小池百合子都知事候補に伝えたこと

本都知事選において、主要3候補全員が、保育所に視察に行き話を聞いてくれたのは、とても良いことだと思います。
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本日10時から、小池百合子候補が、フローレンスの運営する「障害児保育園ヘレン」に視察にいらっしゃいました。

初めに申し上げておきますと、僕自身はまだ都知事選で誰を支持するか決めていません。知人を介して視察のご希望があったため、ご対応しました。過去には、野田聖子議員、木村弥生議員、荒井聰議員、細野豪志議員、山本博司議員等、党(そして国会議員・地方議員)を問わず多くの議員の方々がお越しくださっています。

さて、小池百合子候補には、以下のことをご説明しました。

【医療的ケア児問題】

  • 周産期医療の発達によって、昔だったら出産時に亡くなっていた、医療的ケアを必要とする子ども(医療的ケア児)は増えている
  • 本来ならば命が助かることは良いことだが、NICU退院後、医療的ケア児の行き場はない。保育園や幼稚園でもほとんど預かれず、障害児の通所施設は制度的に毎日通えず、時間が短い
  • よって、親(特に母親)は就労を諦め、介護に24時間365日全力を尽くさざるを得ない。経済的にも身体的にも心理的にも大きすぎる負担を負う
  • 東京都は障害児保育園ヘレンを設立する際に、難色を示した。障害児の通所施設は療育(障害児の教育)施設であって、保育を行うものではない、という理由
  • さらに、医療的ケア児への補助金加算はゼロ。よって、マンツーマン体制や看護師を必要とする医療的ケア児を預かれば、採算を取ることは非常に難しくなる。だから、医療的ケア児を長時間預かる専門施設は、障害児保育園ヘレンだけになってしまう
  • 東京都は、医療的ケア児を始め重い障害のある子たちの保育、教育を保証していくべきだ

また、障害児自身について等の他、制度面については小池候補からは以下のような質問があり、答えました。

【小池候補からの質問】

Q:「職員の給与はどうですか?」

A:「東京都の平均賃金程度は払っているが、保育士給与自体が非常に低いです。保育士の処遇を上げる必要性が強くあります」

Q:「保育士の方々に、空き家を現物支給的に貸し出してあげて、家賃負担を軽くするのはどうでしょうか?」

A:「空き家が勤務先保育園に近く、保育士が住みたくなるようなものであれば良いが、そうでないことも多いです。社員寮への補助という国の制度が既にあるので、それに都が上乗せするほうがベターです。小規模保育等で活用するのは良いですが。」

Q:「規制が邪魔をしている部分はないですか?」

A:「面積基準等は、切り下げない方が良いです。障害児保育に関しては、東京都は療育(障害児の教育)と保育の縦割りになっていて、障害児通所施設は療育しか認めない、という硬直的なスタンスです。よって、親の就労を実現する長時間開所はしづらくなっています。」

【視察を終えて】

本都知事選において、主要3候補全員が、保育所に視察に行き話を聞いてくれたのは、とても良いことだと思います。これまでの都知事選において、主要な候補が口を揃えて待機児童問題を語り、現場に足を運ぶ、という光景はありませんでした。

また、小池候補が一般保育所に加えて、障害児保育を行う場にも足を運んでくれたのは、見えづらい問題を可視化する効果があったと思います。

一方都知事が誰になるにせよ、選挙の時だけでなく、継続的に現場の声に耳を傾けてもらいたいと思います。舛添前知事の時の有識者会議に参加して感じたことですが、東京都の子育て政策に対する姿勢は、よく言って硬直的で、悪く言ったらまるでやる気のないものです。

都官僚に丸投げしていたら、4年経っても何の成果も出せずに終わることでしょう。舛添都政の2年がそうだったように。よって、都官僚の「嘘ではないが本当でもない」情報に惑わされないことが非常に重要です。

そのためには、副知事に子ども・子育て支援に通じた専門家を配置する(できれば現在、全員高齢の男性なので、若手の女性等)か、外部のブレーン集団を持つこと。かつての小泉政権のように、経済財政諮問会議のような場で外部の民間人を活用し、その諮問会議を推進力としてゴリゴリと進めていくことが必要ではないでしょうか。

残りの選挙戦において、政策議論が深まることを心から願っています。

参考)全国医療的ケア児者支援協議会 http://iryou-care.jp/

(2016年7月25日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)