政治アカのフォローは就活に不利。 都議選候補予定者が若者の解説に「そりゃ政治離れするよ」

「そりゃ政治離れするよ」と嘆く溝口さんが、若者とネット選挙について語った。
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AFP時事

政治アカウントをフォローすると就職活動に不利になる。

こんな若者の意見を聞いたと紹介するツイートが話題になっている。投稿したのは、2016年の都議選補選(大田区)に無所属で立候補した写真家の溝口晃一さんだ。

溝口さんは7月2日に投開票される都議選にも無所属で立候補を予定している。この会話があったのは、駅前での街頭演説後に、街で遭遇した出来事だとハフィントンポストの取材に答えた。

「そりゃ政治離れするよ」と嘆く溝口さんが、若者とネット選挙について語った。

——ツイートの出来事があったのは、どんな状況でのことですか?

4月中旬、選挙区内の駅前で演説した後、喫煙エリアにいた数人の方に「うるさくして、すみません」とご挨拶して帰ろうとしたときの話です。数人のグループの若者に声をかけました。

若者たちは「いいっすよ、別に」と目をそらしましたが、「政治に興味ありませんか?」と声をかけて、グループの3人と話しました。

雰囲気的には「関わりたくないなぁ〜」という感じでしたが、それはいつものことなので「ちょっと、若者の意見を聞かせて欲しいのですが」と切り出しました。

「昨夏の都知事選挙に行ったか」「小池都知事をどう感じるか、好きか嫌いか」「豊洲問題をどう思うか」「学生さんなら、給付型奨学金制度の充実が必要だと思うか?」といったことを尋ねました。

全員投票に行ってませんでしたし、小池知事には良くも悪くも感じていなく、豊洲はわからないけど無駄遣いならやめて欲しい、五輪施設にカネを使うなら節約して欲しい、奨学金に回して欲しいよね、といった感じの回答でした。1人は有名大学の学生らしいことがわかりました。

会話中、1人はスマホをいじりながらの対応でしたので、「お、ツイートですか、良かったらフォローして下さい。Facebookもしていたら繋がって下さい」という会話をした答えが、ツイートで書いた「ごめんなさい、政治アカウントの人とは繋がれません」でした。

「色が付いていると思われるのは困る」「政治に関わってSEALDsみたいな人たちと一緒に見られたくない」というのは、実は前々から街頭や撮影先の大学などで聞いていましたので、その時は、特別だとは思いませんでした。今、沢山のリツイートが続いているので、内心みんな「おかしいよな」と思っているんだろうなと思いました。

——「政治的な意見を表明することが就活に悪影響になる」問題についてどうお考えですか?

私も経営者でしたから、多少の「色が付いている」は理解しますが、デモに出て捕まって社名まで出てしまうような行為をしそうな人なら、遠慮するでしょう。

今は、JCや商工会などの小規模商業者の集まりでも自民党推しをするか、無関心を装うかしないと、どこでどう取引に関わることで理不尽な目に合うかわからないから、と警戒しているように見えます。

中小零細企業は、景気が悪くなってからの一強の政治になって、定期的に仕事のあるところは「官」であることから、取引上の上流に「官」の影がある事業なら、非政権側にいるとは思われたくないと思うのが当然ですし、そのような従業員を抱えていると思われたくないのも理解します。

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支持者と握手する安倍晋三首相(イメージ写真)

なんとなく監視されている社会のようで、出来うる限りの不安要素は取り除きたいというのが、透けて見えます。

代議士選挙が中選挙区制度の頃は、同じ自民党でも違う候補を推しても「同じ自民だから」と許されている面があって、おおっぴらに支持を表明していた人もいたように思いますが、今は、どちらかしかないので、表明には覚悟がいるのではないでしょうか。

——ネット選挙についてのお考えも表明されています。ネット選挙の行方について、お考えをお聞かせください。

これは、難しいですね。

ネットツールでも、匿名のものと実名のものとでは、反応がかなり違うことが実感されます。

相手にも実名を求めるFacebookのようなモノは、若者にとっては使用ハードルが上がってきてしまったツールになったのではないでしょうか。

企業の就活もFacebookを使うとなると、当然、採用担当者とも繋がりますから、過去の発言やリンクしているTwitterなどから「調べようとすれば」手繰れてしまいます。

今は、そういったことも理解して学生は「就活用アカウント」を作るそうですが、複数アカウントを持っていてもバレる時はバレますから、政治に関わることが企業から見て「負」であるなら、この状態は続くでしょう。

Twitterも同様で、繫がりが見える以上、同様です。

ただし、フォロワーも友達がいないような匿名性の高いアカウント(裏垢と言うらしいです)であれば、政治的アカウントに繫がり、日頃の政治的不満を発するでしょうし、繋がって下さるでしょう(それらが、ネトウヨなどになっている気もします)。

そこから、(特別に調べない限りわからない)立候補者のホームページなどの閲覧に持ってくる状態になれば、ネットは選挙で有効なツールと思えます。

本来なら、第三極勢力や無所属系の方々は、こういった流れでネット選挙が出来るのではないか、と期待されていました。

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イメージ写真

——組織力がない候補者でも、優れた政策などを武器に「ネット選挙」で多くの支持を集めることができるという期待ですね

しかし、見えてきたのは、ネットによる公開性がもたらす弊害の方でした。

候補者にとっては、選挙中も公開するわけですから、当然、告知なども丸見えでして、駅前街頭をするなら「発信する前」に場所取りをしなくてはいけなくなりました。告知をすると、その場所に他陣営も場所取りをしに来たりするわけで、完全にスパイツールとなってしまうのです。

組織力のある大政党には、告知が出来ても、ボランティア主体の資金力のない陣営には、それは難しくなります。

同様にFacebookから支援者になっているような人を「友達」から手繰って、ライバルの支持者に対して個人への重点的な働きかけができるようになります。

ネット上で「公開、丸見え」状態とは、繫がりも見えてしまい、よほど強い意志で支援をしている人ではない限り、他陣営からの誘いなどがあると危険性を認知してFacebookを止めて離れていくのです。

選挙前には同窓会などが必ずあり、そこで急に繫がりが増える人が多いでしょう。それで、周りに政治家が出てくると、潮が引いたようにネット活動を控える人が増えます。

——若者に限らず、ネット上で選挙活動を支援したり、意見表明したりするにはリスクがあるということですね。

また、ネット選挙コンサルタントなどは、選挙区でもない人の多数のフォロワーを有するTwitterアカウントを抱えています。しかし、それらは参議院全国区以外は、使い物にならないこともわかりました。

フォロワーは選挙区の名簿と同じで、有効な選挙区内住民のアカウントを集められない限り、意味はありません。ただ不特定に広く知られるためだけであれば、ネットでの表示や意志発表は選挙掲示用ポスターとビラの電子版程度でしかないのかも知れません。

ビラは受け取ってもらえなければ、見てもらえません。それと同じく、ウェブサイトも見に来てくれなければ、政策も主張もプロフィールもわかりません。

ネットで見るというのは、能動的です。その能動的行動を乗り越えて投票して下さる人たちと、かたや人海戦術で、人の手で「選挙ハガキに紹介する人を書いてくれ」「動員があるから、会場に来てくれ」「取引のついでに投票してやってくれ」と頼まれた、非自主的投票固定票数を確保する陣営と、どちらが多いか、より強いのか。おそらく、まだまだ後者なのではないでしょうか。

そうするとネット選挙は、あくまで「しがらみのない」いわば、地域や候補と繫がりのない浮動票に対しての呼びかけのみの補完ツール以上にはなり得ないのではないか、という疑問がわきます。

加えて、ネットを見る時間が普通の有権者にどれくらいあるのだろうか、という素朴な疑問と、少ない余暇時間を投票を義務とも教育されなかった、政治を考えることが大事だと身につけてこなかった有権者が、果たして、わざわざ見てくれるのだろうか、という「根本的な問題」に突き当たるように思います。

——組織力がない候補者を知ってもらうのにはネットがあっても難しい。

リアルで簡単なのは、選挙前に選挙公報を投票券と同封して送るということでしょう。このくらいのことをしなければ、そもそも候補者が誰なのかさえ、投票前に知ってもらえていないと思います。

現在の選挙制度でネットツールを使っても、政治アカウントが忌避されるなら、無名の候補者そのものを知ってもらうのはかなり難しくなってしまいます。すると、宣伝能力の高い組織を持つ方には敵わないのではないでしょうか。

だから、未だにタレント候補を挙げようなどという政党がありますし、現職都議の多くがテレビ局のディレクターなどを紹介してくれ、とテレビ番組に出演を熱望するのだと思います。

きっと、ネットによる選挙参加そのものの熱がさめてきたことと、加えて、社会的閉鎖性のある日本の中で、公開されているネットの世界は、自己保身のために匿名で特定されない自由発言空間でなければならないのでしょう。そこへは、自己の責任を持って実名で入ってくる者は、社会ストレスの生け贄になってしまう現実があるからこそ、忌避せざるを得ないのではないでしょうか。

それは、「自分が誰に投票したか他人に知られない権利」という最後の身を守るべき砦をネットに壊されたくないからではないかとも思います。

匿名と公開に親和性がないことと同じで、秘密投票を主とする選挙の中で、候補側にだけ情報発信責任を強いることは、民主主義を育てないことなのだと思います。

そのために中立機関である選挙管理委員会に対しては、公平公正に匿名性のある有権者全員に候補者の有り様を知らせなければならない義務を負わせるべきなのだと思います。そうすることによって、初めてネットでの選挙活動というものも活きてくるように思います。

——就活や若者に限らず、日本では以前から社交において「野球と政治と宗教の話はタブー」というような「定説」もあり、政治の話は避けるべきだというムードが支配的です。こうした「文化」をどう考えますか?

あまり良い文化だとは思えません。それは、相手の立場で考えて、相手を尊重するという文化を、本当は育ててこなかったのではないかと思います。

例えば、議論にならずにケンカになってしまうとか。また、取引上の便宜だとか、談合入札だとか、組織が政治に積極的に関わる理由には、実は後ろ暗いこともあって「知らない方が身のため」という心理が働くのではないでしょうか。

今後の日本にとっても、あまり良い文化とは思えません。

日本の労働環境も「人を育てる」から「育ったモノを壊れるまで安く使う」という方向に舵を切ってしまったと思いますので、どこかで戻さない限り、保身のために口をつぐむ人たちが増えて、より自由にモノが言えなくなる世界になってしまうのかな、という危惧があります。

そんな中で、同調圧力が強い特性を持つ日本人ですので、人と違うことをするのは、ギャンブラーに近い扱われ方なのかもしれません。

ギャンブルみたいなことでお金を稼いだ人を、日本では蔑みますが、あれと同じようなモノが政治家と見られているのかな、と思います。

だから、きっと世界標準で見ても高い報酬と落選したら即ホームレスくらいのリスクがあるのでしょう。これで尊敬される職業とするのは、難しいです。

子どもたちにも良い影響とは思えません。世界の人種が集まる国のような多様性を体感しないと、こうなってしまうのかな、と思います。

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社会貢献のためウォールストリートを去った8人の若者
Rachael Chong, 31; CEO and founder, Catchafire (01 of08)
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As a successful investment banker, Rachael Chong was dissatisfied with her opportunities for giving back in a meaningful way. She soon swapped the corporate world for the nonprofit one, founding Catchafire, an organization which helps professionals volunteer pro bono services to nonprofits without quitting their day jobs. (credit:Catchafire)
Rhoden Monrose, 27; Founder, CariCorps(02 of08)
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With an extensive banking background, Rhoden Monrose left his position at Citigroup to make the finance industry more socially responsible. He founded CariCorps under the belief that business professionals could both do well and do good. Through CariCorps, Monrose teaches millennials how to have socially responsible finance careers. Millennial members are provided with free technical and professional skills and motivated to be involved in charity and community service while working on Wall Street. (credit:Rafael Infante)
Ben Keesey, 30; Executive Director and CEO, Invisible Children(03 of08)
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With a degree in applied mathematics, management & accounting and previous employment at finance bigwigs such as Deloitte and Touche LLP and JP Morgan & Associates, Ben Keesey was on the corporate track. But a trip to Africa changed his course -- Keesey now champions the cause of those affected by the atrocities of Joseph Kony and the LRA conflict through the nonprofit Invisible Children. (credit:Invisible Children )
Jessica Matthews, 25; CEO and founder, Uncharted Play(04 of08)
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With a degree in economics from Harvard already under her belt and an M.B.A. in progress, Jessica Matthews seems primed for Wall Street. However, she\'s used her business expertise to found Uncharted Play, a social enterprise that uses technology and playful activities to help solve real-world issues. One example is SOCCKET, a soccer ball that converts light into energy while you play. The sales from SOCCKET help provide children in need with reliable energy access. (credit:Uncharted Play)
Patrick Dowd, 26; founder and CEO, Millennial Trains Project(05 of08)
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Patrick Dowd was an investment banking analyst for J.P. Morgan when Occupy Wall Street broke out. He remembered the positive model for youth mobilization and protest he had experienced while helping with the Jagriti Yatra train journey as a Fulbright scholar in India. Dowd eventually quit his job and pioneered the Millennial Trains Project, a nonprofit which takes millennials on crowd-funded train trips across the country. While aboard, youths participate in seminars and workshops and explore America\'s social opportunities and challenges. (credit:Getty Images/The Washington Post)
Alejandro Gac-Artigas, 25; Founder, Springboard Collaborative(06 of08)
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Formerly employed by McKinsey & Company, Alejandro Gac-Artigas leapt into education with the 2011 launch of Springboard Collaborative. The Philadelphia-based organization has helped narrow the literacy gap for 642 children by providing teachers and parents with skills to incentivize learning and reading over the summer break. Gac-Artigas was motivated to found the startup because he was frustrated by the \"summertime reading losses in elementary school that account for two-thirds of the achievement gap in high school.\"\n (credit:Springboard Collaborative)
Krishna Ramkumar, 28; Co-founder, Avanti(07 of08)
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Krishna Ramkumar was a senior associate with the Boston Consulting Group before founding Avanti, a collection of learning centers in four Indian cities. Avanti mentors students from low-income high schools in science and math. Last year, 6,000 students applied for the program\'s 150 available spots. The India-based organization makes college a more accessible dream for students from economically disadvantaged schools. (credit:Twitter)
Tinia Pina, 30; CEO and founder, Re-Nuble, Inc.(08 of08)
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For five years Tinia Pina worked a variety of positions in the finance sector, including as a consultant, analyst, and investments accountant, before founding Re-Nuble, Inc. As a sustainable startup, Re-Nuble, Inc. takes excess food from restaurants and recycles it, using the organic nutrients to create renewable energy and organic fertilizer. Pina has expanded the organization, bringing plant-based nutrients to consumers who seek more accessible and less expensive sustainable food. (credit:Tinia Pina)