「時代は進化する。新しい時代のフィルターを」同性愛差別の足立区議発言、kemioの動画に共感集まる

「時代はどんどんアップデートするから、新しい時代のフィルターで盛っていくべきだと思うの、うちらのライフ、人生は。私たちが生きてるのは過去でも未来でもなく、今なわけ。私たちが戦う、生きるべきフィールドはここなわけ」
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kemioさん=2019年2月、ニューヨーク
Santiago Felipe via Getty Images

若者から人気の高い動画クリエイターkemio(けみお)さんが10月10日、Twitterを更新し、「その時代のフィルターじゃ今のウチらは盛れないの」とメッセージを添えて動画を投稿した。

足立区の白石正輝区議の「同性愛が広がると足立区が滅んでしまう」という趣旨の発言について、「時代はどんどんアップデートするから、新しい時代のフィルターで盛っていくべきだと思う」と感想を語ったもの。相手を強く非難はしないが、しっかりと自分自身の考えを主張するkemioさん流のメッセージに、共感の輪が広がっている。

 

「時代はどんどんアップデートする。私たちが生きるべきフィールドは、過去ではなく今」

動画は、前日9日に公式YouTubeに投稿した『その時代のフィルターじゃ今のウチらは盛れないの』という12分の動画を短く編集したもの。

「L(レズビアン)とG(ゲイ)が足立区に広がってしまったら、足立区民がいなくなってしまう」という白石区議の発言を報じるニュースを携帯で見たというkemioさん。

「(レズビアンやゲイが)ウイルスみたいな言い方してるけど、大丈夫そう? ていうか『まだそこ?』と思ってしまった」と振り返る。

「私たち人間て、生きてきた時代や見てきたものが違うから、時代ごとのフィルターが絶対あると思うのね。でも、『そのフィルターは今の時代には盛れてないの』っていつも思うの」

「時代はどんどん進化するし、どんどんみんなが生きやすい世界になってほしいし、そうなるべきだし、そうなるって信じてる」

さらに、LGBTQに対する偏見にも、「もしかしたら年代が上の先輩には、セクシュアリティの問題やヒューマンライツ(人権)の問題は理解できないというか、ちょっと分からないと思うところがあるのかもしれない」と一定の理解を示し、こう強調した。

「時代はどんどんアップデートするから、新しい時代のフィルターで盛っていくべきだと思うの、うちらのライフ、人生は。私たちが生きてるのは過去でも未来でもなく、今なわけ。私たちが戦う、生きるべきフィールドはここなわけ」

無知を責めるのではなく、会話で理解を広げよう

kemioさんは、エッセイ『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』の中で、ゲイであることを公表した。

YouTubeのロングバージョンの動画の中では、家族にカミングアウトをしたときのことについても語っている。

祖父母は自分のカミングアウトに対して「いい印象はなかったかもしれない」としながら、「それでいい」と強調した。

「自分の身の回りにLGBTQIA+の方がいないと、そういう環境で育ってきてない、そういうことを勉強してきてない、そういう方と触れ合ってきていないと、分からないからそういう気持ちになってしまうのも(分かる)。『罪は無知(無知は罪)』みたいにキツイ言葉をバンとぶち投げるみたいなこともできないんじゃないかなって思うの 」

そのうえで、無知であることを責めるのではなく、身近な人とセクシュアルマイノリティーについて気軽に会話をすることが、社会全体の理解を深め、世界を広げることになると訴えた。

「だからこそ、みんなで会話をしたり話したりすることがすごく大切になってくると思うの」

「身の回りの人と『どう思う?』とか『私はこういう考えがあるよ』と意見のシェアをしていくことが、社会が変わっていくのにすごく大切なことだと思う」

 

「自分のセクシュアリティに悩む子どもが聞いたらどう思うのか」

YouTubeの最後には、2分ほど別のタイミングで撮影したと思われるコメントが「追加」されている。

その中で、kemioさんは、「LとGが広がったら」という白石区議の懸念について、「そうじゃないと思う」と指摘した。

「セクシュアルマイノリティの人たちはどんどん増えてきてるのではなくて、少しずつ時代が温かい目になってきたり、みんなが会話するようになってきたり、いろんな企業がサポートするとか、そういうのでどんどんムーブメントが大きくなり、今まで自分の気持ちをオープンにできなかったセクシュアルマイノリティの人たちが徐々にオープンになってきて、いろいろな人たちの目に触れる場所に出てきた」

動画の中で「セクシュアリティやアイデンティティに対する葛藤があった」と告白しているkemioさん。本当の自分について伝えたいが、厳しい視線や言葉を浴びせられるんじゃないかと不安に感じたこともあったいう。

そうした中で、区議の発言がセクシュアリティについて悩みを抱える子どもたちに与える影響についても心配した。

「自分のセクシュアリティの悩みを抱えてたり、葛藤してたり、どうしようって思ってるもっともっとちっちゃい子供とか学生とか、まだ自分の声を大にして意見を言えない、どうすればいいのか分からない子供がいっぱいいると思うの」

「(自分が)学生だった時は、周りにそういう話をできる人もいなければ、アドバイスをもらったり、学ぶ環境や授業もなかったし、どうすればいいのか分からないってずっと考えてた。そういう子供が、ああいう発言をテレビとかを通して聞いたらどう思うのかなって思ったの」

 

白石区議は白石氏は9月25日の区議会一般質問で「LだってGだって法律で守られているという話になれば、足立区は滅んでしまう」などと発言。「差別的な発言」「議員辞職すべき」という声が上がっている。

kemioさんの動画に対しては「気づきをありがとう」「これから先傷つく人が1人でも減りますように」など共感の声が広がっている。