EU離脱(ブレグジット)の賛否を問う国民投票の結果判明を受け、イギリス国内の至るところで民族主義的な暴力事件や落書きが報道されている。
ロンドンでは6月26日、ハマースミスにあるポーランド社会文化協会(Posk)の建物に、「くたばれ、クソ野郎」と壁一面に殴り書きされた、民族主義者とみられる犯人によると壁一面に殴り書きされた。警察は民族主義的な動機による器物損壊事件として捜査を進めている。
BBCによると、ケンブリッジシャー州のハンティンドンでは、「EUから出ていけ、ポーランドのクズ野郎はいらない」というラミネート加工されたカードがばらまかれ、地元警察が捜査に乗り出している。
ポーランドは2004年にEU加盟を果たしたが、イギリスでは自国で働くよりも5倍の収入が得られることもあり、この3年間でイギリスに流入した出稼ぎ労働者は100万人を超え、ロンドン市内にポーランド人街がいくつも出来上がっている。
EU離脱の国民投票の後、「ポーランドのクズ野郎はいらない」と読めるカードが家や学校の外に放置されていた。
ポーランド人に向けられた、外国人嫌悪の動機とみられる事件に対する、ポーランド大使館のコメント
ポーランド人コミュニティ、そしてイギリスに住むポーランド移民の子孫に向けられた外国人嫌悪を動機とする最近の嫌がらせに衝撃を受け、憂慮している。ポーランド大使館は関係機関と連携を図っている。地元警察はロンドンのハマースミス、ケンブリッジシャー州のハンティンドンで広く報道されている2つの事件の捜査をすでに始めている。
同時に、当大使館は、支援とポーランド人コミュニティの団結を呼びかけるイギリスの一般市民から寄せられたメッセージに感謝している。
外国人嫌悪による嫌がらせによって被害を受けた全てのポーランド国民、事件の目撃者は地元当局に通報するよう呼びかけている。
こうした外国人嫌悪への反撃も始まっているが、中には、イギリスに対するポーランド人の貢献についても語られ始めた。
私は、この国に住むポーランドの兄弟姉妹をサポートします。第二次世界大戦で味方として戦い、いま私たちの国に加わってくれています。
私の父(ポーランド人)は、第二次世界大戦でイギリスのために戦い負傷しました。以降30年、スラム街のGP(開業医)として働きました。
18年前の今日、父を亡くしました。他のポーランド人と同じように、父はイギリスをナチスの支配から救うのに貢献しました。
イギリス空軍に参加してくれたポーランド人がいなかったら、イギリスは第二次世界大戦で敗北を喫していたでしょう。
ポーランド人はイギリスに多大な貢献をしてくれました。私は両手を挙げて彼らを歓迎したいです。
「家に帰れ」と叫ぶ能なしどもへ言いたい。「お前」に家があるのは革ズボンをはいたこの人たちがいるからだ。1940年の303 Polish Sqdn(海軍兵士)。
私の祖父ジョセフは Polish 302 Squadron(イギリス海軍)で戦った。私がここにいるのは彼のおかげ。
イギリスの社会主義者として、団結と支援の輪を広げたい。イギリスに住み、働いている全てのポーランド国民へ。
ささやかなことですが、ここにいて何年も私たちの文化、国に貢献してくれて感謝しています。
保守党議員で財務省首席担当官の グレッグ・ハンズ氏は、ポーランド人が「イギリスで信じられないほど歓迎されており、『団結』という言葉をこれほどありががいと思ったことはない」とツイートした。
さらに、私たちは声を大にしてはっきりと言いたい。ポーランド人はイギリスで信じられないほど歓迎されており、『団結』という言葉をこれほどありがたがいと思ったことはない。
この数日、民族主義的な嫌がらせを受けたのはポーランドの人たちだけではない。「家に帰れ」と言われた人、さらにひどい嫌がらせを人がいると報告されている。
こうしたブックレットがバーミンガムのアストンの郵便受けに投函されている。
ヨーロッパの極右
フランスの国民戦線(01 of10)
Open Image Modal国民戦線は今回の欧州議会選挙で、反移民の方針を訴えて支持を集め、フランスで約25%の得票を得て24議席を獲得した。\n\nマリーヌ・ル・ペン党首は、同党の毒を抜き、ソフト路線に切り替えようと熱心に取り組んできた。彼女は、自身の父親であり党創設者でもあるジャン=マリー・ル・ペンにさえも矛先を向けている。そのジャン=マリー・ル・ペンは先月、「エボラウイルス」なら欧州の移民問題を「3カ月で」片付けてくれるだろうと発言したばかりだ。同氏はこれまでも、フランスの差別禁止法の下で何度も有罪判決を受けているほか、ナチスのガス室は「第二次世界大戦の歴史では些細なことにすぎない」という発言でも有名だ。 (credit:Getty Images)
ドイツ国家民主党(02 of10)
Open Image Modalドイツ国家民主党(NPD)は、 欧州議会選挙で得票率1%を得て1議席を獲得。欧州議会に初進出を果した。同党は、基本政策として移民の受け入れ停止を訴えており、「シンティ・ロマ人ではなくお年寄りのための予算を」や「ボートは満員だ(移民を受け入れる余地はない、という意味)」というスローガンを掲げて選挙活動を繰り広げたほか、ヨーロッパは「白人のための大陸」だと公言してはばからない。また、ナチスの思想であった「国家社会主義」を垂れ幕に掲げて行進したこともある。人種差別主義ならびに反ユダヤ主義であると批判されている。 (credit:Getty Images)
ギリシャの「黄金の夜明け」(03 of10)
Open Image Modalギリシャの超国家主義政党「黄金の夜明け」は、暴力的な行動で有名だが、選挙に備えて兵士用ブーツを脱ぎ捨て、スーツに着替えた結果、欧州議会で初の議席を獲得した。\n\n党の広報担当者はまんじの入れ墨を入れているほか、かなりの数の党員が、犯罪組織の一員だとして逮捕・服役中だ。また、ギリシャ国内のモスクやユダヤ教の礼拝堂シナゴーグ、墓地などには、同党のスローガンがなぐり書きされている。\n\n2012年5月に行なわれたギリシャ議会総選挙では、「けがれた国を一掃しよう」をスローガンに掲げ、「ギリシャ人限定」で食糧配布を行なった。党の広報担当者が議会で、『シオン賢者の議定書』(1900年前後に書かれたとされる「ユダヤ人が世界征服を企んでいる」という内容の書で、ナチスをホロコーストに導いたと言われている)の一節を引用して発言したこともある。黄金の夜明けは現在、ギリシャで第3位の政党になっている(日本語版記事)。 (credit:Getty Images)
真のフィンランド人(04 of10)
Open Image Modalフィンランドの反EU、大衆主義政党「真のフィンランド人」は、欧州議会選挙で予想したほどの結果をあげられなかったものの、2議席を獲得した。そのうちの1人ジェームズ・ヒールビサーリ議員は2011年、自身のブログに、イスラム教徒に関する発言を書き込んで罰金刑を受けている。また、もう1人は、フィンランド独立記念日を祝う舞踏会への出席を、「同性カップルは見るのも嫌だ」と言って断わっている。 (credit:Getty Images)
デンマーク国民党(05 of10)
Open Image Modal「デンマーク国民党」は、27%近い得票率を獲得し、欧州議会の議席を2倍に増やした。党首は元介護士のピア・キェアスゴーで、ムスリムに対する差別的発言を繰り返している。\n (credit:Getty Images)
オランダの自由党(06 of10)
Open Image Modalオランダの「自由党」は、欧州議会で4議席を維持したが、党首であるヘルト・ウィルダースは、親EU政党が上位を占めた選挙結果にがっかりしているはずだ。同党首は、オランダへのイスラム系移民受け入れ全廃、ならびに現在オランダに住んでいるイスラム系移民の送還を訴えている。同党は、2010年のオランダ下院選挙で第3党になっている。 (credit:Getty Images)
ハンガリーの「ヨッビク」(07 of10)
Open Image Modalハンガリーの「ヨッビク」(右翼青年協会)は、欧州議会で最も極右色を明確にしている政党のひとつだ。今回も2009年の欧州議会選挙と同様に3議席を獲得し、得票率は14.7%だった。同党は、ハンガリー在住ユダヤ人に対し、ユダヤ人名簿への署名を要求している。 (credit:Getty Images)
オーストリア自由党(08 of10)
Open Image Modalオーストリア自由党は、党の基本政策である反移民を訴えて議席数を大幅に増やし、全体のおよそ5分の1の票を集めた。欧州議会の議席数は2から4に倍増し、フランスの国民戦線と手を組む考えを示している。 (credit:Getty Images)
イタリアの北部同盟(09 of10)
Open Image Modalイタリアの「北部同盟」は、イタリアで6%の得票率を獲得した。同党に所属するある元欧州議会議員はかつて、「アフリカが偉大な人物を輩出したことがないのは、どんな百科事典を見てもわかる」と発言したことがある。 (credit:Getty Images)
イギリス独立党に負けたイギリス国民党(10 of10)
Open Image Modalニック・グリフィンが党首を務める「イギリス国民党」(BNP)は、欧州議会の議席を失った。同党で唯一欧州議会議席を持っていたアンドリュー・ブロンズは離党していた。\n\nグリフィン党首は、イギリス国民党こそ本物の「人種差別主義」政党であり、イギリス独立党(UKIP:欧州連合からの脱退を主な目的としている)に投票した人は勘違いをしたのだと語っている。なお、Huffington日本語版過去記事では、イギリスの極右団体「イングランド防衛同盟」(EDL)の画像集も紹介している。 (credit:PA)