安倍政権は、国と地方を合わせた基礎的な財政収支の赤字を対GDP比で、2010年度と比較して2015年度に半減させ、2020年度には国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化するという財政健全化目標を堅持することを掲げて総選挙を戦いました。

安倍政権は、国と地方を合わせた基礎的な財政収支の赤字を対GDP比で、2010年度と比較して2015年度に半減させ、2020年度には国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化するという財政健全化目標を堅持することを掲げて総選挙を戦いました。

基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字とは、国債の利払いを除いた歳出を、国債を除く税収その他の歳入で賄えない部分をいいます。

2010年度の基礎的な財政収支の赤字は対GDPで6.6%でしたから、2015年度にそれを半減するためには、来年度の基礎的な財政収支の赤字をGDP比で3.3%までに抑えなければなりません。

内閣府の当初の試算では、2015年度は税収が、法人税減税を考慮しないと、55.6兆円と想定されています。

それに外為特会からの繰り入れ、日銀納付金、JRAの国庫納付等の収入が4.6兆円。合計して60.2兆円の歳入が見込まれています。

その場合、基礎的財政収支の赤字目標を達成するためには、国債費を除く歳出を75.1兆円に抑える必要があります。

しかし、2014年度当初予算の税収見込は50.0兆円でしたが、1-2兆円の上振れが見込まれています。

おそらく2015年度の税収もこのままいくと、円安による輸出企業の利益の拡大で法人税収が拡大すると思われます。

内閣府は、2.8%の経済成長で55.6兆円の税収、2014年度と比べて社会保障費の自然増1.8兆円以外は一切歳出の増加なし、法人税減税はなしという前提で、2015年度の基礎的財政収支の赤字は3.2%になると試算していました。

消費増税が先送りにされたので、税収の上振れと社会保障費の削減でその分、対応しなければなりません。

概算要求では、裁量的経費(14.7兆円)について10%削減というシーリングをかけていますので、新しいことをやるための枠として1.47兆円が確保されましたが、各省庁からの新規要望は3.88兆円にのぼります。

さらにその外に「事項要求」とよばれる金額はまだ入れていないけれど、こういうことをやる必要がありますよという要求があります。

かなり大鉈を振るう必要があります。

さらに、基礎的財政収支の歳出は、予算に計上したベースではなく支出ベースで計算されるので、2014年度に補正予算が組まれ、その執行が2015年度にずれ込むものがあれば、その金額も2015年度の歳出として計算されます。

国と地方を合わせたプライマリーバランスなので、国から地方に支払われていても地方から支出されていないと来年度の歳出にカウントされてしまいます。

そのため、今年度の補正予算は、税収の上振れの範囲内で、直ちに執行できるものに限られてきます。

年度内に執行が難しい公共事業の上積みはできません。

また、2015年度に補正予算が組まれれば、2015年度中に執行された金額は当然、計上されます。

法人税減税はここまでの計算には入っていませんから、先行減税をやればその分、歳出の上限は下がることになります。

2020年度のプライマリーバランスの黒字化のための一里塚として来年度の財政健全化目標を達成することは非常に重要です。

ということで、目標は達成できるという楽観的な内閣府の試算は発表されていますが、2015年度の基礎的財政収支の赤字半減は、極めて厳しいのが現実です。

達成にむけて最大限の努力が必要です。

(2014年12月19日「ごまめの歯ぎしり」より転載)