池袋暴走事故、車に異常はあったのか。メーカーの事故解析担当が証言【第6回公判・詳報】

弁護側はこれまでに、経年劣化によって「電気系統のトラブルでブレーキが利かなかった可能性は否定できない」と訴えている。
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高齢男性が運転する乗用車が暴走し、歩行者や自転車をはね親子2人が死亡した交通事故で、現場に残された自転車と事故車両=2019年4月19日、東京都豊島区東池袋
時事通信社

東京・池袋で2019年4月、車を暴走させて母子2人を死亡させ、他9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告の第6回公判が3月3日、東京地裁(下津健司裁判長)であった。

この日は、警察の実況見分に立ち会った、飯塚被告が運転していた車両のメーカーの事故解析担当者に対する証人尋問が開かれた。

弁護側はこれまでに、経年劣化によって「電気系統のトラブルでブレーキが利かなかった可能性は否定できない」と訴えている

メーカーの担当者は検察側の主尋問で、被告車両の故障記録が診断機で読み出せたことを挙げ、故障を検知するシステムが正常だったと指摘。

故障記録について「車両の損傷状況と一致する」と述べ、不具合によるものではないと証言した。

その上で「仮に異常が発生した場合も、安全に走行できるよう設計されている」と主張した。

弁護側は意見書で、部品の経年劣化やショートによる不具合の可能性を指摘したが、メーカーの担当者は「部品交換の必要性があれば警告やシステムが検知する」と否定。

弁護側の反対尋問では、電気信号のノイズにより誤動作を起こした可能性を追及されたが「おかしな信号があれば検知できる」と証言した。

時事通信が報じた起訴状の内容によると、飯塚被告は2019年4月19日、ブレーキと間違えてアクセルペダルを踏み続け加速。赤信号を無視して横断歩道に進入し、松永真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃん(同3)をはねて死亡させたほか、9人に重軽傷を負わせたとされる。

次回の公判では、飯塚被告に対する被告人質問が開かれる予定。

被告人質問「全て漏らさずに聞いて」

亡くなった松永真菜さんの夫拓也さんらはこの日も、被害者参加制度を利用して審理に参加。公判終了後、司法記者クラブで記者会見を開いた。

拓也さんは被告人質問の機会について「2人がどれだけ大切な命だったのか、未来があったのか、この2年どんな思いだったのか、全て漏らさずに聞いてもらいたい」と訴えた。

松永さんの父親、上原義教さんも「娘たちを奪われた悔しさと悲しさをどこにぶつけたらいいかわからなくて、裁判に参加しています」と述べた。