いちからわかる「つみたてNISA」。FPがおすすめする2つの理由とは?投資初心者こそ「目的」をイメージしよう

投資初心者のための「お金のきほん」【第5回】。よく聞く「つみたてNISA」と「iDeCo」の違いを理解しよう。

「お金について考えよう」と言われたら、どんな気持ちになるだろう。増やすための投資・NISA・iDeCo…。聞いたことはあるが、何から手をつけるべきなのかと迷う人は多いはず。そこでファイナンシャルプランナー(FP)の高山一恵さんに、初心者向けの「お金のきほん」を聞いた。連載第5回は、「つみたてNISA」について学ぶ。

 

■「つみたてNISA」とは

こんにちは、FPの高山一恵です。連載の前回で、投資の初心者が押さえておきたい3つのポイント――「長期投資」「国際分散投資」「積立投資」について説明しました。

理屈は何となく分かったけれど、具体的にどう実践したらいいのか分からないという人も多いと思います。でも、安心してください。少額からの長期・分散・積立投資を支援するための税制優遇制度があります。それが今回取り上げる「つみたてNISA」です。

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「つみたてNISA」口座数の変化
HuffPost Japan

投資をした経験がないと「税制優遇」といわれてもピンと来ないかもしれませんね。運用した結果として得られた利益に対しては原則、20.315%の税金が課されます。つまり、100万円のもうけが出ても、そのうち約20万円は税金として差し引かれてしまうわけです。

「つみたてNISA」は、毎年40万円まで投資でき、その運用益に対して最長20年間は税金が一切かからないというお得な制度です。銀行や証券会社で、専用の口座を開設することで始められます。

さらに、投資初心者にお勧めできる理由が2つあります。

1つは、金融庁が定めた基準を満たす、長期で安定的に資産を増やしていくのに適した投資信託商品(一部、上場株式投資信託=ETF)がラインアップされているところです。

投資信託とは、顧客(投資家)から集めたお金を、運用のプロであるファンドマネジャーが分散投資していくものですが、現在は6千本以上の商品が売られているといわれます。なかには運用にかかる手数料などが高額だったり、リスクが大きかったりするものもあります。「つみたてNISA」の場合は、金融庁のスクリーニングが入って約200本(2021年10月現在)に絞られているため、安心感があります。

もう1つは、月1000円などの投資額からでもチャレンジできることです。ネット証券会社なら月100円から始められるところも。「投資は損をしそうでどうしても怖い」という人は、超少額で試してみて、慣れてきたところで金額を上げていくのも手でしょう。

ただ、100円~数千円だと投資効果が感じにくいのは確か。ある程度の手応えを得たいなら、私は最初の半年~1年は「月1万円」で設定しておき、様子を見ながら増やしていくのをお勧めしています。

 

■銀行? ネット証券? 金融機関の選び方

いざ始めようとすると、金融機関選びで迷ってしまう人も少なくないようです。

「つみたてNISA」の場合は制度上、商品の売買手数料などは無料です。口座開設も無料でできるので、コスト面で金融機関による差は全くありません。一度設定してしまえば、あとは毎月自動で積立投資されていくので、使い勝手も大差ありません。

差が出るのは「品揃え」。SBI証券や楽天証券などのネット証券会社では、「つみたてNISA」の対象商品のほとんどがラインアップされていますが、対面型の銀行や証券会社では10本程度以下と非常に絞られている場合が多いです。

したがって、これから投資についてもっと勉強したいという意欲があって、多くの商品の中から比較・検討して選び抜きたい場合には、ネット証券会社で口座を開いたほうがいいでしょう。

一方、「選択肢が多過ぎると決められない」「あれこれ検討するのは面倒なので、無難なもので構わない」という人は、対面型の銀行や証券会社のほうがいいと思います。

給与振込で日ごろから使っている銀行なら、その口座を「つみたてNISA」の引き落とし口座に設定できるため、始めるハードルはより低くなりそうです。

 

■「iDeCo」と「つみたてNISA」では目的が違う

よく並べて語られる制度に「iDeCo」(個人型確定拠出年金)があります。「つみたてNISA」と同様、運用益に対して税金がかからないことに加え、掛金が全額、所得控除(税金がかかる対象になる「所得」から一定額を差し引けるので、納税額を抑えられる)になるなど「節税メリット」がより大きくなっています。

ただこちらは、基本的に60歳まではお金を一切引き出すことができないので注意しましょう。あくまで老後資金づくりを目的とした制度だからです。

つまり「なぜ投資をしたいのか」を考えたとき、老後資金の準備をしたいというのが明確なら「iDeCo」のほうが有利。老後のことを意識しつつも、60歳より前のライフイベントに備えたい希望もあるのなら「つみたてNISA」のほうが向いています。節税効果が大きいから「iDeCo」のほうがいいなどと、単純に結論付けられるものではありません。

また、そもそも「長期・分散・積立」では、短期間で大きな投資効果を得ることを目指していません。「投資によって毎月数万円以上のお小遣いがつくれるようになったらうれしいな」などとイメージしている人は、ゆくゆくは株式投資などにも目を向けていくべきでしょう。

お金を貯めるときはもちろん、投資で増やしていくときにも「何のために、どれだけの資金を準備したいのか」をイメージしておくのが失敗しない秘訣です。

(取材・文:加藤藍子@aikowork521 編集:竹下由佳@kuboyu318

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高山一恵さん
高山さん提供

高山一恵さんプロフィール

Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWebメディア「FP Cafe」や「Mocha(モカ)」を運営。全国での講演活動、執筆・相談業務も行う。著書は『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『はじめてのNISA &iDeCo』(成美堂出版)など。