白人警官の黒人射殺事件 もし動画がなかったら、こんな記事が出ていたはずだ

またもアメリカで起こった、白人警官による黒人男性の射殺事件。もし、事件の模様をとらえた動画が残されていなかったら、どんな風に報道されただろうか。架空の記事を書いてみた。
|

アメリカ・サウスカロライナ州の白人警察官が、黒人男性を射殺した疑いで4月7日、逮捕された。通行人が撮影した動画が決め手になった。武器を持たずに逃げるウォルター・スコットさん(50)をマイケル・スレーガー容疑者(33)が8度に渡って発砲。スコットさんは死亡した。

スコットさんの車のテールランプが壊れていたことをきっかけに、小競り合いが始まったと見られている。スレーガー容疑者は発砲した理由について、スコットさんがテーザー銃を奪ったため、と説明した。しかし、動画には倒れたスコットさんの手の付近にテーザー銃を投げ落とすスレーガー容疑者の姿が捉えられている。

【※閲覧注意】警官が銃撃する瞬間が含まれています

もし、この動画がなかったら、どういう「事実」が紡ぎだされただろうか。試しに、記事を書いてみよう。

※以下の記事は、架空のニュースです。事実ではありません。

***

ノースチャールトンの警察官が、テーザー銃を奪おうと襲いかかった男ともみ合った末、発砲した。4月4日、当局が発表した。

警察によれば、すぐに応急処置と心肺機能蘇生が試みられたが、男は現場で死亡。男には暴行による逮捕歴があった。

サウスカロライナ警察署管内での発砲事件は今年に入って11度目。当局はこの事件に関して、調査を開始している。

発砲した警官はマイケル・トーマス・スレーガー巡査(33)。死亡したのはウェスト・アシュレー、メドウローン・ドライブ在住のウォルター・ラマー・スコット(50)容疑者。スレーガー巡査は軍役の名誉除隊後、ノースチャールトン警察に務め、5年以上のキャリアがあった。弁護士によれば、職務期間中の規律違反はなかったという。

事件はクレイグストリートとリマウントロードにある、質屋の裏で発生した。テールライトの壊れた車を運転していた容疑者を見つけると、巡査は路肩に停車するよう促した。警察と目撃者によれば、路肩で停車している間に、容疑者は歩いて車から逃げたという。通りから少し入ったところで、スレーガー巡査が容疑者に追い付くと、容疑者は抵抗。警察によれば、もみ合う間に容疑者が巡査からテーザー銃を奪い、発砲しようとしたという。もみ合うスキに、巡査が容疑者に発砲。それが致命傷となった。

「発砲し、容疑者は倒れています。容疑者は私の銃を奪いました」。発砲後すぐに巡査は無線で伝えた。

「恐怖を感じました。容疑者が私の銃器に手をかけたので、発砲しました。銃撃に関する事実を公聴会に話せば、彼らも状況をより理解してもらえるものと信じています」と巡査は日曜日、弁護士を通じ声明を発表した。

弁護士は、巡査の発砲は規定に沿い、適切な手続きに従って行われたものとの立場を保っている。

「こんな結果は誰も望んでいないが、だがこれも我々の仕事の一部です。誰にとっても不運で、難しい状況でした。今後は法務当局が事件の完全かつ徹底的な調査を実施し、すべての関係者へ明らかにするでしょう」とエディー・ドリガー警察署長は報道発表で述べている。

また、巡査が容疑者を襲ったという疑いも持たれたが、巡査にとってはその理由がなく、襲いかかってきた容疑者から身を守るための正当防衛として、武器を使ったとみられる。

容疑者は多くの犯罪歴があり、少なくとも1987年に脅迫・暴行罪、1991年にこん棒の所持で有罪判決を受けている。また、子供の養育費を払わず法廷侮辱罪に、2008年には免許停止中にもかかわらず運転し、さらに車の中に酒の空き瓶が見つかったこともあった。

容疑者のいとこに当たるサミュエル・スコットさん(55)は、このニュースに衝撃を受けている。

「彼は犯罪者じゃない。若くもないし、通りにたむろしていたわけでもない。ただ一生懸命働いて、家族を養っていた大人の男です。暴力的な男じゃありません。他人と揉めているところだって見たことはないんです。理解できませんよ」と地元紙の取材に答えている。

この事件は、警察による実力行使という点で、ミズーリ州ファーガソンで起こり、国を巻き込む大騒動に発展したマイケル・ブラウンさんの射殺事件と似ている。当局は最終的に、ブラウンさんが警官のダレン・ウィルソンさんに襲いかかり、銃に手をかけたため射殺したと判断した。

調査の結果が出るまで、スレーガー巡査は管理業務に従事する。

***

※この記事は、架空の情報に基づいたニュースです。事実ではありません。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています