羽生結弦、フリーで逆転なるか。滑走順・曲・演技構成は? 冒頭から4回転アクセルの偉業に挑む【注目ポイント】

首位ネイサン・チェン選手との差は18.82点。フリーの楽曲「天と地と」にのせ、羽生結弦選手は前人未踏の「4回転半ジャンプ(4回転アクセル、クワッドアクセル)」に挑む。
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羽生結弦選手(2021年12月26日、全日本選手権で撮影)
Xinhua News Agency via Getty Images

五輪3連覇に挑む、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手。

2月8日のショートプログラム(SP)では、冒頭で4回転サルコーを飛ぶはずだったが、氷上の穴にスケート靴の刃がはまって、1回転になる失敗。その後は、ジャンプ、スピン、ステップいずれも完成度の高い演技を見せたが、冒頭の失敗は大きく響き、95.15点で8位となった。

ソチと平昌で、羽生選手はSPで首位をキープしたままフリーに挑み、金メダルを手にした。しかし今大会、首位のネイサン・チェン選手(アメリカ)とは18.82点と大きく差が開いている。

羽生選手は、フリーで前人未踏の「4回転半ジャンプ(4回転アクセル、クワッドアクセル)」に挑む。

 

滑走順は? 10日午後1時14分に登場

フィギュアスケート男子フリーは日本時間の2月10日午前10時過ぎから始まる。羽生選手の滑走順は第3グループで17番目、午後1時14分ごろに登場する予定だ。

日本ではNHKで中継される

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北京五輪でショートプログラムに挑んだ羽生結弦選手(2022年2月8日撮影)
WANG ZHAO via AFP

楽曲は「天と地と」。琴や琵琶の音色にあわせた華麗なステップ

羽生選手が今季のフリーのプログラムで使用している音楽は、1969年放送、上杉謙信の半生を描いたNHK大河ドラマ「天と地と」のテーマ曲。

作曲は、2016年に亡くなった冨田勲さん。日本人として初めてアメリカの音楽賞「グラミー賞」にノミネートされるという偉業を成し遂げた、世界的作曲家・シンセサイザーアーティストだ。

羽生選手は、自身と上杉謙信の共通点について、「戦いへの考え方、美学というか、悟りの境地のようなところまでいった上杉謙信公の価値観とちょっと似ているのかな」と語っており、音楽への思い入れも強い。

「天と地と」は雄大で勇ましい1曲で、琴や琵琶の音色にあわせた、身体を大きく使った振付や華麗なステップが取り入れられた。SPとはまた一味違う、フリーならではの力強い演技を見ることができそうだ。

 

プログラム構成は? 冒頭から「4回転半ジャンプ」に挑む

羽生選手のプログラム構成は以下の通り。

1. 4回転アクセル

2. 4回転サルコー

3. トリプルアクセル+トリプルループ

4. トリプルフリップ

5. フライングチェンジフットコンビネーションスピン

6. ステップシークエンス

7. 4回転トウループ+トリプルトウループ

8. 4回転トウループ+シングルオイラー+トリプルサルコウ

9. トリプルアクセル

10. コレオシークエンス

11. フライングチェンジフットシットスピン

12. チェンジフットコンビネーションスピン

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フリーの演技時間は約4分間。その冒頭に「4回転半ジャンプ」が組み込まれている。

自身も、公式試合でいまだ成功させたことはない。アクセルは、フィギュアスケートの6種類のジャンプのうち唯一前向きに踏み切るジャンプで、その特別さ、難しさから「王様のジャンプ」とも呼ばれる。

羽生選手は4回転半ジャンプを「最終目標」として位置付け、2018年に平昌で金メダルを獲ったあとに、本格的に取り組むことを宣言した。

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昨年末の全日本選手権では優勝し、笑顔を見せた(2021年12月26日撮影)
時事通信社

カメラの前で初めて4回転半ジャンプを見せたのは、2019年にトリノで行われたグランプリファイナルの公式練習でのことだった。この時、構成には4回転半ジャンプは入っていなかったが、練習でチャレンジ。「ただ練習していただけ」だというが、それ以来、いつ本格的に演技に取り入れられるのか注目が集まっていた。

そして2021年12月に、北京五輪の内定を決めた全日本フィギュアスケート選手権大会のフリーで、公式の試合で初めて4回転半ジャンプに挑戦した。

着氷するも、両足となり、さらに回転が足りないと判定され成功にはならなかったが、完成形に近づいていることは明らかで、大きな一歩だった。

五輪のフリーでは、4回転半ジャンプのほかにも、4回転ループ、トリプルアクセル+トリプルループのコンビネーションなど難度の高い演技が多く取り入れられており、より高い基礎点をとりにいく狙いが見られる。

 

点差18.82 覆せるのか?

SP時点での順位は以下の通り。

1. ネイサン・チェン(アメリカ):113.97(技術点65.98、演技構成点47.99)

2. 鍵山優真(日本):108.12(60.91、47.21)

3. 宇野昌磨(日本):105.90(59.05、46.85)

4. 車俊煥(チャ・ジュンファン)(韓国):99.51(54.30、45.21)

5. モリス・クビテラシビリ(ジョージア):97.98(55.69、42.29)

6. ジェーソン・ブラウン(アメリカ):97.24(49.95、47.29)

7. エフゲニー・セメネンコ(ROC) :95.76(55.23、40.53)

8. 羽生結弦(日本):95.15(48.07、47.08)

羽生選手と首位のチェン選手との点差は18.82と大きく開いており、これを覆すのは並大抵のことではない。チェン選手も、2位の鍵山優真選手も、3位の宇野昌磨選手も、羽生選手への憧れを口にしてきた。SPでは安定感のある滑りでそれぞれの世界を表現した。

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10日のフリーに向け練習に励む羽生結弦選手(2022年2月9日撮影)
時事通信社

羽生選手は、SP後の報道陣とのインタビューで、「練習としてはしっかり積めている。演技に関してはすごく自信のある状態になっていますので。あとはもう神のみぞ知るというか」と、フリーに向けた心境を明かした。

羽生選手はこれまで、SPで大差をつけられてから、フリーで強さを見せメダルを獲得したことがある。2017年の世界選手権では、SPで首位と10.66点差のついた5位からフリーに挑み、逆転優勝を果たした

勝負の鍵を握るのは、4回転半ジャンプ。羽生選手はそれを「みんなの夢」だとも語っている。