働く者の立場で「働き方改革」を進めよう! ②どう考える?非正規労働者の処遇改善に向けた同一労働同一賃金の法制化

労働組合が非正規で働く人たちの声をすくい上げることはもちろん、労働組合がない職場でも、非正規の人たちを含めて代表を選ぶ仕組みをつくる必要がある。

政府は昨年12月、「同一労働同一賃金ガイドライン案」を提示。「働き方改革実行計画」では、その法制化として、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3法を改正することが示された。

これを受けて、労働政策審議会には、労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会の3分科会共通部会として「同一労働同一賃金部会」が設置され、議論が進められた。

実行計画をどう評価するのか、法制化のポイントはどこか。日本総研の山田久チーフエコノミストと村上陽子連合総合労働局長が意見を交わした。

処遇改善を一気に進める好機

--働き方改革実行計画に「同一労働同一賃金の法制化」が盛り込まれた。これをどう受け止める?

山田 その目的は「正規と非正規の間の不合理な待遇差の解消」とされている。非正規労働者の処遇改善が急がれる今、その意義は大きいと言えるだろう。

かつての非正規労働者は、主婦パートや学生アルバイト、シニアの嘱託など家計補助的な働き方が大半を占めた。ところが、1990年代半ばからその数が急増し、主たる生計の担い手である非正規労働者も増える中で不安定雇用や低賃金が問題視されたが、本格的な改善は進んでこなかった。

それが今回、「働き方改革実現会議」の検討項目のトップに「非正規雇用労働者の処遇改善」が位置づけられ、法制化に向けて動き出したことは、大きな意味がある。

もう一つ、今、人手不足が進行し、企業では基幹労働力であるパートやアルバイトをいかに確保するかが死活問題になっている。タイミング的にも、これは処遇改善を一気に進める好機になるはずだ。

村上 連合も同様の問題意識をもって非正規労働者の処遇改善に取り組んできた。1990年代半ばから非正規雇用が拡大し、働く人の3人に1人を占めるようになる中で、均等待遇ルールの法制化が必要だと考え、2001年に「連合パート・有期契約労働法案要綱骨子」を策定し、取り組みを進めてきた。

パート労働法(9条)における差別的取り扱いの禁止、労働契約法(20条)における不合理な待遇差の禁止など、少しずつ前進はしてきたが、今回、包括的な法制化が示されたことは、大きな一歩だと受け止めている。

非正規労働者は、数だけでなく、仕事の質においても今や基幹労働力だ。そういう中で納得できない差がある状態を放置すれば、働きがいが損なわれ、企業経営にとってもデメリットになる。実際に非正規の組織化・処遇改善を進めている職場では、働きがいや一体感が増して職場の雰囲気や風通しが良くなり、業績アップにもつながっている。

手当や休暇も含めたトータルな処遇をカバー

--「同一労働同一賃金ガイドライン案」をどう見る?

山田 昨年12月のガイドライン案は、労使で一定の調整をした上で出されたものであり、基本的考え方としては妥当なものだ。コンセプトは、欧州の法制を参考にしつつも、日本型の「同一労働同一賃金」をめざすというもので、待遇差が不合理なものか否かを示していくとしている。

日本の人材活用においては「無限定正社員」がコアとしてあり、非正規はその補助的労働と位置づけられ、両者に賃金処遇の差があるのは当然と考えられてきた。今回のガイドラインでも、賃金処遇の違いを否定しているわけではない。ただ、その差については「使用者が説明できるものでなければならない」としていることが重要だ。また、賃金だけでなくトータルな処遇をカバーしていることも評価できる。

実は産業によって非正規雇用の比率や活用の仕方、労働者の属性はさまざまだ。これを機に産業別の労使が議論して、その実態を踏まえたガイドラインづくりも進めてほしい。

村上 当初、労働組合の中では、「同一労働同一賃金」という言葉のイメージが多様であり、違和感があったのも事実だ。そこは「これは現実に存在する正規・非正規の処遇格差をどう縮めていくのかという問題だ」と理解して議論を進めていったという経緯がある。

実際に非正規で働く人たちが、「格差」を感じるのは、賃金だけでなく手当や福利厚生、休暇制度の部分も大きい。今回のガイドラインは、賞与、通勤手当や食事手当、福利厚生施設の利用や慶弔休暇などについて「同一」を求めており、職場でしっかり取り組めば、改善を実感できるものになるはずだ。

もちろん、ガイドラインはあくまで「参考」であり、労使が具体的に均等・均衡処遇をどう設計していくのかが問われている。また、もう一つの課題である正社員化の取り組みのきっかけにもしていきたい。

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企業のパフォーマンスを上げるためにも重要

--法改正の方向性については?

山田 具体的な論点の1つは、「司法判断の根拠」を整備することだが、訴訟を奨励しているわけではなく、これを機にあらためて集団的労使関係の意義を再認識すべきという問題提起がされていると捉えるべきではないか。

もう一つ、「事業主の説明義務規定」は重要だ。人手不足の中で、納得感がないと人材は定着しないし、モチベーションも上がらない。これは非正規労働者の処遇問題というだけでなく、企業のパフォーマンスを上げるという意味でも重要な課題になっている。その時に求められるのは、「結果公平」だけではなく「過程公平」だ。処遇に違いがあるのはなぜか。その理由に納得できれば、モチベーションは高まる。ここは企業が主体的に取り組むべきテーマだ。

村上 「司法判断の根拠」が重要なのは、裁判を通じて世の中の規範が形成される面があるからだ。使用者にとって、司法判断は行政指導より何倍も重い。根拠が示されることで、企業の本気の取り組みを期待したい。「過程公平」は、本当に重要だと実感する。非正規の組織化を進める中で、互いの働き方や仕事内容について理解が進むと、納得性をもって議論することができるからだ。

労働者全体の公正代表として

--労働組合の役割は?

山田 法的整備や職場での取り組みを進めていく上で、労働組合にお願いしたいのは、非正規労働者も含めた労働者全体の「公正代表」だという意識をあらためて強くもってほしいということだ。格差を放置すると社会が不安定になる。経営との緊張関係をもった働く人を代表する組織、労働組合の存在は重要だ。

もう一つ、ヨーロッパの同一労働同一賃金は、誰もがその能力を発揮できるダイバーシティの観点から整備されてきたが、今後はそういう観点からの議論も必要となってくるだろう。

村上 労働者代表の問題は、労働時間法制においても重要なテーマだ。労働組合が非正規で働く人たちの声をすくい上げることはもちろん、労働組合がない職場でも、非正規の人たちを含めて代表を選ぶ仕組みをつくる必要がある。

そういうプロセスを通して処遇改善や労働時間の問題を話し合っていけるよう、積極的に取り組んでいきたい。

--ありがとうございました。

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山田 久

(株)日本総合研究所 調査部長

チーフエコノミスト

1963年生まれ。1987年京都大学経済学部を卒業し、住友銀行(現三井住友銀行)入行。(社)日本経済研究センター出向を経て、1993年(株)日本総合研究所調査部。主任研究員、経済研究センター所長、マクロ経済研究センター所長、ビジネス戦略研究センター所長を経て現職。博士(経済学)。専門は、マクロ経済分析、経済政策、労働経済。

著書に『デフレ反転の成長戦略 「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか』(東洋経済新報社)、『失業なき雇用流動化』(慶應義塾大学出版会)、『同一労働同一賃金の衝撃』(日本経済新聞出版社)など。

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村上陽子

連合総合労働局長

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2017年7月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。

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