「フラワーロス」の課題が急浮上。業界における新たな発信と取り組みとは?

実は、フラワーロスはコロナ禍に始まったことではなく、その原因は花業界の構造に内在していたという。
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12月、フラワーライフ振興協議会が三菱地所と協働し、丸の内・丸ビルと新丸ビルで展示したインスタレーション「Marunouchi Flower Flash」より。廃棄される花を活用している
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卒業式、入学式、ハロウィンやクリスマス――。コロナ禍によって多くのイベントが自粛される中、需要低迷で花が廃棄されてしまう「フラワーロス」という課題が急浮上した。実は、フラワーロスはコロナ禍に始まったことではなく、その原因は花業界の構造に内在していたという。課題に注目が集まる今、業界各社は新たな発信と連携で解決を促している。若者が集まる「ラフォーレ原宿」のクリスマスの装飾テーマは「街に咲くロスフラワー」だ。課題をチャンスと捉えて販売促進に生かす生花店もある。各社と業界団体の最新の取り組みを聞いた。(いからし ひろき、サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

全館を「ロスフラワー」で装飾し課題発信:ラフォーレ原宿

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装飾はすべてドライフラワー
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都心のファッション・ビル「ラフォーレ原宿」は2020年のクリスマスシーズン、サステナビリティをテーマに据え、捨てられるはずだった花を活用した装飾「街に咲くロスフラワー」で全館を飾っている。「新型コロナウイルスの影響により、思い通りにならない事も多かった2020年を明るい気持ちで終えるために、ささやかながら、ラフォーレ原宿にお越しいただいたお客様に少しでもあたたかい気持ちに」と発信する。

装飾を手掛けたのは廃棄になる花に焦点を当てて空間装飾やプロデュースなどを事業とするRIN(東京・渋谷)だ。同社代表はフラワーサイクリスト、河島春佳氏。期間中はラフォーレ原宿で限定ショップ「Flower Cycle Shop」をオープンし、花や同社アンバサダーのフラワーサイクリストが制作したアイテムなどを販売している。

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 「初めて手元にロスフラワーが届いたとき、水に浸けると見事に咲いて、『捨てられる花も、まだ咲けるんだ』と花の力に感動しました」と話すのは、アンバサダーの一人でフラワーサイクリストの中村佳世さん。以来、茨城県などの花農家を足繁く訪れ、廃棄される花について学んだ。今回のラフォーレ原宿での装飾や、販売する作品づくりにも携わる。

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中村佳世さん
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中村さんが利用するのは、市場の規格外のため廃棄される花や、需要に対して多く作ったために捨てられる花。「ロスフラワーと通常市場に並ぶ花に、­­大きな違いを感じない」という。特にリースや装飾に利用する場合、例えば「茎が短い」という規格外な点は「扱いやすさ」や「作品の着想」という、むしろメリットになる。ドライフラワーに加工すれば、その違いは「ほとんどない」。

ロスフラワーの存在はまだ十分に知られていない、と中村さんは話す。限定ショップを訪れた客に課題を話すと、「そうなんですね」「こんなにきれいなのに」と驚かれるという。「ありがとうございます、と言われたりもしました。まずは課題を知ってもらい、廃棄という言葉から受ける負のイメージが変われば」とラフォーレ原宿からの発信に期待を込める。

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 華道師範でもあり、幼稚園教諭でもある中村さんは普段、ロスフラワーを活用した親子造形教室「はなあそび」を主催している(中村さんのinstagramはこちら)。

「色んな子どもがいるように、花にも色んな花がある。それでいいんじゃないかな」(中村さん)

「チャンスフラワー」格安販売、培養土への再利用も

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茎が曲がっているだけで花はきれい
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廃棄される花を「チャンスフラワー」と呼び「花ロス」根絶に寄与しているのは東京都港区虎ノ門に店舗を構える生花店「hanane (ハナネ)」だ。

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hananeの石動力代表
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「規格外の花は全生産量の2〜3割を占めます。そのうち、花自体はとてもきれいで、ご自宅で楽しむのに何の問題もないものをチャンスフラワーと名付け、市場を通して農家から買取り、1本100円で販売しています。花の廃棄が減ると同時に、お客様にとっても手頃な価格で花を楽しめるメリットがあります」(石動 力・hanane代表)

石動さんが規格外の花に目を向けるようになったのは、10年以上前に生花アレンジの修業のための訪れたドイツでの経験によるところが大きい。

「ドイツでは花を日常的に親しむ文化が根付いていて、それこそ主婦がスーパーで食材を買ったついでに花も買って帰るという光景が当たり前です。それを見て、日本人の生活にもっと花を根付かせる取り組みができればと思ったんです」

帰国後、1年ほどは花の業界で働いたが、「花の文化を広めるにはビジネススキルが必要」と、花とは全く関係ないベンチャー企業に就職。そのまま10年経った頃、出会ったのがチャンスフラワーだった。

そして2019年6月に「hanane」をオープン。一般の生花を販売する傍ら、火曜日と金曜日(2020年12月より月曜日・木曜日)に「花つみ」と銘打ってチャンスフラワーの店頭販売を行う。協力店や催事も増え、取扱量は開始した昨年6月が700本/月のところ、今年6月は9000本/月と大幅に伸びている。

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1本100円で販売
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実は国内の花の生産・消費は低迷している。農林水産省の調べによれば、花の産出額は平成10年をピークに下がり、平成23年からは横ばい。消費についても、特に切り花の購入金額は平成7年をピークに右肩下がり。このままでは、国内の生産農家が窮地に追い込まれてしまうのは目に見えている。

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農林水産省「花きの現状について」(令和元年12月)より
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農林水産省「花きの現状について」(令和元年12月)より
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「一年に一回でもいいから自分のために積極的に花を買うという人は20%程度。一方、花には全く興味がないという人も20%います。残りの60%は、積極的ではないが、もらったら嬉しいし、きっかけがあれば買いたいという人たち。そういう人たちは、花に触れる機会が増えれば積極的に花を買う20%の方になるはずです。そのきっかけに、チャンスフラワーがなってくれればと思っています」

しかしそれでも売れ残ったものはどうするのか。実は石動さんの頭には、当初から「花のリサイクル」という考えがあったという。

「肥料として再利用するには、受けなければいけない検査がたくさんあります。花の種類によって肥料にできない場合もあって難しいのですが、ある程度まとまった量があれば、培養土として土に戻すことができます。本当は廃棄をゼロにすべきなのですが、花は生ものなのでどうしても消費期限があります。だからせめて土に帰り、それが生産農家の元に行くという循環の仕組みができればと思っています」

潜在していた課題、コロナ禍で急浮上

「フラワーロス」課題には、従来の花業界の構造と、コロナ禍による需給バランスの一時的な崩壊という2面がある。花業界のサプライチェーンに着目し、流通のロスを削減することをライフワークにしているという松村吉章・フラワーライフ振興協議会会長はそう説明する。松村氏は富山を拠点に花卉事業を展開し創業146年を迎えた、ジャパン・フラワー・コーポレーション(富山・射水)の代表でもある。

松村氏によれば、花業界はもともと、プロダクトアウト型の構造をしている。生産者が花をつくれば、つくっただけ農協や市場が買い取り、卸業者を通して小売業者が消費者に売ってくれる、という考え方だ。

その中で、農協や市場の規格に沿わず出荷できない「規格ロス」、多段階の流通過程を経ることによってマージンが膨らむ「マージンロス」、それと同時に、いつ来るかわからない注文に対して小売業者が在庫を多く準備することによる、花の「鮮度ロス」と多段階のロスが起こる。特に過剰入荷によるロスは業界全体の出荷数の3割にもなるという。当然、ロス分の損失は花の売価に上乗せされ、需要を減らしてしまう。

「プロダクトアウト型から、マーケットイン型へイノベートしなければならないと考えています」と松村氏は話す。注文を受けてから花を流通させる、というように需要ありきの仕組みが洗練されれば、花屋も店頭販売が必要でなくなる可能性があるという。そして生産者から少ない行程で消費者に届けば、それだけ花の鮮度が保たれ、マージンロスと鮮度ロスを大幅に削減することにつながる。

「そのような仕組みをつくることは、花業界の自己否定をはらんでいて、ジレンマがあります。しかし、自己否定をしてでもイノベートを起こすことが重要なのではないかと考えています」(村松氏)

例えばシクラメンは12月から咲き始め、管理が良ければ5月まで咲き続ける。鮮度が高い状態で早く家庭に届けば、それだけ長く楽しめる。つまり消費者にとって花のコストパフォーマンスや絶対価値そのものが上がる。そうなるとリピーターが増え、需要が増大し、ロスが少なくなる。

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フラワーライフ振興協議会のインスタレーション「Marunouchi Flower Flash」より
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「企業でも、サブスクリプションサービスで安価に花を導入していただければ、と動き始めています」と松村氏。従業員のフロア人数分の花を毎週定額で届ければ、週末には1人1輪の花を家庭に持ち帰ることができる。花のあるオフィスが従業員満足度を上げ、社会的な評判、企業価値を上げることにつながるというわけだ。

RINのアンバサダー、中村さんやhananeの石動代表、フラワーライフ振興協議会の松村会長、それぞれのアプローチで廃棄される花を減らす取り組みを進めている。共通して訴えることのひとつは、「花がある生活」の豊かさや、人に癒しを与える「花の力」だ。消費者一人ひとり、そして企業単位でも改めてその力に気付くことが、大量の廃棄を削減することにつながる第一歩だろう。

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