メコン川流域で163種の新種を発見!最新報告を発表

2016年12月19日、WWFはメコン川流域での生物調査の結果をまとめた報告を発表し、2015年の1年間に163種の新種が発見されたことを明らかにしました。

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2016年12月19日、WWFはメコン川流域での生物調査の結果をまとめた、新しい報告「Species Oddity(奇異なる生きものたち)」を発表。その中で、2015年の1年間に163種の新種が発見されたことを明らかにしました。

報告書は、これらの新種の中に、すでに絶滅が心配されるほどに減少している野生生物も多数含まれていることを指摘。その原因である、流域各地での大規模開発や、ペットなどを目的とした密猟、違法取引、さらに地球温暖化といったさまざまな問題に、早急に取り組む必要があることを強く訴えています。

アジアを代表する自然の楽園

東南アジア最長かつ広大な流域面積を誇る大河メコン川。

その流域には、カンボジア、中国、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの6つの国が国土を広げ、サバンナから熱帯雨林、山間の急流から広い川幅を持つ本流の流れまで、多様な景観が存在し、生物多様性の宝庫として知られています。

すでに知られている野生生物は、哺乳類が430種、鳥類が1,200種、両生・爬虫類が800種、そして植物が2万種。

代表的な野生動物には、トラやサオラ、アジアゾウ、ガウル、アジアスイギュウなどがおり、この地域にしか分布していない固有種も少なくありません。

また、メコンオオナマズなどが生息する河川の環境には、アマゾン川の3倍以上に相当する1,100種あまりの魚類が生息していることが知られ、WWFも世界で最も重要な生態系の一つとして、調査と保全を進めてきました。

これまでに発見された新種は計2,409種!

ここではまた、多くの生物が新種として発見、確認されてきました。

2016年12月19日に、WWFが発表した新しい報告「Species Oddity(奇異なる生きものたち)」でも、2015年の1年間で163種の新種が新たに加わったことが、あらためて明らかにされました。

その内訳は、哺乳類3種、爬虫類14種、両生類9種、魚類11種、植物126種で、特に、虹色の頭を持つヘビや、竜のような角を持つトカゲ、オレンジ色の眼を持つカエルなど、両性爬虫類に際立ったものが多く含まれています。

また、これらの新種の中には、タイの観光地として人気の島、プーケットにわずかに残る森で発見された生きものもいます。

WWFが調査を開始した1997年以降、メコン川流域で発見された新種の総数は、2015年の一年に発見された種を加え、実2,409種。

平均すると、1週間に2種が新たに発見されてきたことになり、さらなる未発見の生物が、今も多数存在していることを予想させる内容になっています。

危機にさらされるメコンの自然

しかしこうした新たに発見された野生生物の中には、発見の時点で既に絶滅の危機に陥っている生物が少なくありありません。

その原因は、メコン川流域の経済成長に伴う、道路やダムなどの急速な開発と、それに起因する環境破壊。

また、希少な生物をペットとして違法に売買することを目的に横行する密猟や違法取引などです。

特に、希少であればあるほどペットとしての人気が高くなる動物については、高値での売買が横行し、メコン川流域だけでも、違法取引の市場規模が数十億ドルになると推測されています。

さらに、広域の自然環境に大きな影響を及ぼす地球温暖化(気候変動)も、大きな問題として懸念されています。

現在のまま生息環境の破壊と、違法な取引が続けば、発見される前に絶滅してしまう野生生物も、多数出てくる可能性があります。

WWFは報告の中で、こうした問題に早急に取り組む必要があることを強調。

特に、世界中でこの地域でのみ生息が確認されている固有種については、個体群の消滅が、そのまま地球上からの絶滅を意味するものになるため、生息環境の保全と個体群の保護を訴えました。

豊かな生物多様性を守るために

メコン川流域には、多くの先住民族を含む多様な文化を持つ人々も、その豊かな自然資源を利用しながら暮らしています。

しかし、環境に配慮のない急激な開発による自然の消失が続けば、こうした人々の暮らしも脅かされることになるでしょう。

WWFのメコン・プログラムで野生生物プログラムを統括するジミー・ボラーは、「メコン川流域の希少な生物を守る戦いは、時間との戦いでもあります」とコメント。

自然が失われるその速さについて、強い懸念を表明しました。

アジアに残る自然の楽園、メコン川流域。それは、知られざるまま失われる危険にさらされた、最後の野生のフロンティアの一つです。

WWFはこれからも、この流域で、希少な野生生物や自然環境の保全と、持続可能な開発を目指した取り組みを支援してゆきます。

▼WWFのサイト