「小泉大臣だからできた、というのでは困る」コロナ禍の働き方改革、トップは環境省

小泉進次郎環境相は「私のトップダウンを引き出してくれたのは、ボトムアップの情熱」だと職員への感謝を示し、「私としては、どのような立場であっても霞ヶ関のデジタル化、働き方改革を後押ししていきたいと思っています」と語りました。
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閣議後会見する小泉進次郎環境相(オンライン)
HuffPost Japan

ワーク・ライフバランス(WLB)社が8月3日に発表した「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」

テレワークのしやすさや、大臣レク(報告や打ち合わせ)におけるオンライン化やペーパーレス化などで、職員からの評価がトップだったのは、環境省だった。

小泉進次郎環境相は4日の閣議後会見で、「職員からは『コロナの影響もあるが、もともとデジタル化を進めていたこと、(小泉氏の)育休もきっかけにウェブ会議が進められていたことが大きかった』という声がある。嬉しく思う」と述べた。

この日の会見も、リアルと同時にオンラインでも行われた。

 

職員が背中を押した小泉氏の育休、育休が変えた組織の働き方 

アンケートでは、「大臣とのレクが電話やオンラインに移行したか」「大臣レクにおけるペーパーレス化が進んだか」という質問に対し、「強くそう思う」「そう思う」と回答した環境省の職員が、それぞれ96.9%と87.9%にのぼった。

「テレワークできるようになったか」という質問には、100%が「強くそう思う」「そう思う」と回答した。

小泉氏は1月の長男誕生に合わせて取得した育休を機に、テレワークやウェブ会議を自ら行なっている。

小泉氏は「私が育休を取るという判断をした時も、職員の中から『ボトムアップでは限界があるから、トップダウンでとってほしい』という声が、私の背中を押してくれた。私だけが旗を振っても無理だった」と振り返り、結果についてこう語った。

私が大臣になるはるか前から、『離職率をなんとか下げたい』『この組織を持続可能な組織にしたい』と思っている有志の職員がいたことが、最大の要因だと思っている。その有志が業務外でやってきたことを、正式な業務として私がオーソライズした。


すごく嬉しかったのは、そういう職員に、今回の結果を受けて反応があるか聞いたところ、『離職した職員から、これがもう少し早ければ踏みとどまったかもしれなかった』『やめようかなと考えていた職員から、踏みとどまろうと思った』。そういう声があったと聞きました。

 

1位で喜んでいる場合ではないと思ったのは、これで1位ということは他の省庁はどうなっているんだと。私としては、どのような立場であっても霞ヶ関のデジタル化、働き方改革を後押ししていきたいと思っています。

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大臣とのレク、「オンライン化」と「ペーパーレス化」は省庁によって大きな差が出た
ワーク・ライフバランス社「2020年官僚の働き方アンケート」より

 

幹部がオンライン反対「最悪ですね」

アンケートからは、国会対応が霞ヶ関の職員にとって大きな負担となっている実態も明らかになった。

自由記述欄に寄せられた職員からのコメントを全て読んだという小泉氏。会見では「課題は国会だというのは明らかではないか」と切り出し、こう続けた。

こんなことを続けていて、霞ヶ関に入りたいと思う職員がいるわけないですよね。私の朝の国会答弁レクは基本的にはない状況にしてますが、これも多分異例のことだと思います。

 

今回、国会では大気汚染防止法改正もあったが、その過程では、野党の中から数名の方がオンラインレクで質問通告をしていただけるという新たな動きがあったことも事実です。

 

でも、アンケート結果を見れば、まだまだ政党側が変わってないこと。国会側がまったくそこに追いついていないこと。そういったことが、結果として、国家公務員の働き方に大きな負の影響を与えている。

さらに、アンケート結果の中にあった「幹部がオンラインレクに反対の方がおり、その場合必ず登庁しなくてはならなかった」というコメントを読み上げ、「最悪ですね」とバッサリ。

「さらに最悪だと思ったのは、国会議員のところにレクに行って、マスクを外せと言われた、と。人前でマスクするのはどうかという昔の考え方をする人がいるのだろう。全くコロナの現状を理解していない」と痛烈に批判し、「そういう中で仕事を強いられている官僚の皆さんの現状をなんとか変えたい」と訴えた。

環境省では今後、職員の残業の原因になっている国会対応についても、さらに負担を軽減するためのシステム導入を検討しているという。

 

霞ヶ関版「20%ルール」導入を検討

環境省ではコロナ前の1月、小泉氏直轄で省内の業務改革について議論する「選択と集中」実行本部を設置。職員の働き方改革を進めてきた。

この日の会見では、「選択と集中」実行本部がまとめた改革案を発表。職員の働き方について、▽テレワーク実施頻度の制限を撤廃▽テレワーク対象者を非常勤職員にも拡大▽職員の「ワーケーション」の推進ーーなどルールを緩和するとした。

また、グーグルなどのIT企業が導入している「20%ルール」(担当業務以外のプロジェクトに勤務時間の20%までを当てられるというルール)の霞ヶ関版を作る方針も示した。

「新しい環境政策分野に職員自らの意思で参加できる環境を整備して職員の意欲を高めるとともにイノベーティブな発想で新しい政策実現を目指す」と語る。

 

「小泉大臣だったからできた、というのでは困る」

会見後には、省内の若手職員とワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長と意見交換を行った。

「他の省庁にはなかった結果。トップのリーダーシップについても聞きたい」と賞賛した小室氏に対し、「本当に嬉しかった。自分たちが今どこにいるのか、外部からの評価を世の中に示してくれて感謝している。私のトップダウンを引き出してくれたのは、ボトムアップの情熱。ここがすごく強かった」と語った。

アンケートには、テレワークの結果、家族との時間が増えた喜びを伝える声も寄せられた。

「息子に『初めてお父さんと一緒に夜ご飯が食べれて嬉しい』と言われ、今まで人並みの親らしい事をしてあげられなくて、申し訳ない気分になり泣いてしまった。職員の家族の犠牲の上に成り立つ霞ヶ関の働き方を再認識した」(厚生労働省30代)

 

「入省してから初めて平日に家族と夕食を取ることができた」(国土交通省20代)

「読んでいて泣けてきた」という小泉氏は、「1位を取る以上に大変なのは、これを維持すること。瞬間風速ではなく、環境省が霞ヶ関の働き方をリードするようになるには、何が必要か」と語った。

参加した若手からは「たまたま大臣が若かったから、小泉大臣だったからできた、というのでは困る」「誰が大臣でも、やるという職員の覚悟が問われていると思う。環境省を変えるだけではなく、霞ヶ関をどう変えるか、民間や日本社会のあり方を問いかける旗振り役になっていかないといけない」などの声も上がっていた。

小室社長は「いい人材が霞ヶ関に来なくなって一番利益を損なうのは国民。どれだけ人材を引きつけられるか、責任感のある良い運営をしなくてはいけない」と語った。