地球温暖化の防止につながる「電力自由化」を

全ての小売電気事業者が、全ての消費者に対し、適切かつ十分な説明を果たすべきと考えられます。
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2016年4月、日本でも電力自由化が始まります。石炭や原発による電力か。風力や太陽光による電力か。当たり前に携帯電話が選べるように、自分の使う電気を、自由に選ぶことができる時代がすぐそこまで来ています。その中で、消費者はどれくらい選択の「自由」が許されるのか。それを決める重要な制度が現在、経済産業省で審議されています。こうした中、WWFジャパンは7月1日、電力自由化に向けたその省令案に対し、意見を提出。正しく、幅広い選択肢を消費者に提供することを可能にする制度の成立を求めました。

地球温暖化防止の「鍵」となる電力自由化と情報開示の重要性

7月1日、WWFジャパンは、経産省がパブリックコメントを募集していた「小売電気事業の登録の申請等に関する省令案」について、意見を提出しました。

省令案は、2016年4月から、消費者が自由に電気の購入先を選ぶことを可能にする「電力自由化」を実現する制度で、消費者がどれくらい自由に、また正しい情報にもとづいて、自らの電力の購入先を選べるか、それを規定するものです。

これまで、いわゆる一般家庭等の「低圧需要家」は、電気の購入先を自由に選ぶことができませんでした。

東京電力や関西電力といった一般電気事業者から、購入することが義務付けられていたためです。

そして、その電力は、基本的に原発によるものであれ、火力によるものであれ、電気事業者が一方的に供給するものにほぼ限られていました。

そのため、太陽光や風力による電力を買いたいと思っても、それを実現する手段は非常に少なかったのです。

2016年にはじまる電力自由化とは、この状況を変え、一般電気事業者以外のどの販売先からも、消費者が自由に電力を買えるように、規制を撤廃することを指します。

そして、地球温暖化が深刻化する中で、環境負荷が少ない自然エネルギー由来の電気を、消費者が自らの意志で選択できるようになることは、温暖化の防止、すなわち「低炭素社会」の実現に、大きく寄与すると期待されています。

不足する「選択」に必要な情報

しかし、消費者が賢い選択をするためには、電力を販売する小売事業者が、正しく、幅広い情報を開示することが必要となります。

自然エネルギーを期待して購入した電気が、実は自然エネルギーを活用した電源によるものでなかったら、この電力自由化は意味を成しません。

今回、パブリックコメントの対象となった省令案は、まさにこの「消費者に対する小売事業者の情報開示」について定めたものになります.

この省令案では、電力自由化に向け、電気を売る小売事業者が、商売前に省庁に対し行なう事前登録について規定をしています。

そして同時に、小売事業者と消費者との間で交わされる、契約等に関しても、言及がなされています。

例えば、こうした契約段階で小売事業者が消費者に対して行なう「説明」の内容と手段です。

  1. 消費者にどのような情報を伝えるのか(説明項目)
  2. どのような媒体で伝えるか(電話か書面かインターネットか、など)
  3. どう伝えるのか(説明方法)

この中で、契約期間などの基本的な点については、小売り事業者から消費者に対し、明確に説明することが求められています。

しかし、売り物である電気そのものの具体的な由来については、必ずしも説明が求められていません。

つまり、消費者は自由に電気を選べるとはいえ、自分が買っている電力がどのように生み出されたものなのか、知るすべがないのです。

消費者により確かな情報を!WWFのパブリックコメント

そのためWWFでは、特に改善するべき重要なポイントとして、パブリックコメントにおいて、以下の点について意見を述べました。

(1)購入する電気の特性を、消費者が理解できるようにすること

WWFはまず、消費者が電気を購入するにあたり、それがどのような電源に由来するものなのか、その情報を開示することを強く求めました。

たとえば、それが原発や、はたまた火力発電のような二酸化炭素(CO2)を排出する形で作られたものなのか。

それとも、自然エネルギーのような環境負担が少ない電源によるものなのか。

その「質」を知ることは、消費者が持つ権利であり、重要な問題です。

WWFは少なくとも、次の3点について消費者が説明を受けられることが、電力自由化の目的の1つである再生可能エネルギーの普及において重要であると指摘しました。

  1. 電源の種類(火力か、水力か、原子力か、自然エネルギーか、など)
  2. 電源割合(上記の電源が複合されている場合の割合)
  3. CO2の排出量(その発電に伴って発生する二酸化炭素の量)

(2)全ての小売事業者が適切な情報開示をすること

省令案では、消費者への契約説明を、全ての小売事業者に等しくもとめてはいません。

新規参入する事業者や、既存の事業者でも新しい契約(新しい料金オプションなど)で電気を売ろうとする場合は、ある程度の内容を説明する必要がありますが、一方で現在の一般電気事業者と契約している一般家庭の多くについては、契約先やその内容を変えない限り、最低限の契約内容の説明がされるだけ、となっています。

電力自由化にともない、より多くの消費者が自由な選択をできるようにするためにも、現在、自分自身が使っている電気について自覚を持ち、それを見直すことが求められます。

そのためには、全ての小売電気事業者が、全ての消費者に対し、適切かつ十分な説明を果たすべきと考えられます。

(3)契約後も継続的に消費者に情報提供をすること

省令案では、契約段階での消費者に対する説明のみを求めており、契約後については、そうした説明の義務について記載がありません。

消費者が、普段使っている電気を生み出すのに、どれだけのCO2が排出されたのか。

また、それがどのような環境負荷の生じる電源なのかを理解することは、電気を使う人の問題意識を深め、より「環境負荷の少ない電気を扱う事業者」を選ぶ行動を促すものとなるでしょう。

それは結果として、地球温暖化のない「低炭素社会」の実現につながってゆきます。

したがって小売事業者は、契約時だけでなく、むしろ契約後、普段の暮らしの中で目にする電気料金の領収書などを通じて、継続的に、販売している電気に関する説明を行なってゆくことが重要と考えられます。

消費者の「選択」で変わる未来関連情報

今回の省令案によって、消費者が「等しく」「正しく」「幅広く」情報が得られるようになれば、電力をめぐる一般家庭の生活は、大きく変わる可能性があります。

よりよい未来を残すため、眼前に迫った温暖化の脅威にどう立ち向かうのか。

そのための取り組みが求められる中で、今を生きる世代が、将来の世代に対して果たせる責任と、貢献のチャンスが、この「電力自由化」という仕組みの中にあります。

個人の場合、実際に再生可能エネルギーの事業を起こしたり、投資をしたりすることで、その普及に貢献することは、非常に難しいと言わねばなりません。

しかし、一人ひとりが、再生可能な自然エネルギーによる電気を、自らの意志で選び、購入していくならば、そうした新しいエネルギー事業を支え、これからの日本のエネルギー社会の在り方を変えていくことにつながるでしょう。

地球温暖化の問題も、原発の問題も、海外の石油や石炭などの資源への依存もない未来を築くためにも、「電力自由化」の制度が広く、よい形で普及し、利用されることが求められています。

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