ワイヤレスイノベーションとアベノミクス

ブロードバンド接続は無線でというのが当たり前になり始めている。ワイヤレスブロードバンドが経済発展を促すことについて米国と差があるはずもなく、わが国も周波数の傾斜配分を強力に進めるべきである。これから、このような周波数政策がアベノミクスに追加されるよう期待する。
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ほとんど報道されていないのだが、6月14日、オバマ大統領は周波数政策に関する指示文書を連邦政府の各機関長に発出した。ワイヤレスイノベーションを引き続きリードしていくことを目標に、周波数の共用を一層推進しワイヤレスブロードバンドの帯域を拡大していく、というのが主な内容である。

オバマ大統領は、2010年に、10年以内に500MHzをワイヤレスブロードバンドに振り分けるという指示を出した。今回は第2弾である。指示の第1点は、最高技術責任者(CTO)等が議長を務める周波数政策チームの設置。チームは1年以内に周波数共用の現状と拡大策についてレポートを書く。これには、免許帯・免許不要帯の扱いや周波数オークション収益の可能性なども含まれる。また、1695-1710MHz、1755-1850MHz、5350-5470MHzと5850-5925MHzについて、免許を持つ連邦機関は返上を検討することになった。

配分されている周波数を連邦機関がどう利用しているか定量的に評価し、その結果に基づいて、民間との共用を推し進めるという方針も打ち出された。また、連邦機関が無線機器を購入する際には周波数利用効率を評価することになった。さらに、連邦機関にインセンティブを与えるために、周波数効率基金(Spectrum Efficiency Fund)を検討するという。同様に、連邦通信委員会(FCC)は、民間が利用している周波数帯についても共用可能性について検討を進めることになった。

大統領の指示文書はインセンティブ・オークションについて言及していない。それは、インセンティブ・オークションがすでに実施段階に移行しているからである。インセンティブ・オークションは、既存免許人が周波数を返上するとオークション収入の一部が免許人に還元されるという、返上を促す仕組みである。

米国がワイヤレスブロードバンドに周波数を傾斜配分するのは、国民により大きな通信速度を提供することが経済発展につながると考えているからである。わが国では6月14日に「世界最先端IT国家創造宣言」が、アベノミクスの一環として閣議決定された。しかし、宣言にはワイヤレスブロードバンドへの言及はない。前の記事に書いたように、ブロードバンド接続は無線でというのが当たり前になり始めている。ワイヤレスブロードバンドが経済発展を促すことについて米国と差があるはずもなく、わが国も周波数の傾斜配分を強力に進めるべきである。これから、このような周波数政策がアベノミクスに追加されるよう期待する。