「収入減った。路上生活するしか・・・」新型コロナで困窮する遺児たち

親を亡くした遺児たちが、新型コロナの影響で生活困窮に陥っている。遺児を育てるひとり親の多くが非正規雇用のためだ。支援団体は緊急支援金の交付を決めた。
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あしなが学生募金への協力を呼び掛ける大学生たち(2018年)
時事通信社

病気や災害、自死などで親を亡くした子どもたちの暮らしが、新型コロナの感染拡大で脅かされている。遺児の進学を支援する一般財団法人「あしなが育英会」には、コロナの影響で収入が激減したなどとして生活困窮を訴える声が相次ぐ。遺児たちの暮らしと学びを支えようと、同会は緊急支援金の交付を決めた。

 勤務時間削られ「食費もない」

「食べ盛りの子どもがいるのに、収入が減ってお金がない。電気ガス水道代がかかるから、もう家族全員で路上生活するしかない」

「コロナで確実に収入減になり、新学期には学費の請求が来るので心配。正社員ではないので勤務時間が相当削られてしまい、不安しかない」

「休校で子どもがずっと家にいて、思った以上に食費も光熱費もかかる。つい食費が高いことを口にしてしまい、子どもから『1日2食で構わない』と言われた。申し訳ない気持ちでいっぱい」・・・

あしなが育英会は4月上旬、会が支援する奨学生の母親たちに新型コロナの感染拡大の影響を尋ねる緊急アンケート(有効回答数553世帯)を実施。収入が減ったり、休校で子どもが自宅で過ごす時間が増えたりして、遺児世帯の暮らしが急速に困窮している実態が浮かび上がった。16日に会見した会によると、奨学生を育てるひとり親の多くは、パートや派遣社員など非正規雇用で不安定な勤務形態という。

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あしなが育英会が支援する奨学生のひとり親の多くは、非正規雇用の労働者という
Getty Images

「切迫した状況」緊急支援金を交付へ

このため会は、高校生から大学院生までの全ての奨学生約6500人を対象に、1人当たり15万円の支援金を給付することを決めた。「遺児たちの暮らしは切迫した状況。早急に現金給付が必要だ」として、交付にかかる10億円は会の財源から捻出したという。

 遺児を対象にした「あしなが奨学金」は、支援を受ける大学生やボランティアが街頭で集めた募金のほか、個人や団体からの直接の寄付などを原資としている。学生による街頭募金の活動は、1970年から毎年2回開催。今春は100回目の節目だったが、新型コロナの感染拡大を理由に50年間で初めて中止された。

 会の岡崎祐吉事務局長は「遺児たちが学業を続けられるよう、支援をお願いしたい」と訴えた。会はウェブサイトで募金を呼び掛けている。