高速増殖炉『もんじゅ』(福井県)での多数の機器点検漏れを受け、運営主体の日本原子力研究開発機構の見直しを進めていた文部科学省は、同機構の業務を『もんじゅ』など優先度の高い業務に重点化し、核融合など一部の部門を分離して外部機関に移管するすることを決めた。
原子力機構は、国内でただ1つの原子力に関する総合研究機関で、もんじゅなどの核燃料サイクルに関する研究開発のほか、原発事故後の事故調査、除染モデル実証などを行なっているが、「たくさん手を出していて、肝心要のもんじゅが全くうまくいっていない」などの批判もあった。
もんじゅは、1995年のナトリウム漏れ事故などトラブルが相次ぎ、昨年は約1万件に及ぶ機器の点検漏れが新たに発覚。原子力規制委員会から運転再開準備の停止命令を受けている。報告書によると、点検は現場の担当者に任されており、組織として、点検の有効性を検討するシステムがなかったという。
この事件によって、同機構の安全を軽視する体質の根深さが露呈。機構の体制見直しのために、文部科学大臣を本部長として、外部有識者5人を含む14人で構成する改革本部が設置された。6月7日から8月8日まで4回の会合を開き議論を行った結果、「日本原子力研究開発機構は解体して、新しい体制でやり直すべきだ」との意見が出た。
MSN産経ニュースによると、文部科学省の改革本部が8日の会合でまとめた同機構の改革案では、機構全体の業務を(1)もんじゅなど核燃料サイクルの研究開発(2)東京電力福島第1原発事故への対応(3)原子力の安全性向上研究(4)原子力関連の基礎研究と人材育成の4分野に絞り込むとされた。人員についても、約3900人いる職員のうち、最大で1割強に当たる500人を削減する。
また、もんじゅの改革については、電力会社などからノウハウのある職員を大幅に増やし、理事長直轄の組織に改革することを決めた。名称も『高速増殖炉研究開発センター』というわかりにくい名前から、『もんじゅ発電所(仮称)』へ変更し、原発が有るのだという事を国民にわかりやすくする。朝日新聞デジタルによると、もんじゅには“研究開発”と“運転管理”という理念の異なる業務が混在したことが、トラブルの背景にあるとされ、今後は“運転管理”に専念し、民間の発電所にならった「発電所」組織に改組するとのことだ。
ここで懸念されるのは『もんじゅ発電所』とするからには、「国は核燃料サイクルを推し進めるつもりなのか?」という点である。改革本部に民間議員として参加するジャーナリストの青山繁晴さんは、この日出演したラジオにおいて、「『もんじゅ』をようやく国民にみえるようにすることになった。これは、とっかかりである。政府全体として、第2時安倍政権として、福島原子力災害後の原子力政策をどうするのか、核燃料サイクルをどうするのか、その中にもんじゅをどう入れるのかなど、全体の政策をまず作らなくてはいけない。本当にスタートにたったばかりだ。」と語っている。
しかし安倍首相は5月13日の参議院予算委員会において「使用済燃料への対応は世界共通の悩みでありまして、我が国は世界でも高い核燃料サイクル技術を有していることから、世界各国と連携を図りながら引き続き取り組んでいく考えでございます」と核燃料サイクルについて発言している。今回のもんじゅの管理体制強化は核燃料サイクルを諦めていないという意思表示とも考えられるのではないだろうか。
あなたは核燃料サイクルをどのように考えますか。ご意見をお寄せください。
日本の主な原子力発電所と関連施設
北海道電力の泊原発(01 of18)
Open Image Modal北海道電力の泊原子力発電所。右端が3号機(北海道泊村)\n\n撮影日:2012年05月05日 (credit:時事通信社)
東北電力東通原発 (02 of18)
Open Image Modal敷地内に活断層があると指摘された東北電力の東通原子力発電所1号機の原子炉建屋(中央奥の白い建物)。右端の塔は排気筒。左端の茶色の建物は事務本館=2013年06月19日午後、青森県東通村 (credit:時事通信社)
東日本大震災・女川原子力発電所 (03 of18)
Open Image Modal女川原子力発電所(宮城・女川町)\n\n撮影日:2011年04月12日 (credit:時事通信社)
福島第2原子力発電所(04 of18)
Open Image Modal東京電力福島第2原子力発電所=5日、福島県楢葉町、富岡町(時事通信社チャーター機より)\n撮影日:2013年03月05日 (credit:時事通信社)
福島原発/福島第1原発の4号機(05 of18)
Open Image Modal福島第1原発の4号機=15日午前11時48分、福島県大熊町[代表撮影]\n\n撮影日:2014年01月15日 (credit:時事通信社)
東海第2発電所(06 of18)
Open Image Modal日本原子力発電の東海第2原子力発電所=5日、茨城県東海村(時事通信社チャーター機より)\n撮影日:2013年03月05日 (credit:時事通信社)
新潟県中越沖地震・柏崎刈羽原子力発電所(07 of18)
Open Image Modal東京電力の柏崎刈羽原子力発電所。(左から)5,6,7号機(16日午後、新潟県柏崎市)[時事通信ヘリコプターより]\n撮影日:2007年07月16日 (credit:時事通信社)
浜岡原発と御前崎市街地(08 of18)
Open Image Modal中部電力浜岡原子力発電所(奥)と御前崎市街地=2012年10月03日、静岡県 (credit:時事通信社)
志賀原発訴訟・志賀原発 (09 of18)
Open Image Modal北陸電力の志賀原子力発電所。左側が2号機(石川・志賀町赤住)\n撮影日:2009年03月12日 (credit:時事通信社)
日本原電敦賀発電所(10 of18)
Open Image Modal日本原子力発電敦賀発電所。左が日本初の軽水炉として1970(昭和45)年に営業運転を開始した1号機。右は2号機(福井・敦賀市明神町\n\n撮影日:2012年03月06日 (credit:時事通信社)
関西電力美浜発電所(11 of18)
Open Image Modal敷地内の断層が活断層の疑いがあるとして、原子力規制委員会の調査対象となっている関西電力美浜原発(右から1号機、2号機、3号機)=8日午後、福井県美浜町 \n\n撮影日:2013年12月08日 (credit:時事通信社)
大飯原発(12 of18)
Open Image Modal関西電力大飯原発3、4号機の建屋。写真左側では、敷地内断層調査のため試掘溝を掘削する工事が行われている=2013年06月15日午前、福井県おおい町 (credit:時事通信社)
関西電力高浜原子力発電所(13 of18)
Open Image Modal関西電力高浜原発。右手前から1、2号機、左手前から3、4号機の建屋=27日、福井県高浜町\n\n2013年06月27日午前、福井県高浜町 (credit:時事通信社)
島根原発の1号機と2号機 (14 of18)
Open Image Modal中国電力島根原発1号機(手前)と2号機(島根県松江市)\n\n撮影日:2011年11月28日 (credit:時事通信社)
四国電力伊方原子力発電所(15 of18)
Open Image Modal佐田岬半島の瀬戸内海側にある四国電力伊方原子力発電所。頭が青色の建物が左から1号機、2号機、3号機=2012年11月18日、愛媛県西宇和郡伊方町 (credit:時事通信社)
玄海原発(16 of18)
Open Image Modal九州電力玄海原子力発電所(奥)。左から4号機、3号機(佐賀・東松浦郡玄海町)\n\n撮影日:2011年05月24日 (credit:時事通信社)
川内原子力発電所 (17 of18)
Open Image Modal再稼働の前提となる安全審査に絡む川内原発の現地調査で、九州電力(左側)から説明を受ける原子力規制委員会の委員ら=2013年09月20日午前、鹿児島県薩摩川内市[代表撮影]\n\n (credit:時事通信社)
高速増殖炉「もんじゅ」(18 of18)
Open Image Modal日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」=2013年6月6日、福井県敦賀市 (credit:時事通信社)