深刻になるDV、虐待…自粛が進んでも、止めてはいけない支援がある【新型コロナ】

全国女性シェルターネットの共同代表・北仲千里さんは政府に、自粛下でも支援を続けるという方針を出した上で、「マイノリティに配慮した対策を」と求めている。
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東京都の外出自粛要請を受け、閑散とした銀座=3月28日
時事通信社

新型コロナウイルスの感染拡大により、学校の休校、外出の自粛、在宅勤務の推奨で、家にいる時間が長くなった人も多い。

そんな中、DVや虐待の増加や悪化が懸念されている。NPO法人「全国女性シェルターネット」は3月30日、国に要望書を提出。「在宅ワークや子どもの休校によりストレスがたまり、夫が家族に暴力を振るうようになった」などの相談が寄せられていることを上げ、相談場所を閉じないことなどを求めた

今、DVや虐待の現場で何が起こり、何が求められているのか。

NPO法人の共同代表を務める広島大学ハラスメント相談室准教授の北仲千里さんに聞いた。

非常時のストレスが弱者に。政府はポリシーを打ち出して

ーー要望書を出されましたが、現在のような非常時にはDVや虐待が深刻化しやすいのでしょうか。

阪神大震災や東日本大震災では、避難所や仮設住宅での性被害が報告されていますし、DVの報告もありました。非常時は多くの人にストレスがかかり、それが弱い方に向かってしまうんです。

ーー今回も、そうした危惧があるということですね。

まだ数としてどのくらい増えたというのはまとめられませんが、支援団体にヒアリングをしたところ、悪化している、新たにDVや虐待が発生している、などの声が複数上がってきました。

一番の原因は、経済的に不安定になったことによるストレスではないかと思います。さらに、仕事がなくなったり在宅勤務になったりして加害者が家にいることで、被害者が相談できなくなってしまうという状況も出てきています。支援が途切れてしまうんです。

数週間で済むのであれば、なんとか耐えられるかもしれません。でも、今回は数ヶ月続いていく可能性もあり、対策が必要だと考えています。

ーー確かに長引けば長引くほど、被害者の危険も高まります。

そもそも非常時には、DV被害者や虐待を受けている子どもたち、セクシャルマイノリティ、外国人の方など、マイノリティに対する支援が脆弱になりがちです。

現に自粛の流れの中で相談窓口が閉じてしまい、DV被害者らが支援に繋がりにくい状況も出てきています。もちろん感染が広がらないよう対策は必要ですが、今後相談が増加することも見越した体制整備が必要でしょう。

移動制限が行われているフランスではDV被害者の危険が高まるとして大臣が声明を出しました。対策に予算をつける国も出始めています。日本もこのタイミングで、はっきりとポリシーを打ち出してほしいと思います。

そうしなければ、感染防止のために相談窓口を閉める、シェルターでの受け入れを止める、というような事態になってしまう可能性もあります。

耐えきろうとせず、支援につながって

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NPO法人「全国女性シェルターネット」が国に出した要望書の一部。被害者から寄せられた声が綴られている。

 ーー自粛が進む中でも、止めてはいけないものもある。それを政府としてしっかりと打ち出すべきだということですよね。

さらに懸念しているのは、支援が分かりやすい形になればなるほど、取り残される人がいるということです。

政府は経済的な対策が必要だとして、給付金などの検討を進めています。それは重要なことです。しかし例えば、DVを受けて住民票を移さないまま家を出ている人もいます。自治体はそこまで把握できませんので、世帯ごとに給付金などが出た場合、こうした被害者は受け取れないことになります。

本来世帯ごとではなく個人単位で行われるべきだと思いますが、世帯ごとに給付が行われる場合でも、DV被害者だと分かる場合には給付するなどの措置が必要でしょう。

非常時は急速に事が進むため、マイノリティの状況を考慮しないとこぼれ落ちてしまう。政府にはこうした状況も考えた上で対策を進めるよう求めます。

ーー被害に遭われている人には、何を伝えたいですか

耐えきろうとせずに相談してほしい、ということです。

通常通りの対応は難しく、相談場所も減っているという現実はありますが、相談員の安全は守りつつ相談は続けようと公的機関も民間団体も頑張っています。100%閉じているとは思わないで。「こんな状況だから」と我慢せず、支援に繋がってください。