日本の稲作農業は生き残れるのか?

日本のスーパーで10KG入りの米は大体5,000円位と思う。タイ米、ベトナム米のざっと10倍以上という事になる。これを可能にしているのが輸入税778%という、実質の「輸入禁止」である。この状況は本来是正されるべきものであって、TPPの犠牲というのは筋違いというのが私の基本的な考えである。
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政府の外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)が昨日発足した。一方、NSCの効果的運用を可能にする、日米間インテリジェンス共有の前提条件となる秘密保護法案が今国会で成立するのは確実な状況である。従って、安倍政権に残された年内の課題はTPP妥結のみという話になる。

日本のコメの輸入関税は778%であり、こんな税率がTPP交渉で認められるはずがないのは当初から分かり切った話である。安倍政権はTPP加盟に舵を切った時点で、既にコメの輸入関税を大幅に引き下げる事で腹を括っていたと推測する。日本の稲作農業は海外から輸入される事になる廉価な輸入米によって駆逐されてしまうのであろうか? それとも、逆にTPP加盟を切掛けに世界に雄飛する展開になるのだろうか?

■保護され過ぎている日本の稲作農業

以前、日本は何故TPPに加盟すべきなのか?でも説明を試みたが、日本の稲作農業は減反政策と称する所得補償金を供与されたり、上に述べた輸入関税778%で輸入米との競合から保護されたりと、至れり尽くせりの甘やかされた環境でずっとやって来た。個人であれ、企業の様な組織であれ、競争しなければ競争力は身に付かない。日本の稲作農業が劣化し、競争力を喪失したのは当然の結果といえる。

■日本国民は税金を食べさせられている

世界の米(生産量、消費量、輸出量、輸入量、価格の推移)を参照すると、2011年ベース、為替が1ドル82.16円換算で10KG当りの米価は下記の通りと表示されている。

タイ米:431円

ベトナム米:386円

カリフォルニア米:690円

ちなみに、日本のスーパーで10KG入りの米は大体5,000円位と思う。タイ米、ベトナム米のざっと10倍以上という事になる。そして、これを可能にしているのが輸入税778%という、実質の「輸入禁止」である。これ以外にもバター(360%)、砂糖(328%)、小麦(252%)など、米への高関税を正当化した結果、日本で米、パン、麺類を食べる事は税金を食べる事に等しい。この状況は本来是正されるべきものであって、TPPの犠牲というのは筋違いというのが私の基本的な考えである。

■ユネスコ無形文化遺産に「和食」登録決定という追い風

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録される事が決定した。日本食は健康に良いというイメージが定着しており、この追い風を享受しつつ日本の飲食店は海外展開を加速して来た。今回、日本食がユネスコ無形文化遺産に登録される事で、更にこの流れに弾みが付くと推測される。

私は1981年に勤め先から海外研修生とてドイツの大学に留学した。当時の日本料理は寿司、天婦羅、鉄板焼き、懐石といった社用族を対象とする高級店が殆どであったと記憶している。しかしながら、今やグローバル時代である。大戸屋の様な、安くて美味しい定食屋が海外で繁盛している。

定食といえば、炊き立てのご飯に味噌汁、漬物、おひたしや冷奴がベースとしてあり、それに、サバ味噌やさんまの塩焼き、ハンバーグなどを主菜として選択する。従って、毎日食べても飽きない。アジアやアメリカを中心に、今後日本の定食屋で日本米の美味しさを知った中間層がスーパーで日本米を購入する展開になると推測する。皮肉な事に国内では日本米の需要は引き続き低迷するが、海外では急増の可能性があるという事である。

■どうやって生産コストを下げるか?

日本米は美味しいから少々高くても買って貰えると思う。とはいえ、日本のスーパーでの販売価格、10KGのパックで@5,000円では購買層が限定され量が出ない。一定の販売量を望むのであれば、タイ米431円、ベトナム米386円を参考にすれば@1,000円程度だと思う。このプライスレベルならタイやタイに雁行するインドシナの国々の豊かになった中間層が購入してくれるはずである。

10KG@1,000円は家庭菜園に毛の生えた程度の国内稲作農家では対応が難しいというか、実際問題不可能だと思う。例えば、ベトナムの稲作農家に対し技術指導を行った上で生産を委託してはどうだろうか? ベトナム米の販売価格が10KG@386円なので、多分生産コストは250円前後と推測する。日本米の生産には手間暇がかかるとしても、二倍の500円を支払えば喜んで栽培してくれるように思う。日本ではコメは年に一回しか採れないが、ベトナムでは四期作が可能であり、日本米生産の垂直立ち上げが可能である。

ベトナムはTPPに加盟予定なので、日本米をベトナムで生産し、他のTPP加盟国に輸出する、或いは、経済成長が著しいインドシナ諸国他アセアンの国々に輸出しようというのである。海外からの輸入を恐れ、国内稲作農家がTPPに反対したところで高過ぎる米価に不満を募らせている一般国民の支持を得る事はあり得ない。更にいえば、TPP加盟は最早日本の国策であり、余程の事がない限り方針に変更はない。従って、TPP反対のプラカードを持って国会周辺をデモするよりも、TPPを好機と捉え、稲作の海外展開に注力した方が実りある結果に至る確率が高いと思う。勿論、稲作農業に限らず、事業で成功するためには一定の努力が必要である。その努力を徹底して忌避するというのであればそもそも話にならないのである。

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写真で見る2013年11月政界の動き スライドショー
2013/11/04 山本太郎氏の天皇陛下への手紙 「過剰に問題視せずスルーすべき」ネット上でも議論白熱(01 of08)
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山本太郎参院議員が10月31日の秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡したことが物議を醸しているが、その後の山本氏の発言も次々と波紋を呼び、この問題についての話題は尽きない。\n続きを読む\n\n参院議院運営委員会理事会の事情聴取を終え、報道関係者に囲まれる山本太郎参院議員(中央)=2013年11月1日午後、国会内 (credit:時事通信社)
2013/11/15 特定秘密保護法案、反対の声高まる「民主主義の基本の〝キ〟を否定」(02 of08)
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国の安全保障に関する情報を漏らした公務員らの罰則強化を狙い、国会で審議が続く特定特定秘密保護法案。批判の声が日に日に高まっている。\n続きを読む\n\n衆院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案について答弁する森雅子内閣府特命担当相。奥は小野寺五典防衛相=14日午後、東京・国会内 (credit:時事通信社)
2013/11/19 アントニオ猪木氏、北朝鮮高官と「デリケートな話もしました」(03 of08)
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日本維新の会のアントニオ猪木参院議員が国会会期中に北朝鮮を訪問したことを巡り、61年ぶりに参議院の懲罰委員会が開かれることが決まった。なぜ、あえて訪朝し、北朝鮮の高官とどんな話をしたのか。猪木氏に聞いた。\n続きを読む\n\nインタビューに応じるアントニオ猪木参院議員=11月15日、参議院議員会館 (credit:Taichiro Yoshino)
2013/11/25 特定秘密保護法案、渡辺喜美代表が修正を「高く評価」 安倍政権と蜜月?(04 of08)
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みんなの党の渡辺喜美代表が11月25日、日本外国特派員協会で会見した。18日に与党と大筋合意した特定秘密保護法案の修正について「秘密漏洩の罰則強化は選挙公約。首相官邸がチェックする仕組みなど、与党が受け入れたことは高く評価できる」「日本は政権交代がある民主主義の国。首相がチェックしようと思えばできる」と、同党が関わった法案修正の成果を強調した。\n続きを読む (credit:Taichiro Yoshino)
2013/11/26 特定秘密保護法案、強行採決で衆院委通過 維新は退席(05 of08)
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自民、公明両与党は26日午前の衆院国家安全保障特別委員会で、みんなの党と日本維新の会とまとめた特定秘密保護法の4党修正案の採決を強行し、自民、公明、みんなの賛成多数で可決した。\n続きを読む\n\n野党議員が取り囲む中、採決する衆院国家安全保障特別委員会 (credit:時事通信社)
2013/11/26 特定秘密保護法案、衆院で可決 自民党・みんなの党から離反者も(06 of08)
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外交や安全保障上の秘密を漏らした公務員らを処罰する特定秘密保護法案が、11月26日夜の衆院本会議に緊急上程され、自民、公明、みんなの党の賛成多数で可決した。\n続きを読む\n\n衆議院本会議で、緊急上程された特定秘密保護法案の討論を前に退席する日本維新の会の議員ら (credit:時事通信社)
2013/11/27 特定秘密保護法案は「公務員の利益」保護法案か 責任追及も不可能に(07 of08)
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特定秘密保護法案が11月26日、衆院本会議において自民、公明、みんなの党による賛成多数で可決した。参院での審議を経た後、今国会中に可決成立となる公算が高まった。続きを読む\n\n衆院本会議で特定秘密保護法案が可決され、拍手する安倍晋三首相(中央)=26日夜、国会内 (credit:時事通信社)
2013/11/27 日本版NSC法案が成立 「知る権利」や透明性は確保されるか(08 of08)
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外交・安全保障政策の司令塔として安倍政権が設置をめざす「国家安全保障会議」(日本版NSC)設置法案が、11月27日の参院本会議で自民、公明、みんなの党などの賛成多数で可決、成立した。\n続きを読む\n\n参議院本会議で日本版NSC(国家安全保障会議)創設関連法が可決 (credit:時事通信社)