1日午前3時ごろ、マッサージのため自宅マンションに呼んだ女性の頭を押さえ付けるなどして、性的暴行を加えたとして2月21日に起訴された。

事件では、①強制性交罪の要件に含まれる「暴行脅迫」があったかどうか、また、②性交の合意があったと被告人が誤信していたかどうか(故意の有無)が主な争点となっている。

「暴行脅迫」に当たるか、双方の主張は

現行の刑法177条では、「暴行脅迫」がなければ強制性交等罪は成立しない。過去の判例上、この「暴行脅迫」の程度は、「被害者の反抗を著しく困難にする程度のものであること」が必要とされる。

女性側はこれまでの裁判で、新井被告が女性の手や頭を掴んで自身の陰茎に押し付けたり、衣服を脱がして体を触ったりする行為に及んだと証言している。その間は「やめてください」「触らないで」と言葉で拒絶したり、膝を閉じる、腕を押すなどして抵抗したという。

検察側は論告で、女性と新井被告には身長20cmほどの体格差があること、時間が深夜3時ごろだったこと、部屋が真っ暗であったことを挙げ、女性は「物理的および心理的に抵抗することが困難であった」と指摘。新井被告の行為は「(女性の)反抗を著しく困難ならしめるものであった」として、暴行要件を満たしていると主張した。

一方の弁護側は、強制性交罪は「暴行」を手段にして相手の意に反する性交に及ぶことで成立し、「単に相手の意に反する行為をすることで罪が成立するのではない」と主張。衣服を脱がすなどの行為は「通常の性行為に伴うこと」として、新井被告の行為は同罪の「暴行」には当たらないと反論した。

また、部屋が真っ暗であったことについては、新井被告が眠気を感じたため了承をとって部屋を暗くしたもので、「いきなり暗くさせたものではない」と指摘。体格差は「一般的な男女の差」で、性交後に女性が新井被告とのやりとりに応じていることから、「直前に反抗を著しく困難にすると思われるような暴行を受けたと評価することはできない」と訴えた。

 「合意があったと錯誤していたかどうか」

二つ目の争点である「性交の合意があったと被告人が錯誤していたかどうか」。

この点について検察側は、女性が数回にわたり言動で拒否していたことや、新井被告が行為後に「同意していないのではないか」と考えて金銭を渡そうとしたことなどを挙げ、新井被告が「(女性側の)合意がなかったと認識していたのは明らか」だと指摘した。

女性に金銭を渡した理由について新井被告は、「合意はあると思っていたが、ちょっと不安はありました。それ以上は何もないです」と証言している。弁護側は、「ちょっとした不安があり、口止めしたかった。これだけで同意があったと誤信していたことを否定することはできない」と話し、検察側の主張を否定した。

最終意見陳述では語気を強める場面も

23日の公判では、被害を訴えている女性の意見陳述書が検察官によって代読された。

女性は、「法廷で真摯に反省を述べてくれると期待していた」ものの新井被告が無罪を主張して争う姿勢であることを知り、「裏切られた気持ちで愕然とした」という。電車に乗ったり、体が大きい男性を見たりすると恐怖を感じるようになったとも打ち明け、「正当かつ厳しい処罰が下されることを望む気持ちが強いです」と述べた。

最後には、新井被告の最終意見陳述があった。

裁判長に発言を求められて証言台に立った新井被告は、検察側の論告について「おおむね内容は合っている」としたが、女性の意見陳述書については「一つだけ思ったことを言います」と語気を強めた。

女性側は意見陳述書で、性行為に至るまでの間に「この人は何を言ってもわからないと思って思考が停止し、抵抗できなくなってしまった」としているが、新井被告は「今まではずっと抵抗していたと言っていたのに、なんで違うのかと思いました」と疑問を口にした。

判決は12月2日に言い渡される。