「風邪薬」の広告の変化から見る社会のあるべき姿。斬新なコピーが反響、“やさしい広告”が生まれたワケ

Twitterで瞬く間に反響が広がった「かぜの時は、お家で休もう!」と謳う風邪薬の広告。コピーが生まれた背景にはどのような考えがあったのか、企業側に聞いた。
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「かぜの時は、お家で休もう!」

そんなコピーを謳った、ある風邪薬の電車の中刷り広告がTwitterで話題だ。

風邪薬などの広告コピーといえば、これまでは薬を飲んで頑張るよう促す表現も用いられてきたが、最近は変化の動きがある。

無理して外で頑張ることより家で休むことが大切だと訴える広告は、なぜ生まれたのか?広告を掲載した企業の担当者に話を聞いた。

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パイロンPLシリーズの広告
シオノギヘルスケア提供

「つらくても頑張ること」が“正義”だった医薬品広告

話題の広告を掲載したのは、医薬品などのヘルスケア商品を販売するシオノギヘルスケア。

宣伝されている風邪薬は、パイロンPLシリーズ。大きく分けて2種類あるが、せきやたん、喉の痛みや熱、鼻水の症状などに効く第2類医薬品だ。

かつての風邪薬の広告の中には「風邪でも、絶対に休めないあなたへ。」など、つらい状態でも頑張ることを良しとするかのようなキャッチコピーが用いられていたことがあった。

こうした広告に対する抗議の声があがり、ネット上でキャッチコピーの変更を求める署名活動が盛り上がり、コピーが変更された経緯もある

しかし現在でも、一部の指定医薬部外品の広告では「どんなに毎日忙しくても疲れたなんて言えない方へ」というキャッチコピーが使われているものもある。

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現在の日本(東京・JR品川駅)での通勤風景。つらいとわかっていても、無理して働かなきゃいけない時がある...。その考えは、果たして正しいと言えるのだろうか
時事通信社

「かぜの時は、お家で休もう!」のコピーは、どうして生まれた?

 「かぜの時は、お家で休もう!」という思い切ったキャッチコピー。

シオノギヘルスケアでパイロンPLシリーズのプロダクトマネージャーを務める担当者は、一部の風邪薬や医薬品の広告で「つらくても頑張ること」を良しとするかのように謳ったものがあることを認識しているという。

その上で、コピーが生まれた経緯をこのように話す。

まず前提として、風邪薬を飲んで頂く目的は、あくまで風邪の症状を「緩和させる」ことにあります。風邪薬というのは大体の場合、風邪を引いてしまった段階で飲むものですので、「風邪薬を飲んだから、もう大丈夫」ということは決して言えないわけです。

 

それを踏まえた上で、風邪に対する最も適切な対処は「きちんと休むこと」にあると私たちは考えています。

 

社会課題としての「働き方」などに注目が集まる中で、しっかりと根本から風邪を治してほしいと考えた時、「つらくても頑張ること」を良しとして、それを私たちが助長するのは適切ではないと感じております。

 

風邪薬などの医薬品を販売するものとして皆様に寄り添った存在であるにはどうあるべきか、何を伝えるべきか、そのことを社内で検討する中で、自然とあのようなコピーが生まれました。

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パイロンPLシリーズ
シオノギヘルスケア公式サイトより

広告を見た人からは共感する声が多く寄せられ、Twitterなどで次のような反響が広がった。

「やっと当たり前のことを言ってくれる風邪薬の広告が出る時代になった」

 

「斬新だ」

 

「これを見て、なにも体にムチ打ってまで無理しなくていいんだと思えた」

 

「本当の意味で、やさしい広告だなと思った」

 

「薬を売る側に、薬飲んで頑張れって言われるんじゃなくて休めって言われるのいいな」

医薬品や薬を提供する企業側が現代の日本社会が抱える「働き方」という社会課題と向き合った中での一つの“答え”がコピーに表れていた。

広告は、以下の路線で最長で10月17日まで見ることができる。

京浜東北線、根岸線、埼京線、りんかい線、横浜線、南武線、鶴見線、相模線、山手線、常磐線、横須賀線、総武線快速、つくばエクスプレス、中央線快速、中央・総武線各駅停車、京葉線、青梅線、五日市線、武蔵野線、御堂筋線

なんとなく受け入れてきた日常の中のできごと。本当はモヤモヤ、イライラしている…ということはありませんか?「お盆にパートナーの実家に帰る?帰らない?」「満員電車に乗ってまで出社する必要って?」「東京に住み続ける意味あるのかな?」今日の小さな気づきから、新しい明日が生まれるはず。日頃思っていたことを「#Rethinkしよう」で声に出してみませんか。